S君(メガネ×初恋)
習字の授業はキライだ。
皆姿勢を正して硯と半紙と筆先だけをジッと眺めている。
そして、私の名前の画数が多いのも習字がキライな原因の一つだ。
希羅梨(キラリ)なんて名前なんで付けたのよ……。
たとえ小筆でもこれだけ画数の多い名前は左隅に収まらない!それに私はこんなに暗い性格なのに……。
上手く書けないしイライラするしで、私は一番後ろの席なのをいいことに小筆で落書きを始めた。
S君は相変わらずカッコいいなぁ……と、右斜め前に座って真面目に課題に取り組んでいる彼の横顔を私はおもむろに描き始めた。
まんま描くと彼だってバレちゃうから、アニメ風にデフォルメして。
そのまま時間を気にせず夢中になって描いていたらふと頭を小突かれた。
「あら希羅梨さん、これはまた見事なイケメンの墨絵ですね!」
先生は私から半紙を取り上げると、広げて皆に見せながら意外にも私のことを褒めてくれた。
ふと彼の方を見ると、S君の眼鏡は水滴のようにキラリと光ってた。
(了)
このお話はこちらの企画に参加していますφ(..)✨