朝焼け
今朝早く家の外に出ると、東の空が真っ赤に焼けていた。
浜に下りてみると、その見事な朝焼けを背にして、集落のMさんが波打ち際を散歩しているのが見えた。空の色が海にも映り込んで、少し現実離れして見えるほど美しかった。
Mさんはまさに、その美しい光景の真っ只中を歩いているのだが、案外本人は気づいていないのかもしれない。
まるで、人生のようではないか。などと、思ったりした。
1泊2日の出張へ出かける妻を見送ってから、もう一度東の空に目を向けると、朝焼けはすでに終わっていた。夢から覚めたみたいに、魔法が解けたみたいに、そこにはただ薄暗い曇り空が広がっているだけなのであった。
一瞬なのだ。人生も朝焼けも。
ふやよみ 青木薫