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【辰】龍尽くしカレンダー11月・龍を聴く

先月はハリキリ月間でした。
今日から11月ということで普通の投稿をゆるゆると。
と言いつつ今月も龍を語ります。

今月は「龍を聴く」。
先月は乗り物としての龍でしたが、今回は楽器です。

龍と楽器がどう結びつくのか、
私も調べて初めて知ったことばかり。

ちょうど正倉院展が今月11日までありますので、そのあたりも交えながらの3000字!どうぞゆるゆるお付き合いください。



これまでの龍はこちらよりご覧いただけます





11月のテーマ「龍を聴く」



今月は正倉院の有名な琴を下敷きにしました。

11月になってようやく自覚したこと。

平安以前の龍が好き(’∀’)


金銀平文琴きんぎんひょうもんきん(正倉院蔵)』735年の作(推定)

四肢のしっかりしている凶悪顔な龍が好き


今年の正倉院展には出陳されない感じですが、豪華絢爛な琴といえばこちらです。
桐や紫檀に漆塗、装飾は金や銀を薄く板状にして切り抜いたもの。
龍をはじめ鳳凰、麒麟などの瑞獣ずいじゅうや仙人が配置された、
なんとも装飾あふるる一品です。

参考元としまして最後にリンクを貼っております。
私はこの琴のお花(龍と鳳凰の周りにあるもの)が非常に好きです(*’∀’)!

さて、龍と鳳凰の組み合わせ。
先月にもかるく触れましたとおりお神輿でも見られましたが
東洋の楽器にも散在する。
なんとも熱い展開です。


いってみよー


琴といふもの


龍と鳳凰の潜む楽器、その代表格が「琴」かと思います。

「琴」の意味合いも複雑ですが、今回は平たく「琴」オンリーで。

ネコふんじゃったも弾けない私(’∀’)、楽器になじみがありません。

まさか龍から琴に入るとは。


人生、不思議がいっぱいです。


龍と鳳凰はどんな風に琴と関係するかといいますと、
部位名称を見れば一目瞭然。


古琴の部位名称


龍額りゅうがく龍舌りゅうぜつ龍齦りゅうぎん(齦は「はぐき」)・龍池りゅうち
鳳眼ほうがん鳳沼ほうしょう

また冠角かんかくは龍に、焦尾しょうびは鳳凰にちなむ名称だそう。

正直「ほう…」と言うしかない飛びっぷりです。


人生だけでなく、琴も不思議がいっぱい。

後年の「琴全体を龍に見立てて…」パターンはなんとか感覚がついていく。
琴のすこし弧をえがいた長ぼそい形が龍に見え、
頭から尾っぽまでを、龍頭・龍角・龍口・龍甲・龍腹・龍尾とする。

非常にわかりやすい。

しかしながらこの龍と鳳凰の混然一体となった中国古式の琴。

ドキドキしますね(’∀’)

そして皆してドキドキしたためかどうか、
日本では龍は琴に、鳳凰はしょうに見立てられ、個別の楽器になっていきます。

正倉院の金銀平文琴は和製との説もあるようですが、
まだ鳳凰との共存が見られるところに古式の名残を感じますね。

私としましては、
長細い穴の大きいのが龍の池で、小さいのが鳳凰の沼

実にイイ(*’∀’)!



どんどんいってみよー



龍と鳳凰の楽器いろいろ


琴以外にも龍と鳳凰の潜む楽器があります。

ヒジョーに興味深いのは火焔太鼓。
大太鼓だだいことも。
雅楽や落語に親しんでいる方にはお馴染みでしょうか。

こういったものです。


この大太鼓の「大」が鼉龍だりゅうの「鼉」という話もあり大興奮です


どでん。

この宇宙的な造形よ(’∀’)

もはや交信機器の様相をていしている。


龍と鳳凰、太陽と月、巴に火焔…と、なんともコスモスな楽器です。

これは龍と鳳凰が分離しながらも2つで1つのパターン。

続きまして龍笛りゅうてきしょう

大切なものは目には見えない系

この頷かざるをえない禅味ぜんみ




いかがでしょうか、この火焔太鼓の力業。
龍笛・笙のとらわれない精神世界。

龍と鳳凰以外にもまだまだあります。

地の代表格・亀を潜ませた「しつ」(琴の相方)、
秋の終わりを告げる虎の「ぎょ」、
虎の上に太鼓がそびえて龍が首をのばしてっぺんに鳥がとまる崑崙山こんろんさん的「建鼓けんこ」。

アジア楽器おそろしや。


建鼓にいたってはもうお神輿。
というかお神輿も崑崙山で須弥山で蓬莱で、山車も鉾も社寺も云々…


このあたりを話し出しますと、おそらく6000字コースです(経験則)
しかも大半が受け売り話(’∀’)ですのでご興味ある方はぜひこちらの1冊を。

杉浦康平さん著『宇宙を叩く 火焔太鼓・曼荼羅・アジアの響き (万物照応劇場)』工作舎,2004
建築を含むデザインへの眼差しと音楽的感性に裏付けられた図像学。
ワタクシたちの東洋世界観を鮮やかに変えること間違いなしです(*’∀)‼(激熱)

杉浦さんいわく、これらのデザインは、音の響きをむしろ殺すような
音響学的にいくとメリットの少ないつくりをしているそうなんですね。

こうした話を読んでいますと、
あぁもうこれは魔法道具、楽器とは法具のようなものであるなぁと思わずにはいられません。
身近なところでいくと木魚もそう。

音・音色を鳴き声と重ね合わせ、奏でる器を生き物で象る。
その生き物から発せられる声をうけて、心が天地を行き交う。

古の楽器にほどこされたデザインは、そうした魔法をかけるための手段でもあったように思えます。
当時それらを聴いていた人には、龍や鳳凰の鳴き声が聴こえていたのかもしれません。


天地ブッセ





今月も長々とお付き合い下さいまして、ありがとうございます。

あれ、決め台詞の「ドキドキが止まりません。」がないじゃない、と思われた方は常連さん(’∀’)

いえね、

もう最近ドキドキしっぱなしで。


ちょっと落ち着こうかと門外漢の楽器に手を出した次第。
でも面白いですね、楽器をコレクションする気持ちがほのかにわかります。

もう少しナナメな龍と楽器のつながりを考えてみましたが
出世螺しゅっせぼら」なんて案外つながったかもしれません。
法螺貝もなかなかの法具っぷり、探れば龍にできるかも!
深堀りすればなんでも龍になっていく終わりのない龍沼です。


それにしてもだんだん直球の龍ではなく観念的な話になってきたようで
当初のヴィジュアル重視に揺らぎが見えてきましたが

図像とは思想(’∀’)!


どうぞ琴を目にした際には龍や鳳凰を思われますように(*‘∀)ムズカシイ

見える、見えるぞ!


先月の「乗り物」テーマでも龍は天地をつなぐ・行き来する生き物でした。
鳳凰も鳥ですので同じ役割なんでしょうね。


2022年の労作「こじらせるとこうなる」の図
西洋ではここに翼の生えた馬さんなどが躍り出てきます。



天地人とは言いますが、事の成就はさておいて
人は上に広がる天、下に連なる地の間で想いを馳せながら
何かを創り出していく、そんな生き物のようです。

され、来月はいよいよラスト。
もうちゃんと決めています。

題して「龍尽くしカレンダー12月・龍のひそむ国ニッポン」(*’∀’)!

ナショナリズムとは縁のないわたくしですが、国で締めたいと思います。

ニッポンの語源とかには言及しないと決めています(誓って)


ただ願うは1つ。

地震が起こりませんように(;’∀’)!(すこしからむので)


まぁ何が起こるかわかりません。
備えよ常に!の精神で、どうぞ来月もお楽しみに!



龍カレンダー11月の参考

金銀平文琴きんぎんひょうもんきん(正倉院蔵)

・龍笛と笙

参考文献
・鄭 珉中.正倉院の「金銀平文琴」について ─中国の宝琴・素琴の問題を兼ねて─(その一).京都市立芸術大学 日本伝統音楽研究センター.2017年
・杉浦康平.宇宙を叩く 火焔太鼓・曼荼羅・アジアの響き (万物照応劇場).工作舎,2004年


おまけ

火焔太鼓の音が聴けます。




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巳白
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