
絵事常々 -和紙を仕込む-
休日は紙づくりに限ります。
何をイキナリな出だしですが、3連休の最後は試し用の紙の下ごしらえをしました。
流石にこれは仕事帰りにできないので、
休みのうちにやってしまおう、そうしよう。
いま取り組んでいる小品「群盲評象」に使う紙を検討中です。
いつもの大型作品なら、だいたい雲肌麻紙一択なんですけれど
今回はせっかくの小品なので、紙から選んでみたいと思います。
1月に和紙をいくつか購入してきました。
二条にある滝和紙さんと迷いながらも画箋堂さんで見繕い。
4種類の和紙と、裏打ち用に美濃紙を買いました。

1種類につき2~3枚買ってきました。
お店の紙棚の前で小一時間くらい吟味。
なんせ、どれも使ったことがない。
今回の小品では「試行錯誤」を裏テーマに据え置いていまして
ペンタブで打ち合わせ用に下図を作り
本紙に使用したことのない和紙を使うという冒険っぷり。
しかも4種の内、
3種はおそらく版画用がメイン用途です。
身内の注文だからこそ、経年劣化も不具合も観察できるという…
我乍ら計算高い。(いざとなったら描き直して謝ります)
和紙も色々な種類がありますが
一枚で大きな画面をカバーできるものは多くありません。
一般的に漉けるサイズが
半紙のサイズ(約33×24cm)や菊版(約67×94cm)で、
その中であれば紙の肌合いや色味が豊富にあるわけです。
雲肌麻紙を愛してやまない私ですが
せっかくだもの、前々からやってみたかった
『日本画用』と謳われていない和紙に描いてみようと思います。
さて、そんな和紙の下ごしらえ。
まずは裁断から。
裁断
購入した和紙1種から1枚取り出しまして
試し用とサンプル保管用を採取します。

(プラ定規使っていますが、真直ぐな線が引けなくなるので真似されませぬよう)
試し用にA3サイズを切り出しまして、端切れはサンプルに。


商品名、購入時のサイズと価格などのメモと一緒に。

切りました。

今回の紙はいつもの麻紙に比べて薄いので
試し描きをする前に「裏打ち」という下ごしらえを施します。
裏打ち
今回の裏打ちに使用するのは「厚美濃紙」、
通称『あつみの』です。
厚美濃、といってもまぁ薄いです。

床の絵具ダレ(油絵の先輩の名残)がよく見えます。
美濃和紙は岐阜県の名品和紙で「楮」を主原料とした和紙です。
楮は和紙原料の中でも繊維が長く、しなやかで細く強靭。
故に薄くて丈夫な和紙が得られ、それが「裏打ち」という補強作業に適しているわけです。
「薄美濃紙」(うすみの)や楮七匁あたりがよく使われます。
本紙用に買ってきた和紙の補強として
この美濃紙を糊ではっつけるのが「裏打ち」です。
裏打ち
裏打ちに用意するものは以下の通り。
・作業用のパネル
・本紙用の紙
・裏打ち用の紙
・水
・糊
・刷毛(糊用と空刷毛)
水張りの時とだいたいおんなじ感じです。

最初の試し用としてA4サイズでこしらえます。
本当は「柿渋を塗った和紙張りのパネル」が良いのですが、
ちょっとそこらの空いているパネルでいってみます。
渋紙のパネルは、ほどよく吸水し・はじき・汚れず・丈夫という優れもの。
さて裏打ち用の糊もだいぶと簡易なものでいきます。
いつもの水張りに使用している洗濯糊です。

これを水でいい塩梅に薄めていきます。
けっこうシャバシャバに、刷毛でイイカンジに伸ばせるイメージで。

霧吹きで本紙裏の水引きにはこれを使用。

買った紙の表に描くか裏に描くか悩みましたが、
とりあえず最初は素直に表に描くということで、裏面に裏打ちをします。
本紙に水を引いたら、裏打ち用の美濃紙に糊を引きます。
大きな紙に細かく裏打ちする場合は、袋張りと言って
裏打ち紙のフチ2cmくらいに糊を、中央部分には水を引く方法があります。
そちらの方が紙の自由度が高く、張りムラも起こりにくいのですが
小品なので補強イチバンのベタ張りでいってみます。

表具の糊刷毛はないので絵刷毛で代用。
その裏打ち紙をよいしょと持ち上げて、
先の本紙の裏にぺちゃっと乗せます。

ゆっくり丁寧に、置き損ねたらやり直せば良いのだ…と自分に言い聞かせてやる。
イイ感じに置けたら、空刷毛で空気を抜いてやります。

柄の根元の方を持ってやります。

空気が抜けたら安置。
このくらいのサイズなら1枚5分くらいでできました。

都合、4枚でなんやかんや30分くらい。
準備から含めると2時間くらいです。
本日やれてスッキリ。

試し用とはいえ、かなり適当な方法で裏打ちしました。
本当は繊細な作業です。
糊もこれでイインカイナと思いながらやってますが
大学の時もこれでやっていたしなぁ。
案ずるより産むがやすし。という。
乾いたらパネルに仮張りして
試し描きをしてみたいと思います。
もうすでに4種の中で「この子が有望株」と思っているものはあるんですが
はてさてどんな感じになるでしょう。
『日本画用』とされている和紙にはあまりない「黄味がかった色」や
「赤茶っぽい色」が作品の土台になるといいなぁと思いやっています。
背景に色を塗ったり、紙を染めても良いのですが
和紙本来の色に助けてもらえるなら安心ではないか!という。
紙色そのまま使えるかは置いといて、
描き味など楽しみであります。
さてさて、最後まで読んで頂きありがとうございます。
また次回の投稿で。
おまけ

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