朝麺のススメ〜朝ごはんとの気分の合わせ方〜
どうやらこの世界には「朝から麺を食べる」、いわゆる「朝麺」というものがあるらしい。
考えてみれば、確かに全然不思議じゃないし、むしろ至極当然な選択肢ですらある。
私は、そばもうどんもパスタもラーメンも好きなのに、それなのに、なぜか朝に麺を食べたいと思ったことがなかった。
それはきっと、汁を作っておいたり、麺を茹でるのもちょっとハードルが高そうだし...とか思ってしまっているから。
でも、知ってしまえば気になる。
そう、私は今、朝から麺を食べる「朝麺」が気になって気になってしょうがないのである。
副編集長みなふーも、編集長にもふーも朝麺の良さを実感しているようで。
もうこうなったら、“これまで朝ごはんの選択肢に「麺類」がなかった人”の代表という気分で試してみよう。
朝麺に挑戦①ほうとうを食べる
朝麺の良さに半信半疑のまま、明日の朝ごはんに食べる「ほうとう」の汁の準備をする。
寒い夜の仕事帰り、スーパーでほうとうの麺を発見して、かぼちゃ入りのほうとうが食べたくなったのだ。
カボチャにキャベツにたまねぎに油揚げ。
帰ってからその日のうちに大きな鍋にたっぷり作った。みそのいい匂い。
あれ、ちょっと朝ほうとうが楽しみになってきた。
翌朝。ちょっと寝坊して焦る。
最近は寒くなってきて、ふとんから出られない。
小さい鍋に、夜のうちに作っておいた汁とほうとうを入れてぐつぐつ煮込む。
煮込んでる間に部屋をかけまわって支度を進める(私はきっと天才だ)。
3分くらいでいい煮込み具合になって、思わずにんまり(私はきっと変な人だ)。
どんぶりにうつして、両手で持って手を温めながらテーブルへ。
うわーーーー これは……おいしい確定。
煮崩れた甘いかぼちゃと、みそ味のしょっぱい汁がまあ合うこと合うこと。全部のだしを含んだ油揚げは、噛むとじゅわーとおいしさが口いっぱいに広がる。
ちゅるちゅると麺をすすっていると気持ちよくて箸が進んでいく。
胃が両手を広げて麺を歓迎している感じがした。
朝麺に挑戦②そばを食べる
ほうとうの次は、そば。
よし、明日の朝はあったかいそばにしよう。
具は、ネギとわかめでシンプルに。食べる前に天かすも入れちゃおう。
夜、水と粉末だしとしょうゆで汁を作り、そばを茹でておく。5分くらいでできた。
あんなにめんどくさがっていたけど大したことなかった。
次の日の仕込みをしている料理人ってこんな感じかな?と、ふと考える。
朝ごはんの「準備」を、「仕込み」と呼び変えるだけでなんだか料理人気分だ。
翌朝。
今日も寒いし眠いしで、また寝坊した。急ごう。
猛スピードで支度を終わらせ、どんぶりに入れておいた汁にそばを入れてレンジでチンして完成。
早い!仕込みのおかげだ。
寒い朝、あたたかいそばが入ったどんぶりから湯気が立ち上っているのを見ていると、急いでいた気持ちにブレーキがかかる。
そばをズズっとすする。
細いそばはまとめて勢いよくすすれて、うどんのちゅるちゅるとは違った気持ちよさがある。
やわやわに甘やかされた麺とわかめとネギ。
サクサク食感が消えないうちに食べたかった天かすも、あっという間にふにゃふにゃに。
わたしも一緒になって力が抜ける。
朝麺、いい。
一口目の前に気合いがいらない。
胃が身構えることなく麺を受け入れてくれて、食後もからだが軽かった。
この食べやすさの理由はなんだろう。
きっと「すすって食べる気持ちよさ」だけではない気がする。
***
自分のテンションとごはんのテンション
ごはんには、テンションの低いごはんと、高いごはんがある気がする。
例えば、フレンチトーストはテンションが高そう。
「朝だよー!充実させようね(キラキラ)」感がある。なんとなくケーキやピザトーストもテンション高めだ。
逆に、おかゆやお茶漬け、塩むすびは落ち着きがある。
「おはようございます。朝ですね」と、ふすまをスッと開けて丁寧におじぎをしてくれそうだ。
グラノーラやヨーグルトやシンプルなトーストは、低くも高くもない中間。
何を言っているんだ?と思うかもしれない。
でも。
どんぶりに入った全体的に茶色いそばや、煮込まれてくたくたになったほうとうを目の前にしたとき、寒さと眠さでテンションが低い自分と近い雰囲気を感じた。
ごはんと私のテンションが近かったから、頑張らずにすんなりと受け入れられたのかもしれない。
もしこれが、ウキウキしている休日の朝だったら、そばはちょっとだけ物足りなく感じていたように思う。
朝起きたとき、テンションの高さが自分と近そうなごはんを選ぶと無意識に感じていた「なんか今日の気分と違う」がなくなるのかもしれない。
こうして朝麺の良さを実感した私が今、「朝麺」の中でも目論んでいるのが「朝パスタ」。
でも、パスタはちょっとテンション高そうなのでまだ手が出せないでいる。
ウキウキな朝よ、早く私のもとにおいで。