rovers
エアコンが切られた室内で
寒さとため息で揺れるアレンジメント
無邪気を装った花弁は
誘惑の蜜を携えて私の扉(ドア)を叩く
暖まりたいならこちらへおいでよ
それに呼応するように
私はそちらへ歩を進める
まるで捨て猫を迎えるみたいに
あなたは自分の毛布を丁寧に拡げる
私はそれにすっぽり包まると
安堵の鳴き声を上げる
毛布はしずかに閉じられると
そのまま舟となり時の河を流れはじめた
元の岸には二度と戻れない
ゆらり、たぷん……
不安定な航海は始まったばかり
何処へ辿り着くかは誰にもわからない
ただ流れに任せ、行けるところまで進むだけ
水底では先人たちの記憶の残骸が
キラキラと、時には真っ黒になって
漂っている