涙雨(なみだあめ)
とあるアジアの小さな村には通年殆ど雨が降らなかった。その村に暮らす14歳の少女は、弟妹たちの面倒を見ながら勉強に勤しんでいた。だが勉学に没頭する暇など殆どないのが現状で、いつも家族のことや村のことを考えていた。
雨乞いの儀式は週末毎に行われていたが、雨季がないこの村ではその甲斐虚しく殆ど降らなかった。麦や馬鈴薯等もなかなか育たず、お腹一杯になるほどの食事がいつも摂れない現状に少女は心を痛め、いつも皆が見ていないところで偲び泣いていた。
その様子をその時上空を通りかかった貯涙通帳担当の神様がたまたま目にし、これは放っておけないとその日から記帳を始めた。翌週から少量ずつだが雨が定期的にこの村に降るようになった。それまでの記載されていない分の涙量を神様が仮計算し、追記してくれたのだ。
雨が降るたびに喜ぶ家族や村人たちを見て少女が嬉し涙を流すので、以降この村に雨が枯れることはなかった。