クリスマス
クリスマスイブだ。
私の実家のサンタはなぜかいつも25日の夜に届けてくるので、毎回みんなよりもプレゼント貰えるのが遅かった。
私は睡眠苦手ちゃんだったので、サンタさんが玄関から律儀に入ってくる音を聞いたことがある。チリチリなるのはジングルベルの鈴じゃなくて、鍵についている鈴の音だ。聞き慣れている。
目を閉じたまま静かにジッとしていると、枕元に何かが置かれた音がした。
そのあと、ガサガサ鳴るビニール袋の音と冷蔵庫を開く音、ビールの缶が入れられていく音が聞こえた。
いやいや、そんなわけ……と思いながらこっそり冷蔵庫の方を見ると、プレゼント越しに見える父の背中。
急いで元のように寝たふりをして、父が風呂に入るのを待った。
父の気配がなくなってから急いで身を起こし、プレゼントを手に取った。紛れもなくクリスマスプレゼントだった。
夢?と思いながら必死で包装紙の柄を覚えた。朝起きて同じ包装紙ならば、確実にサンタさんの正体は……
可愛らしいクリスマスの包装紙の柄を目に焼き付けて、布団に潜る。変な夢見ちゃったな、まったく……
もちろん、朝起きた時に枕元に置かれていたプレゼントの包装紙は夜に見たものと同じもので、「あっ……」と察した。
私は親にその事を言ったりしなかった。言ったらもうプレゼントを貰えない、と思ったのだ。
このクリスマスの芝居はプレゼントを貰うための大事な儀式であり、これを暴くことはこの儀式の終わりを意味する。
親のみならず、弟や友達にもその事は言わなかった。同級生が「サンタなんていないよ!お父さんだよ!!」って言っているのを聞きながら、「それは言わない約束なんだぜ……」と心の中で思っていた。
中学生になってから、「サンタさんをまだ信じていると思われるの、めちゃくちゃ恥ずかしい」という気持ちが勝って、起きて待っていたことがある。母が「早く寝なさいよ……」と言いながら部屋に入ってきた時は笑ってしまった。夜起きているのが苦手な母が頑張って起きたんだなぁと思うと嬉しかったのだ。
中学生まで貰ってたんかいと思われるかもしれないが、実は高校生まで貰っていた。途中、弟も大きくなったので直接渡す方式に変わったけど。
お小遣いは一切なかった代わりに、なんか結構いろいろ貰っていたな、と今になると思う。今も誕生日プレゼント貰うくらいだからほんとに貰いすぎでは……
旅行とかプレゼントできる人間になりたいね。(なれよ)
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