山の達人と山に乗る
ひょんな出会いがつながって
徳之島の山の達人の方に
島を案内していただくこととなった。
そう決まってから
飛行機ギリギリまでの
限られた3時間半が
こんなに濃厚な旅になろうとは。
まずは山へ。
ウラジロガシの板根は
その下に岩があって根を深く張れないから
身体を支えるためにできるのだそう。
オオエビネや珍しい蘭
花が咲いた季節を想像して
うっとりする。
ヘビの頭やハンバーガー
巨人の石垣を連想する
不思議な形の岩がごろごろする森の中。
平清盛の子孫の住んでいた
石垣のある集落の
樹齢300年のガジュマル。
「なんかしゃべりだしそうな木!」
わたしが言うと、
達人は、
「しばらく黙ってみてたら話しかけてくるよ。
そろそろ話しかけようかな〜ってね」
という。
達人は達人なだけあって
木と話したことがあるに違いない。
徳之島の高い山3つを
同時に見ることのできる場所も
教えていただいた。
あっちが井之川岳
こっちが犬田布岳
あそこが天城岳。
「徳之島でわからない山はないよ」
達人は
「30分時間ができたら山に乗る」
のだという。
達人は山に【乗る】というのだ。
まるで馬に乗るかのように。
たしかに山は大きな生き物のようだ。
「山に入ると身体全部が清められる感じがするね」
と達人。
わたしもそれはよくわかる。
都会にいた頃は
山に行かないとやってらんないわ!と
毒づきながら、
身体の中の山エキスが減ってきたら
ふらり山を歩くことにしていた。
島に来てからは
手入れされたわかりやすい山道が少なく
ハブの潜む奄美の山に慣れぬ私は
気軽に山に入ることができないまま。
当初は山に入れないストレスが大きかったが
数年たって山エキス器の底もカピカピに乾いてしまい
山を歩く生活をあきらめてきていた。
しかし、
きょうまた山熱に火がついた。
わたしはやっぱり山が好きだ。
木や草がとっても好きだ。
土の上を歩いたり
岩とお話ししたりするのが好きだ。
そうしないと
わたしがわたしじゃなくなってしまう!
この冬は
もっと山に乗ろう!
わたしの内側から
強い叫び声が聞こえる気がした。
そうか
先日湯湾岳に登ったのも
山からのお知らせだったのかもしれない。
最後は
達人のお友だちがやっているお店で
あたたかい珈琲と
島のおやつをいただいた。
達人さま
ありがとうございました。
ひらめきに従って旅をすると
想像していなかった
ミラクルが起こる。
今年は山に乗ります。
*ふやよみ あおきさとみ*