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微睡みの中で君に預けた時間(小説)/ひと色展

その水滴はただそこにありました。太陽の雫、七色の宿る場所。そんな風に呼ばれながらも微睡まどろんでいました。それは他の誰かからすればひたすらに意味のない時間、一方でとても透明感のある時間でした。

いつか戻ってくるのではと、希望を抱いていたのです。

ほんわかとした春の陽気の中で芽吹いていく双葉を見ながら考えました。こんな風になりたい。うまく心を開けなかった自分を悔やんでいました。


本当は言いたいことがたくさんありました。それなのに全部見ないふりをしてしまいました。どう受け取ったらいいのかわからなかったのです。

あの光に向かって伸びた桜色にも似た思いを向けられて、何も感じなかったわけではありませんでした。それなのにぎこちない対応をしてしまいました。

毎日会いに来てくれました。それなのに突然放り出されてしまったのはどうしてなんだろうという困惑がいつまでも消えませんでした。

もう一度だけでもという願いが水滴を生かしていました。


晴れの日には消えてしまうかもしれないと思い、雨の日には落ちてしまうかもしれないと怖くなり、鳥が来たら飲まれてしまうかもしれないと心配する日々が続きました。




それからどれくらい経ったでしょうか。水滴のいる場所は高く高く、地面が見えないところにありました。これではきっともう顔を合わせることはできません。

心が折れかけたその時でした。

聞き覚えのある声が耳元で響いたのです。期待に満ちて振り返ったそこには見知った顔はありませんでした。それでも自分を見つめるそのまなざしがどこか似ていると感じたのです。


あの頃よりも背が伸びた彼女が、傘を差してそこにいました。


いつだったかの大雨の日に仲間はみんないなくなってしまいました。ひとりだった水滴を救ってくれたひとです。ああ、まだここにあったと嬉しそうな笑みを浮かべています。ずっと心残りだったものはここにあったのだと。

「ありがとう」

きらきらとしてきれいだと自分を認めてくれた彼女に水滴はそう言いました。言葉は通じません。だけどそれでも良かったのです。

そして目をつぶりました。昨日からどんどん体が重くなっていたのです。


ぽたり、と落ちる瞬間。水滴は誰よりも輝いていました。






イシノアサミさん、素敵な企画をありがとうございます!

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ちょこ
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