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猪苗代湖畔で、小原庄助になる日

 「小原庄助」と聞いてピンとくるのは、どうやら東北人らしい。みんなが知っているとばかり思っていたが、そうではないみたいだ。猪苗代湖の湖畔でゆるゆるとビールを飲みながら、友人に「えっ、誰?」と言われ驚いた。会津磐梯山の小原庄助さんだよ、知らないの?小学校で習わなかった?そんな庄助さんがタイトルになっている、私の大好きな大人の文化祭「オハラ☆ブレイク」について、少し書きたいと思う。

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 オハラ☆ブレイクは、東北の音楽フェスの代名詞「ARABAKI ROCK FEST.」の企画制作を行う「ARABAKI PROJECT/GIP」が2015年から開催している、福島県の猪苗代湖畔でのキャンプインの音楽&アートフェスティバルである。スローライフを大切に「大人の文化祭」を目指したお祭りだ。アラバキに行った際にこのブースを見つけ、面白そう!と参加したのがきっかけである。

 文化祭と言う名の通り、イベントは多岐に渡る。音楽はもちろんのこと、演劇、美術、写真、映画上映、SUP体験、地元小学生の絵画展や伊坂幸太郎さんの小説まである。アナログナイトでは持って行ったレコードをフェスのスピーカーを使って聴かせてくれるし、奈良美智さんがミュージシャンの生演奏に合わせてライブドローイングをしたりもする。音楽セッションやコラボレーションも多く、ここでは書き切れないくらい盛り沢山のイベントが開催されているのである(タイムテーブルが重なり、毎年悔しい思いもしている)。

 そして、なにぶんロケーションが抜群である。湖と松林、そして望む磐梯山。湖に沈む夕日と一緒に、砂浜に座ってビールを飲みながら音楽に酔いしれ、星空の下で映画の上映を楽しむ。ファミリー層も多く、朝早くから水着を着た子供たちが走り回っていたりする。ゆるーい空気が会場全体に漂っている。多分、みんなが想像する、これぞザ・田舎の夏休みだ。

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 そんなイベントのタイトルになっているのが、冒頭で触れた小原庄助さんである。東北人には馴染みの深い、福島民謡「会津磐梯山」に出てくる人物で、「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで それで身上潰した」と唄われている。ホームページには、タイトルの由来が以下の様に記載してある。

【タイトルの由来】
オハラ=「小原庄助」+ブレイク=「休息」=オハラ☆ブレイク
猪苗代町のある会津地方では馴染みの深い民謡「会津磐梯山」の中で登場する人物「小原庄助」は、「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで身上を潰した」と唄われていますが、実は、小原庄助の生き様は、福島県会津地方が誇るべきスローライフの原点なのではないか、と思うのです。
何かと余裕がなく忙しい日本において、気ままに生きた小原庄助さんの休息のような、究極のピースな空間創りを目指しています。
引用元:オハラ☆ブレイク'20秋 北のまほろばを行くホームページ

 まさに、小原庄助になりに、私は毎年猪苗代へ向かっているのだ。

 前日まで必死に仕事をし、金曜日に有給を勝ち取り3連休を作り、当日までバタバタと荷造りをして車を走らせる。到着したらあとは何も考えず、庄助さんになれば、それで良い。ちょっと気を抜くと、あっと言う間に時間が過ぎる。大抵午前中は、近くの温泉に入りに行って、戻ってテントでゆっくりしているともうお昼、なんてこともしばしばである。スローライフを考えていた訳ではないが、毎年だいぶ、とても良い休息が取れている。

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 今年2020年は、コロナ禍の為、残念ながらキャンプインのイベントは開催見送りとなった。ゆるーい空間と、大規模フェスとは異なるイベントではあるが、やはり多くの人が集まる、と言う点では苦渋の決断があったと思う。

 そもそも、本来は東京オリンピック開催にあたり、猪苗代はガーナのキャンプ地となる予定だった為、今年はお休みになるはずだった。しかし昨年2019年の夏、開催前日に突然の突風が会場を襲い、初日が中止と言う事態になった。みんなが楽しみにしていたお祭りが、ピンチを迎えたのである。荷造りをしながら、その知らせに大変驚いた。しかしスタッフさんたちの素晴らしい努力のおかげで、2日目からは無事開催となったが、そのリベンジも含め、今年の開催が決まった経緯もあったのだ。

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 今年は現地での再会は叶わないが、猪苗代湖からの配信ライブ、と言う形でのオンライン開催が決定している。 オハラ☆ブレイク'20秋 -北のまほろばを行く-2020年 9月21日(月・祝)開演 16:30 / 終演予定 20:00 である。

 facebookにGIPの菅さんが、今回の経緯と思いを綴っていらっしゃるので、ぜひ、そちらを読んで頂きたい。(個人的に、菅さんに勝手に絶大なる信頼を置いている。アラバキやオハラのアーティストのチョイスは、私のツボそのもので、ここでファンになる事も多々あるのだ。麦わら帽子にハーフパンツ、長靴の菅さんが、どうか笑顔で、お元気でいらっしゃいますように)

 北のまほろばを行くシリーズは、「東北の未来を歌うセッション」として、HEATWAVEの山口洋さんを中心に、これまでもアラバキやオハラで行われてきた。毎回、心震わされるセッションに、ため息がこぼれる。今回は、山口さん、細海魚さん、クハラカズユキさんの3人の北のまほろばを行くバンドに、ゲストを迎える形でセッションが行われる予定である。奈良さんのライブドローイングもあるし、伊坂さんの小説も配られる。例年と違うのは、猪苗代湖からの風が吹いて来ないことだけかな。

 PCの前で、はたして私は今年も庄助さんになることができるのか。ビールを準備しながら、今年のオハラ☆ブレイクが始まることを、楽しみに待っている。


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