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【辰】龍尽くしカレンダー9月・龍生九子

のろのろ台風、各地で大雨。
なかなか慈雨というわけにはいかないようです。
暑さはさすがに和らぐでしょうか。

今日から9月ということで今月も龍を語ります。

今月は「龍生九子りゅうせいきゅうし」。
龍から生まれた九匹の子どもについて。

が、
いつにもまして混迷を極めているエリアです(’∀’)
確たるものなど何も残っていない荒野のよう、むしろ平たい感じで終わるハズ…


どうぞゆるゆるお付き合いください。


これまでの龍はこちらよりご覧いただけます


沼に向けて出発



9月のテーマ「龍生九子りゅうせいきゅうし




今回描いたのはずばり「龍生九子」という図でして、
龍のまわりをウーパールーパーみたいな子たちが9匹わらわら飛び回る可愛らしい図。

この図がどこの何なのかわからないというところから始まります。

いつもお世話になっている『図説 龍とドラゴンの世界』で見つけるものの、出典が載っていないんですね(;'∀’)タマニアル
どうも中国の「図案」、縁起物のデザインのようで、『中国歴代装飾模様大典』かなと思いつつ突き止められませんでした。

うーん、困るなぁ…
じゃあこれをベースに九子を配置してどうにかこうにか…と練りだしたものの、すぐ諦め。

九子の姿、定まらないにもほどがある。


そんな子どもたちのご紹介です。



龍生九子とは


・龍から生まれた9匹の子
・それぞれ姿形、性質がことなる
・性質にちなんだ場所で装飾として用いられる

はっきりしているのはこの3点。
他はどうもわからないことだらけです。


「竜生九子」という言葉があるものの、どんな子かわからない

明(1368年~1644年)の頃に「こうじゃない?」と説が唱えられる

日本にもその説がやってくる

「よくわからんがこうらしい」と『和漢三才図会』に載ったり、装飾として使われたり使われなかったり

「竜生九子」という言葉とフワッとした設定が残る

創作に便利!(イマココ)


そもそも「龙生九子不成龙,各有所好」(龙=竜)という言葉があり、
・9匹の子はだれも龍になれなかった
・9匹の子がいたが、それぞれに姿形・性質も異なっていた
→ 同胞・兄弟といえどそれぞれに異なっているものだ、ということわざのようなものみたいです。

そう、「だれも龍になれなかった」。
だから九子は厳密にいうと龍ではないんですね。



9つの子


龍カレンダーですよね?

という冷静なツッコミはオイトキまして…


それでは9つの子のご紹介です(*’∀’)

この子たち、諸説しかない状況なので同じ名前で色んな姿の子がおります。
生まれ順も定まらず、もはや9匹に留まらないカオス。

拠るべきものがないとシッチャカメッチャカなので、
『図説 龍とドラゴンの世界』と『図説 社寺建築の彫刻』をベースに参ります。


一~三子

第一子:贔屓ひいき
「ひき」とも
・重たいものを支えている装飾(わりとよく見る)
・亀に似ているタイプは玄武とか霊亀れいきとか鰲魚ごうぎょと区別が付けづらく、とても興奮する霊獣(まさに贔屓の霊獣)

第二子:螭吻ちふん
・遠くを眺めるのが好き、屋根上担当
・九子の「嘲風ちょうふう」と同じなのか別なのか迷われている
・魚タイプはシャチホコに、獣タイプは獅子にとってかわられた気がする

第三子:蒲牢ほろう
・鳴る、吼えるが好き
げいが怖くて仕方ない(鯨は8月の龍カレンダー記事をご参照)
・鐘の上部に取り付けられ、「怖くて震えたら良い音出すんじゃない?」と鐘をつく木に鯨がついちゃったかわいそうな子


四~六子

第四子:狴犴へいかん
・老いた虎に似た姿で威厳があるらしい
・権力、訴訟、裁きが好きというなんだかゴメンナサイと謝りたくなるタイプ
・監獄などの装飾、悪い人を威圧しているそうな

第五子:饕餮とうてつ
・食べ物、お金なんでもこいの異常食欲・饕餮さん
・文様として独立、たぶんいちばん有名
・食べる、飲み込むことからかなえなど器の装飾として一世風靡

第六子:蚣蝮こうふく
・「はか」とも
・形状が定まらないにもほどがあるが、水好きなのは統一
・橋や水路の装飾で活躍


七~九子

第七子:睚眦がいさい
・殺めるのが好きという物騒な子
・刀や斧の装飾
・個人的には「にらみをきかせるのが好き」くらいで良かったんじゃないかなと思ってしまう
・「睚眦之怨がいさいのうらみ」は「ちょっと睨まれたくらいのわずかな恨み」

第八子:狻猊さんげい
・水と煙を好むことから香炉の装飾に
・獅子に似ているそう、むしろ獅子の原型か
・獅子タイプの図像もあるのになぜかここでは鬼っぽいのを掲載
・頭だけタイプは獅噛しがみやキルティムカとしか思えない

第九子:椒圖せきと
・閉じることが好き
・門の引手装飾担当(アジアンライオンノッカーですな)
・二枚貝や蛙に似ていると言われつつ、一体どこにそんな図像があるのか悩ましくなる子(むしろ最近ではカタツムリ化されている)



お疲れ様でした。
どうぞ彼らの名前でご検索ください。

もっと疲れます(’∀’)


まぁ「龍じゃないことはわかった」って感じですねぇ。

なんでこんなに乱立しているのかはわかりませんが、
もともと各地に根付いていた伝説・デザインが、龍の子として習合されたんじゃないかなぁと考えたりします。
インドしかり中国しかり、もちろん日本においても
龍はそうした呑み込みシステムのように思えるのです。

今回の九子の他に「金吾きんご」「負屓ふき」「囚牛しゅうぎゅう」「嘲風ちょうふう」「鰲魚ごうぎょ」「螭虎ちこ」などなど…

もう聞いたことも見たこともないのは良いんですけれど(オナカイッパイ)

麒麟きりん


それだけはやめて。


よく知っているつもりの子が龍の子だなんて!

でも麒麟の体に鱗があるのとないのとあって
それがどちらも麒麟で良いのかは永遠のテーマ(’∀’)


今月もドキドキが止まりません。




今月も長々とお付き合い下さいまして、ありがとうございます。

毎回なんやんかんや上手いことオチがつくなぁと感じております(笑)
ドキドキしかしていない。

今回はそもそもたなかよしあきさんから「宝厳寺宝物殿の球体背負っている龍」なるコメントをいただいた時に
「よし、龍生九子だ!9月の九だ!」という勢いで踏み込みました。

宝厳寺さんのは贔屓なのか玄武なのか鰲魚なのか、私はわからないんですが(竹生島と龍はもちろん縁深く、須弥山・蓬莱山の見立てと思えば鰲魚も捨てがたく、しかもどちらも「九子」にエントリーしている)、
あの球体を背負っているのを「龍」と言われたのが非常に嬉しくてですね、

龍カレンダーによる布教活動ここに極まれり(*’∀’)!

という心境です。

大丈夫、何でも龍につながりますから。



さて9月、涼しくなると良いですね。
10月もノープランですがハロウィンでユニーク路線か神無月がらみのなにがしか…と思っています。
あと11月・12月も作っておかないと個展にからみだす…
もう今年も終わりですねぇ(’∀’)


どうぞ来月もお楽しみに!



龍カレンダー9月の参考
笹間良彦.図説 龍とドラゴンの世界.遊子館,2008年
・高藤晴俊.図説 社寺建築の彫刻.東京美術,1999年




おまけ

むかしむかし、宿泊したホテルに取り付いていて激写した脊獣(ハイジュウ)


中国の霊獣、種類が多すぎてブラックホール状態です


また忘れてた全体図はこちら


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巳白
応援、ありがたく頂戴しております。いただきましたサポートで、また1日長く絵に専念できます(о´∀`)

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