【辰】龍尽くしカレンダー3月・龍の源泉
今日から3月・弥生です。
咲く花を見ていると3月末かという様相。
ソメイヨシノの開花予想が早いところで3月19日頃。
桜はそのうち卒業式の花となる勢いです。
さて、そんな3月にも月イチで龍を紹介する人は健在です。
今回は皆さんお待ちかねの「古代文明による元祖・龍」!
これまでの龍はこちら(マガジンにしました) ↓↓
3月のテーマ「古代の龍」
ちょっと神々しい感じですね。
なにせ古代!
①左上:古代インド/ヴリトラ神
②右上:古代バビロニア/石の文書に刻まれた龍
③中央上:古代中国(殷)/龍文
④中央:古代メソポタミア/ムシュフシュ
⑤下:古代中国(西周)/饕餮文方彝の龍文
弥生時代から始めたのに、結局描く古代の龍。
特に中央をどどんと闊歩するムシュフシュ!
これですよ、私のベスト・オブ・龍!
さすがのメソポタミア文明。
これを「美」といわずしてなんという!
と叫びたい。
文字も青銅も暦も作っちゃった上に、このムシュフシュ。
力強く美しい、脚からモモにかけてのフォルム。
そしてつぶらな瞳。
加えて名前が「ムシュフシュ」。
さて、ここまで盛り上がっておいて何ですが
「ムシュフシュ=龍」の確証はありません。
正確に言うならば「聖獣」です。
メソポタミアにそもそも「蛇」の信仰があり、
文明化とともに「クル」という洪水をもたらす怪獣(龍蛇系)を生み、
そこから更に龍神退治の話となって登場するのが「ムシュフシュ」。
その退治される神様「ティアマト」の乗り物だったりお付きの獣だったり、
最終的には門を守る聖獣になっていく(イマココ)
今回のムシュフシュはB.C.570年のイシュタル門に施された洗練スタイル。
ムシュフシュ自体が
昔は双頭だったり、ライオンみたいだったり
翼が生えていたりと揺れ動く図像で
現代の「龍」とイコールのものではないのでしょう。
なれど、
蛇の胴体にライオンとワシの脚をもったツノありの姿。
龍の源泉と言いたくなりますね。
首輪のように見えるのは獅子のようなタテガミなのかどうか。
このタテガミが「首にタマをくくりつけた龍」につながるのか。
巻き込むツノのようなものは、
正倉院の御物や敦煌壁画に描かれる「翼あり馬」の巻きツノと関係があるのかどうか。
ドキドキが止まりません。
他の古代・龍たちですが
左上のヴリトラ神はそのまんま蛇です。
錦の鱗をもつ毒蛇、ヴリトラの意味が「障碍物」。
右上は蛇タイプにツノやタテガミ的なものが加わっています。
こうした脚のない龍は古代に東西問わずおり、
龍がどうと言うより
「創造を刺激する蛇の独自性」を物語っていると感じます。
続きましてムシュフシュ上のちょっと愉快な子と
ムシュフシュ足元のいかめしい子。
こちらは古代中国の龍文だと言われていますが、
幾何的なデザイン性を含みつつもやはりニョロっとしていますね。
蛇ベースと言い切れないあたり独特の香りを感じます。
これらはあまりにも昔のことゆえ
「龍」のルーツと言い切れる確証がなかなか得られません。
ただ、文明と呼ばれるものが出来始めた頃から
こうした実在しない生き物が描かれるようになります。
大蛇の姿に他の動物の優れた部分を加えたもの。
獣面人身、また有翼人身など動物と人間の融合。
そうしたものは神話の成立に必要だったとの見方があります。
社会を形成していくために
想像上の生き物が必要だったのかもしれないと思うと、
営みとはまっこと面白いものよなぁと感じずにはいられません。
ムシュフシュだけにならず、なんとかまとまりましたでしょうか。
されど純然たるムシュフシュ回になりましたね。
この愛くるしい存在を誰彼ともなく言いたくなる抗いがたい魅力!
おそるべしムシュフシュ…!
と、今回も最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございます。
お次は4月。
春ですから、おとなしく青龍をやる予定です。
どうぞ来月もお楽しみに!