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【山歩き記録 第103歩】仙丈ケ岳(2024年9月6日~7日)【快晴の南アルプスで絶景にあの鳥も】

想定内も想定外も、あまりに完璧な山行にニヤニヤが止まりません。

アプローチが大変なので敬遠していたアルプスですが、満を持して南アルプスの仙丈ケ岳に行ってきました。予報通り青空に恵まれたのみならず、星空、朝日、富士山、そしてライチョウと、アルプスで見られたら良いものをいきなりコンプリートしてしまったかもしれません。

過去最長の記録になりますが、どうぞお付き合いください。


コース概要

地理院地図に書き込み

南アルプスジオライナー、林道バスと乗り継ぎ、北沢峠バス停からスタート。大平山荘に下り、藪沢ルートに入ります。樹林帯、沢沿いと登り、馬の背ヒュッテで1泊します。2日目は尾根に登り、仙丈小屋を経由して仙丈ケ岳へ。展望の良い尾根をたどる小仙丈ルートで小仙丈ケ岳を経由し、再び樹林帯に入って、北沢峠に下山します。

記録1日目

今回は珍しく計画から。茅野駅から戸台パーク(仙流荘)をつないでくれる南アルプスジオライナー、昨年は金土日月の運行だったのですが、今年は金土日だけ。1日1便のみで、これと林道バスを使うと、北沢峠到着が13時5分となるので、1泊コースとなります。そして、土曜日はたいてい山小屋の予約が埋まっているので、金土で行くしかありません。

前週、各気象機関を大いに惑わせた台風10号がまだ西日本をうろうろしているころ、その1週間後の金土が各予報晴れの予報に。この時期、1週間後の複数の予報が揃うのも、2日連続で晴れるのも珍しい。ということで、8月30日に9月6日の馬の背ヒュッテの予約を入れました。馬の背ヒュッテは、ネットで予約できるのも、直前までキャンセル料がかからないのも、大変ありがたいです。台風の影響で予定をずらした方が多かったのか、翌日か翌々日には満室となっていたので、早めに判断できてよかったです。

茅野駅は10時6分到着。ジオライナーが10時40分発なのでちょっとゆっくりしていたら、これが今回唯一かもしれない失敗。バス停に行った頃には列が伸びており、ぎりぎり座ることができませんでした。帰りもそうでしたが、ジオライナーは増便を出してくれないようです。ジオライナーは、杖突峠を越えて伊那市に入り、戸台パークまで向かいます。杖突峠までの峠道がカーブの連続で、まだ疲れたくないと思いながらも、体を支えるためにけっこう腕の力を使いました。幸い、守屋山登山口で近くに座っていた方が下車していかれたので、その先は座ることができました。支払いは下車時に現金のみ。新札は両替機に通らないのですが、運転手に渡すと旧札に交換してくれるシステムでした。

戸台パークバス停は、昨年まで仙流荘バス停と呼ばれていたところです。仙流荘自体はちゃんと残っていて、とてもきれいな建物でした。建物内に林道バスのチケットマシーンがあり、チケットを購入します。これがキャッシュレス対応で、登山では貴重な1000円札を使わずに済んだのもありがたかったです。往復用の2枚つづりで買えるもの気が利いています。

チケットを買ったら乗車列に並びます。林道バスは全員座れるように増便を出してくれます。いわゆるマイクロバスの車体で、立てる場所がないというのもありますが。行きのバスでは、運転手さんが林道の歴史や車窓から見える景色をガイドしてくれました。道中、鋸岳や甲斐駒が良く見えるポイントがありますが、アナウンスするだけでなく、写真を撮れるよう停車するという徹底ぶり。自分は反対側の窓際に座っていたのと、天気も良くこのあといくらでも見られるだろうと思ったので、撮りませんでした。もし写真を狙うなら、進行方向左側に席に座ると良いです。しかしまあ、林道はガードレールも少ない、ほっそい道で、よくこんな崖沿いに道を作ったなと思うと同時に、仮にマイカー許可したら年に何台滑落していくか分からないなとも思いました。

13時、北沢峠に到着。バス停の横にトイレあります。こもれび山荘前の水場で水を汲めると思っていましたが、このときは出ていませんでした。2000m越えなので、高山病対策でゆっくり準備していたら、周りの人たちの多くはそんなことを気にしないのか、北沢峠は閑散とした雰囲気に。そんな中、同じく準備をしていた男性の方も馬の背ヒュッテで宿泊予定ということで、一緒に登ることになりました。

北沢峠こもれび山荘

予定通り少し道を戻る形で、大平山荘に向かいます。地形図的に70mほど下ることになりますが、尾根コースより少しだけ楽だとか?大平山荘は暗くて営業していたか分かりませんが、その前の水場が使えて、水を補給できたのが良かったです。

大平山荘

藪沢重幸新道と書かれたところから登山道に入っていきます。しばらく樹林帯の中を進みます。途中、鋸岳方向が開けた場所があり、榛の木展望台という看板が立っています。

榛の木展望台から
原生林を登る

さらに登ると、右手に沢を見るようになります。崩落による迂回路の先で、完全に沢と合流し、登山道は丸太橋を渡った反対岸に移ります。

沢と合流する手前で振り返る
丸太橋で反対岸へ

ここまで来ると、山奥の別世界に来た感じがします。これまでにイメージでは、沢沿い=谷=薄暗い、だったのですが、日が差してとても明るかったです。それなりに斜度があり、ザレやガレで踏ん張りにくいところもありますが、危険はないので、がんばって登っていきます。振り返るとずっと甲斐駒ヶ岳が見られます。途中、道の真ん中に鳥がいて、まさかライチョウ?でもちょっと雰囲気が違うような…と思って、あとでググってみたら、ホシガラスというのが近そうでした。

こんな高いところにこんな水量の滝
振り返ると図ったかのように真正面に甲斐駒ヶ岳が見えます
沢沿いのザレ場。小さいですが、写真中央にホシガラスらしき鳥がいます

小仙丈ルート5合目からの道と合流するところで沢から離れ、もう10分ほど登ると、馬の背ヒュッテに到着です。ジャスト16時。完璧なペースメークです(自画自賛)。ちなみに、もう一つ上の仙丈小屋は、15時までに着くようHPに書かれているのですが、馬の背ヒュッテは、僕のようにジオライナーを使ってくる人のことも分かっているのか、予約時に到着予定時刻16時と書いても、実際に16時に着いても、問題ありませんでした。

馬の背ヒュッテは右へ
馬の背ヒュッテの裏手は、甲斐駒ヶ岳の方向が少し切り開かれていて、好展望です

チェックイン時に、夕食と朝食の時間を伝えられます。夕食は17時か18時(僕は18時)、朝食は5時か5時半(僕は5時)でした。建物内には、1階に食堂と乾燥スペース(服を干せます)、階段を上がると大部屋が(僕が見た限り)4部屋ありました。

大部屋には、各人に枕一体型のマットレスと毛布2枚が用意されています。布団より毛布派の僕には嬉しいです。インナーシーツを持参することになっていて、インナーシーツに入ってマットレスの上で転がります。ところで、マットレスは表面がビニールになっていて、おそらく体から出る蒸気を通してくれないのが、少し難点。そこで、マットレスの上に毛布を敷くといいよ、と同部屋のどなたかが喋っていたのを聞いて、真似させてもらいました。部屋の中央には予備の毛布が置かれているので、もし毛布が足りなければ、もう一枚借りることもできます。

外には、玄関を出て左回りに、水場、机とベンチ、トイレがあります。トイレは古いタイプで、しっかり掃除されているのは分かるのですが、それでもしっかり臭うし、夜は虫もいます。正直なところ、臭いは結構強くて、大部屋でも少しトイレの臭いを感じます(慣れて鈍感になりますが)。こればかりは、山ですし、我慢するしかないですね。

夕食は、鹿肉カレー、サラダにスープ。僕は辛いのが得意でないので、山小屋を予約するたびに、カレーが辛くて食べられなかったらどうしようかと心配するのですが、ここのカレーはめちゃくちゃ美味しかったです。何と言ってもその特徴は、(写真、スプーンで隠れていますが)鹿肉・リンゴ・味噌を組み合わせたというルー。鹿肉そのものの味はピンとこないのですが、臭みのようなものは一切感じず、細かくミンチにされていてとても食べやすく、スパイスの華やかな香りが広がります。ご飯はお代わり自由なので、上手にバランスを取ってしっかり食べましょう。

馬の背ヒュッテの夕食

さて、この日は日の入りが18時10分ごろだったので、十分に暗くなったころを見計らって、19時半ごろに外に出てみます。すると、雲一つなく、月もない、満天の星空。天の川を意識して見られたのは、いつぶりだろう。というか、記憶にありません。2年前の富士山では、いろいろなライトが明るくて良く分からなかったし、中3の天文実習は晴れていたと思うけど季節的にどうだったか…。と言う感じで、記憶の中で最高の星空でした。

軽量化のためにカメラを固定する道具は持ってきておらず、雑に岩の上でカメラを上に向けて撮ってみましたが…充電を気にして、露光時間やISO感度のギリギリを狙ったせいで、ちょっと星明りが弱くなってしまった感じ、しかも、焦点距離無限を明示的に指定するのを忘れており、そこも怪しい…という感じで、写真は微妙でしたが、一生に何度もないような星空を見ることができました。

RICOH GR3 ISO感度640 露光時間15秒 増減感+1.0
noteのアップロード・ダウンロードでどう処理されるか分かりませんが、僕の手元だと、拡大すると星がたくさん写っているのが分かります

記録2日目

7日の日の出は5時25分ごろ。朝食は5時。そこで、朝食前に夜明け前の景色を見て、朝食後に日の出を見ることに。

日の出前

朝食は、ご飯に、複数のおかずと味噌汁。シンプルながら味の濃いおかずでご飯が進みます。朝食でもご飯はお代わり自由です。まわりが5分10分で食べ終わって出ていく中、食べるのが遅い自分もなんとか15分で食べて外へ。この日は山から日が昇ってくるということで、少し遅れて5時30分ごろに日の出を拝めました。

朝食
日の出

帰りのジオライナーは17時発なので、早く動きすぎても時間を持て余すだろう、ということで、他の宿泊者がどんどん出発していく中、「休日チャイ」を注文して食後の一服。馬の背ヒュッテでは休日COLAというクラフトコーラを置いているので、そのシロップをミルクティーに入れたものでしょう。とても美味。とはいえ、チャイも飲み終わってすることもなくなったので、6時30分に出発です。

休日チャイ。チョコが付いてきました
馬の背ヒュッテの大部屋から見上げる仙丈ケ岳
真ん中じゃなくて右奥が山頂です

まずは斜面を上がり、馬の背から伸びる尾根を進みます。進むほど周りの木が低くなり、全方位に展望が広がります。山そのもののスケールの大きさに圧倒されます。この感じは富士山以来です。人々がアルプスと呼ばれる山に集まる理由が分かる気がしました。

稜線から望む山頂
振り返ると、馬の背、甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳といった山々

山頂手前に仙丈小屋という山小屋があります。そのちょっと手前に水場がありました。このあと、水を飲み切らないように気を遣うことになったので、ここで再補充しておくと良かったかもしれません。仙丈小屋でトイレを借りましたが、なんと洋式水洗トイレでした。

仙丈小屋の分岐

仙丈小屋は藪沢カールのくぼみにあるので、改めて稜線に登ります。その途中、登山道の砂を足でホリホリしている丸い生き物が…これはほぼ確実にライチョウです。こんな近くで見られるなんて。しかし、こんな場所に巣でも作っているのだとしたら危ないよ…と思っていたら、さすがに真横を通るときには飛んでいきました。

こんな道端にライチョウが

山頂への道は、遠くから見ていたらあんなに細い尾根を歩くのかと少し心配に思いましたが、スケールが近所の低山とは違って大きいので、何とかなるものです。小さい岩山を回り込むところだけ少し注意して、その先のピークが山頂です。360度遮るもののない見事な展望です。

仙丈ケ岳山頂標識。奥に中央アルプス
大仙丈ケ岳への稜線
北岳と富士山
手前にこれから歩く道。中央に甲斐駒ヶ岳。左奥に八ヶ岳。右奥に金峰山などの奥秩父の山塊。
こう見ると、下界のかすみ具合と高所の澄み具合が全然違うのが分かりますね
山頂の少し先から、藪沢カールを見下ろす

そんなに長居したつもりはないのですが、30分近く山頂にいたようです。コンディションも問題ないので、予定通り小仙丈ルートで下山を開始します。

6合目まで、ひらけた尾根道を進みます。最初、2つの小さい盛り上がりの左側を巻いたあと、ぐっと下り、2回のちょっとした岩登りを含む小さいアップダウンの尾根を進むと小仙丈ケ岳に着きます。写真にその場所を書き込んでみました。ちなみに、上の「北岳と富士山」の写真の左端に見えているのが、1つ目の小さい盛り上がりと表現しているもので、「手前にこれから歩く道…」の写真に見えているのが、2つ目の小さい盛り上がりとそれを巻く道です。

1つ目と2つ目の小さい盛り上がりの間から。飛んでいるホシガラスが写り込んでいます
上の写真に書き込んでみました
2つ目の小さい盛り上がりを回ったところ。まだ8時半ですが、奥の甲斐駒ヶ岳には雲がかかり始めました
仙丈小屋への分岐。北沢峠140分は、かなりスムーズに行けた場合ですかね…
1つ目の岩場を登り切ったところ。こんなに気持ちの良い尾根があると、登りがいもあるというものです
まだまだ富士山が見えます
小仙丈ケ岳は、小仙丈カールと仙丈ケ岳を望む最高のスポットです
六合目。展望があるのはここまでです。ところで、この先は五合目、四合目と看板があったのですが、七合目から上はあったのでしょうか…?
六合目から小さく見える馬の背ヒュッテ

それにしても、この日はとても多くの登山者とすれ違いました。帰りのバス内で聞こえてきた話によれば、嘘か真か、朝の戸台パークには今年最高の700人が待っていたとのことです。とはいえ、道を譲るために一時停止するのは、特にこういった高山では、ペースが上がりすぎないようにするのにちょうど良いとも思います。

六合目からは樹林帯の下りが続きますが、小石が多く足を取られないように注意が必要です。同行していた男性は2度滑ってしまい、ポールを折ってしまいました。骨じゃなくてポールで良かったというところです。2合目で分岐がありますが、どちらでも北沢峠に下りられます。今回選んだ直進の道では、少し登ってから下りがあります。

12時過ぎ、北沢峠に到着。この日も完璧なペースでした。ちょうど目の前でバスが出発していきましたが、もともと13時10分に乗る予定でしたので問題なし。

北沢峠に下りてきました

北沢峠のこもれび山荘では、缶飲料、ペットボトル飲料のほか、ソフトクリームやうどんなどの軽食、お土産グッズなども販売していました。こもれびラーメンというのもあるそうですが、このあと仙流荘で食事にする予定でしたので、とりあえずバスの順番を確保して、ここではソフトクリームをいただきました。…とちょうどソフトクリームを食べ終わろうというタイミングで、臨時バスが出るという案内が。急いで乗り場に戻り、バスに乗り込みました。乗っている間も、時間に関係なく、何台もの空のバスや登山者を乗せたバスにすれ違いました。手厚い臨時便はありがたい限りです。

仙流荘では、14時30分まで食事を受け付けています。ざるそばを注文。しょっぱさが体に染みわたります。日帰り入浴も19時30分まで受け付けています。日帰り入浴は知らなかったのでタオルを持ってきていなかったのですが、買い切りのハンドタオルとレンタルのバスタオルがあって助かりました。

と、食事と入浴を済ませてもまだ15時前で、17時のジオライナーにはまだまだ時間がありまして、同行の男性お話などして時間をつぶし、混むだろうからと16時前に乗り場に移動して順番を取り、さらに音楽を聴いたりして時間をつぶし、ようやくバスに乗り込みました。行きよりさらに混雑しましたが、早めに並んだおかげで座ることができました。このジオライナーの運転手さんのアナウンスがとても気の利いたもので、感動したのを覚えています。

茅野駅に着いたのが18時25分、一番近いあずさが19時9分なのですが、この時間にはお土産屋が閉まっているのが茅野駅の残念なところ。仙流荘でのざるそばだけではお腹がすくので、茅野駅の立ち食いそばでさらにとろろそばを食べ、乗車しました。

そのあずさで隣になったのが、北アルプス(たしかツアーで穂高を縦走したと仰っていた)の帰りだという女性の方で、ここでもいろいろお話を聞かせてもらいました。聞いている感じ、特急や新幹線を使って積極的に遠出しているようで、栗駒山は毎年行っていて東京から日帰りできる、という話がけっこう衝撃的でした。その手前の那須岳や安達太良山は日帰りが難しいのに、さらに遠い栗駒山は可能とは…これはいつか行かないといけないですね笑。

各種情報

コースタイム:7時間

標高:1950m(大平山荘)~3033m(仙丈ケ岳)

主な展望スポット:藪沢ルート榛の木展望台、藪沢と合流後。小仙丈ルート六合目まで。

トイレ:北沢峠、馬の背ヒュッテ、仙丈小屋(いずれも有料)

危険個所:ところどころ狭くて緊張するところもありましたが、斜面にはハイマツは生い茂っているので、下草の抜かれた低山の人工林よりも不思議な安心感がありました。人が多いのも安心感につながっていた気がします。

水場:こもれび山荘前(1日目の13時、出ていませんでした。どこかに蛇口か何かあったのだろうか)、大平山荘前(1日目の13時半、出ていました)、馬の背ヒュッテ(泊っている間ずっと出ていました)、仙丈小屋下(2日目7時、出ていました)

アクセス:茅野駅~戸台パークの南アルプスジオライナー、2024年は10月14日までの金土日祝。1日1往復。現金のみ。

戸台パーク~北沢峠の南アルプス林道バス、2024年は11月15日まで。1日5往復も、全員座れるよう、臨時便や増便あり。戸台パーク前の仙流荘内でチケットを購入。キャッシュレス可。

周辺情報:小屋泊では夕・朝食以外にどこで何を食べれるかが大事なので、その情報を。

仙流荘では、11:30~14:30でちゃんとした食事を頼めます。

こもれび山荘では、ソフトクリームやうどんなどの軽食を提供しています。

馬の背ヒュッテでは、カップ麺とおでんを食べられます。

仙丈小屋では、カップ麺を売っているほか、調べたところによると、不定期でカレーを出していることもあるようです。


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