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絵事常々 -スタンピング-

先日の日曜は久々にアトリエで制作に励めました。
目下、以前の投稿「制作のながれ」でとりあげています、縦長の2枚を描き進めています。
noteにあげられていないだけで制作は進んでいますが、まとめた記事にできていないためタイムリーに届けられない勿体なさ。

いまこんな感じに進んでます


さて、ある程度の大きさになりますと「乾き待ちタイム」が発生します。
こんな夏場の日本画の乾き待ちなんて知れているではないか…と
油絵の方からは言われそうな時間とはいえ、やはり待つ身は辛いもの。

あんまり絵をにらみながら待っていると我慢できずにいらいたくなったり、
見てると触ってしまうからといって読書や調べものをしようものなら
そちらに夢中になってしまうしで、意外と難しいものです。

そんな時にはあまり神経質にならない小品制作があると良いんです。

というわけで、乾き待ちタイムにスタンピング、やってみました。


用意したもの

①紙を張り込んだパネル(下塗りしてあると尚よい)
②絵具
③葉っぱ

①の紙とパネルに関しては、こんなこともあろうかと以前から置いているものです。
良い感じの大きさの和紙とそれに合いそうなパネルがあったら、まとめて水張りしておきます。

張り込んだまま、特にドーサ引きしてしまっているとまぁまぁ傷んでいきますので、制作に励めそうにない期間にはおすすめしませんが、
すぐに描ける基底材を用意しておくと便利です。

そんなパネルに、これまた余って勿体ないなぁと思った絵具を
ぴしゃぴしゃ塗っておいたものが今回の基底材です。

もったいない精神のかたまり(380×457mm)


次に絵具ですが、紙に水色系の色と和紙そのものの色があるので
ここは同系色でくっきり形がとれそうな藍色を使うことにします。
何色か迷うとこではありますし、塗ったら塗ったでそれに合わせて展開していくのでしょうが、気楽で無難な同系色に走っておきます。

手持ちの藍色系の水干絵具の中から「インド藍」を選びました。

藍色って綺麗かつ、存在感のある好きな色なのですが
1つネックがあるんです。

まぁ、溶きにくい

そんな今回のインド藍さん


これは一度でも溶いたことのある方ならば誰しもが思うところでしょう。
溶きにくい水干のベスト3には入ります。
すりつぶすところからも手ごわいので、もう…
細かいのに固いから、がんばってすりつぶすとちょっと粉が舞います。

正直なところ藍色を使うときには「…よし、やるか」みたいな気合が必要。
疲れてるときにやるとしんどいんです。
途中で投げ出したらザラザラの絵具のできあがりになること請け合い。

今回は小さな乳鉢1/3くらいになるような量で溶きましたが
やっぱり溶き時間は30分~小一時間かかりましたかね。


そんなインド藍さんでスタンプする型に抜擢されたのは
こちらの大きな葉っぱです。

先日、花を頂戴した中にあった1枚の大きな葉っぱ。
これがあるから今回スタンピングをやりたくなりました。
少し時間がたてば乾いてエッジがたち、使い良い型になるかなぁと様子見していましたが、枯れると柔らかくなるタイプの葉っぱだったのでここらで使おうと思い立ちました。


さて、紙も絵具も型も用意できたらば、あとはやるのみ。


まずは絵具がついても良いよう、下に紙を敷きます。
今回はクラフト紙(これも何かの折にでた端切れ)です。

うつぶせになる葉っぱ


早速、ぺたぺた塗っていきます。
藍色は筆の染まりも著しいため、今回は水彩用の筆を使ってます。
日本画の平筆だと、ちょっともったいないので。


気楽にぺたぺた


絵具のしゃばさですが、

・あまりしゃばしゃばだと裏返した時にぽとぽと落ちたり、葉っぱの形がつぶれてしまう
・あまり固練りだと塗っていくはじから乾いてしまう

こうした状況を避けるイメージで作ります。

今回は塗っていて結構乾いていく感じだったのですが
全体を塗ったら少ししゃばくした絵具でもう一度走って、
最初に塗った絵具をもどしてやれば良いかなというぐらいで進めました。

しゃばしゃばにしてしまうと扱いづらい&リカバーしにくいのでそこだけ気をつけます。


そうしていい塩梅に塗りきったら、意を決してえいやっと。

パネルにひっくり返してタオルで押す


最初にパネルにどんな感じで葉っぱを入れるかは考えておいて、
もうひっくり返したらずらしたりせずにスタンプスタンプ。
小さな雑巾とかで部分的に押すのも良いかと思います。

押し具合をちらちら覗き、頃合をみはからって葉っぱをはがします。

ひとまず全体を押した状態


自然の造形美。
葉っぱの裏の太い葉脈は、丸みの頂点のみ押し当てられるため線状でスタンプされています。
葉の部分は押し当てれば形どおりに絵具がつく感じですね。

まぁ手に多少絵具はつきます


さて、ここでスタンピングを終了しても良いのですが
まだ絵具もあることだし、もうちょい作り込んでみようかと続けます。


ある程度、スタンプされた絵具が乾いてきましたら
再度葉っぱを同じようにかぶせます。

そうして面相筆に絵具をつけまして、
もうちょっとここの形ほしいなぁという部分の葉っぱに絵具を再度塗布。


葉っぱの輪郭がもう少しほしい


必要分を塗ったらば、軽く指でスタンプ。

ぶちゅっとはみでないように加減しながらスタンプ



というような微調整を少々行いまして、ひきあげたのがこちらです。


微調整でほしいところにほしい量を。


1回目のスタンプよりも、この葉っぱの形が出てきました。
あとは面相筆でそれらしい形に絵具を置いたり、少々筆を加えています。


とまぁこんな感じで無事に葉っぱを使えました。
でもまだ使いたくなるかもしれないので捨てずに安置しています。

ここから先はどうしようか考えていません。
また乾き待ちやぼんやりしているときに「こうしようかなぁ」が出てくると思うので気楽に置いておきます。
自然の造形ってそれだけで見応えありますね。


さて、いかにも「スタンピングはこうなのよ」のようにお送りしてきましたが、厳密にやり方が決まっているものではなし。
気楽に使える点が一番の魅力かと思うテクニックです。

かたくて形のしっかりしたものでやるもよし、
やわらかいものでやるもよし。
微調整で部分的に再スタンプもしましたが
あれもやっている時の思い付きです。

やわらかい草花でやったときは花がくたくたになってしまいながらも面白い形がもらえましたし、
バチンと大胆に型を1回とるのみがかっこいい時もあります。

植物でなくても、指や手やアルミホイルやスポンジや、何だって良いのです。人体拓本とかありますしね。
筆の腹でポンポンとするのも簡単です。
型をとるのがスタンピングの定義かと思いますが、
なんといいますか、一種の筆選びみたいなものだと思います。

1本のいわゆる「筆」で何通りもの形を作ったりタッチをつけたりする技術もありますが、絵を描く道具に決まりはないので
自分がほしい形が楽に出せるものをその時の「筆」にしても良いのです。

出てきた形にどんな風に歩み寄っていくか。
ほしい形をどんな風に目の前に立たせていくか。
制作の醍醐味の1つだと思うのです。

「あきらめたらそこで試合終了」だという名セリフが頭をよぎり
その他の色々なシーンを思い返しながら読み返したいなぁとか
ほんと気楽にやってます。


さて、今回は簡単にスタンピングを紹介してみました、絵事常々。
モノとモノをどんな風に出会わせるか、その面白さがわかりやすく楽しめる技法です。

最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは次回の投稿で。







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