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創作

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#過去作

移り変わっていく季節の中でその名前を呼べたのなら(小説)

何でも君のいうことを一つだけ叶えてあげるよ、 ある日気まぐれな彼はそう言った。 唐突なお願い事をするときには彼は大抵私を見ていない。窓の外で降り積もる落ち葉を見ながら、歌でも歌うように彼は呟いた。今は秋の終わり。それに呼応するかのように、付き合い始めてしばらく優しかった彼がなんとなく冷たくなってきたような気がしていた頃のことだった。 「この前のデートをドタキャンしたことへの償いのつもり?」 自然と語尾が強くなる。私は爪の先にきれいにトップコートを塗れてちょうど満足したと

夜の雫(詩)

夕日が差し込む教室 またあなたはうつむくの 私の発した何のとりとめもない言葉から 驚くほど鮮やかな色を見せたりするの 青空を背景に快活に笑う君が好きだったと どうしてもう過去形の告白をしたりするの 私が見ていた景色が間違いだというように 重なる視線 今日も結局そらされる真実 ペットボトルのミネラルウォーター 全部飲み下してもう帰ろうと言うの そんなあなたの聡明な眼差しなら 私が持っている邪な思いなんて きっと見透かされているんだろうと 掠れた声でバッグを肩にかけて 下

スピリチュアルレスキュー(詩)

どうして何も言わないの 落ち窪んだ二重まぶた ひりひり痛みありそうだ 熟れきったその赤み まるで頬を染めたよう 都合のいいよう考えて 突き飛ばして転がった 自分勝手 擦りむいて 疲れ切ってしゃがみこむ そうするとさ 気づくんだ 谷底に光差すように 全てが変わっていって 育ちきったその想い 何の言葉もなく始まったこの関係を いつでも終わるものだと思っていたよ だけど連絡なく終わってくこの恐怖より どうして勝るものがあるんだろう 「見た目で選ぶわけじゃない」 しみついた常