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「消えたい」人間【行方不明展】

行方不明展に行ってきました。

そこで考えた事。


蛇足


Twitterでたまたま流れてきたので、おっ!面白そう と思い…
ただ、日時指定のチケットがほぼ売り切れという大盛況ぶり。土日しか自由になれない人間としては、少し厳しい(-_-;) 
が、何とか入場…。

どこから聞きつけてきたのか、中は「展覧会」にしてはぎゅうぎゅうな位、人が多かったです。それだけ、最近はホラーモキュメンタリーが流行っているという事かな。

思えば、この手の物は結構2ちゃんねるのホラー系コピペとかで、よく見た気がします。ホラー的な体験談を語っていくスレのような。この展覧会は、ちょうど「ネットで見たことあるような、聞いたことあるような例のアレが、実物として目の前に出てきたら…」という感じでした。例えがマニアックかもしれないけれど、「ジブリパークでサツキとメイの家を再現してみた!」みたいな。展示物は何かを再現したわけでは無いので、「あ、あの作品に出てきた…」とはなりませんが、「うわ~何かありそう、でも本当だったら怖い」という絶妙な不気味さで、怖いもの見たさな怖がりとしてはなかなか楽しかったです笑。

「映え」という、「行方不明」と対極の概念

やはり、ちょっと不気味で変わった展覧会だからでしょうか。写真OKという事も有り、撮影している方が多かったです。
特に顕著だったのが、公衆電話の展示物。

「ちゃんと忘れるから、心配しないで」という謎の叫び声がよく聞かれる、という噂が立った(という設定の)古びた電話ボックス。果たしてその叫び声が電話から発せられていたのか、それとも…説明文から真相を推し量ることはできません。

とにかく、そこに並んだ長蛇の列!

皆、電話ボックスに入ってみたい、というか、電話ボックスに入った姿を記念撮影しているようでした。電話ボックスに入った人が消えたとか、電話から何か聞こえるとか、そういう話かと思いきや、そう言う訳でもなく…。
まあでも、インパクト抜群の見た目だったので、気持ちは分かる。何なら自分も列に並んで写真撮りました笑 記念というか、記録と言うか。。

触ってみたい、入ってみたいという気持ちもありましたが、ミーハー的精神と言うか、いわゆる映えスポットでインスタグラマーの真似をするみたいな。。なんとなく人間の多さに感化されて写真を撮ってしまいましたが、ちょっと後悔。こんな光景、もし自分が作者だったら笑うかがっかりするに違いない。というのも、「映え」=「行方不明」あるいは、この展覧会のテーマとも言える「消えたいという強い想い」とは真逆のものだからです。

「消えたい」は「死にたい」ではない

展示に散見される「この場所からいなくなりたい」と願う人々とは、なんとなく自殺志願者のようなものかなーと感じておりましたが、展示を見ていく中で、それは全くもって間違いであると分かりました。

特に、ある一つの展示物…うろ覚えなのですが、手記のようなもので、「妻と心中しようとしていたら、妻の方が忽然と消えていた。妻は日ごろから『消えていなくなりたい』と話していたが、それは『死にたい』というのとも異なるのかもしれない」という記述だったと思います。
確かに、「死にたい」と思って実際に実行した人は、悲しいことにこれまでに何人も居る。しかし、「消えたい」=「人から忘れ去られたい、この場所に居たくない。でも、死にたいわけじゃない」という人は、どうすればいいのだろうか。そういった人々が、儀式や本当か嘘か分からない、神がかり的な方法に縋るのかもしれません。

「存在を消す」と言う事は、死ぬことよりも、実はずっと難しい事なのです。

「消えたい」という祈り

また、展示の中で、特に印象に残ったのが「『鬼門を開く方法』に関する写真」という作品。「都内で複数の駅にあるという盛塩を順番に足で蹴散らした後、電車の中で目を瞑り、祈りながら座っていると、その人は晴れて『異世界』に行くことが出来る」(展示原文ママ)という都市伝説(?)を、実際に実行する中高生の写真群。とはいえ、写真がコマ送りのように流れるビデオであり、最後は実際に短い動画が流れます。

動画の中で、順番に地下鉄の各所に有る盛塩を足で蹴散らした少年たちは、最後「祈りながら座る」手前まで儀式を完成させます。
しかし、怖気づいたのか子供達は電車に乗らず、ホームに残る。  一人を除いて。電車に乗り込んだ一人の少年はホームに残った友人らに手を振りると、壁に凭れて目を閉じ、手を組む。彼を乗せた電車は進み始め、やがて見えなくなる…。

「行方不明展」のエピローグ(順番的に、展示の最後)では、「不可解な失踪に関連する現象は、『居なくなりたい』という強い思いを持つ人間のもとに現れる」(うろ覚え)という説が展開されていました。これを踏まえて上記の作品を見ると、最後に電車に乗り込んだ少年は、動画の中の子供たちの中で、もしかしたら唯一、心の奥底から「この世界から消えたい」或いは、「異世界に行きたい」と願っていたのかもしれません。こういった、ひとりかくれんぼやこっくりさん等の都市伝説的な儀式は、大抵が肝試しや怖いもの見たさで試すものでしょう。きっと、少年の友人らも、そうだったに違いありません。ただ、彼だけが違ったのです。

ひっそりと仕掛けられた罠

ところで、会場には「行方不明の痕跡」…もとい作品が展示されていただけでなく、一見「なんだこれ?」と思ってしまうものも…あったらしいです。が、あまり見つけられませんでした(-_-;)ネットの情報です。もう少しゆっくりと見られたら、或いは見つけられたのかも?いやいや、大盛況なのは、良いことです。

私が唯一見つけたのは、壁と壁の隙間にこっそりと貼り付けられた、QRコード。リンクを読み込むと、アンケートフォームに飛び…展示の感想でも聞かれるのかと思いきや、そこにはただ一言。

「あなたは、消えたいと思ったことはありますか?」

回答欄は、「はい」「いいえ」の選択式のみ。その時は笑っていましたが、後からハッとしました。もしかしたら、あの場所には、本当に「消えたい」人が、居たのかもしれない。

電話ボックスに並ぶ長蛇の列、展示物に群がる人々。多くは、怖いもの見たさとか、ホラー作品が好きな人だったでしょう。しかし、本当に「消えたい」と思う人が、実は紛れ込んでいたとしても、おかしくありません。

勿論、展示物は誰かが作ったものであり、作品だといわれています。しかし、切実に「消えたい」と思う人が、虚構だの作り物だの、気にするでしょうか。これは偽物だから、と割り切れるほどの心の余裕がない人が、儀式や都市伝説に縋るのではないでしょうか?なんとか自分が消え去る方法、忘れ去られる方法を探して、少しの糸口であっても手に入れたくて、展示を見に来る人が居たって、おかしくないと思います。だって、「消えたい」という強い思いの下に、「行方不明」は発生するのだから。

「あり得るかもしれない」楽しみ

…こんな風に、「もしかしたら、本当に…」と、チラッとでも思えてしまうのが、モキュメンタリーの良いところだと思っています笑
ただし、こういったものは某ネットのお方が言っていたように、「本当か嘘かを見抜く力」を持ってこそ、と思っています。さもないと、ミイラ取りがなんとやら、とも言いますし…。

現実に足がついているのを確認して、こういった創作物を楽しみたいものですね。以上、「行方不明展」の感想でした。





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