囀る鳥は羽ばたかない 9巻【感情があふれ出す】
ずっと感情を
押し殺してきた
この人が
逃げないように
9巻の帯が
「4年後の百目鬼初のモノローグ、たったこれだけでここまでの百目鬼の行動原理をすべて語りつくしてる」文チョイスで
わたくしもう感無量、歓喜K点突破です。
もう何言ってるか日本語これでオッケーかもわかりません。
感情を押し殺せない!!
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ある目的のため矢代は、桜一家の構成員になった
百目鬼と行動を共にしていた。
部下ではなくなった百目鬼に
内心戸惑う矢代だが、百目鬼は変わらず男に
抱かれている矢代に怒りを隠さず、
強引に身体の関係を迫る。
――本当にセックスが好きですね
離れていた四年の間に、百目鬼が変わったことを
矢代は身を以て知ることになり……
(作品紹介)
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ヨネダ先生自身もおっしゃっている通り
肌色多めの9巻(fromローソン特装版)
5巻も多かったけど後々読み返すとひたすらつらい肌色というか
じゃあ9巻はつらくないのか多幸感あんのかと言われると一瞬口ごもりますけど
そうじゃなくて
そうじゃないんだけど
私はかなり前向きにとらえています。9巻の矢代と百目鬼。
毎話の覚書でも繰り返し書き連ねていますが。
9巻は、4年前のふたりのやりとり、各々の感情の揺れ、言動などとのリンクが多々あります。
言葉が、目が、あれとかこれとか、以前のなにがしかにリンクしてる描写がとても多い。
気付いてはグッとくる。
でも同じことの繰り返しではなく、以前とは意味合いが少しずつ違ったりなど、前進していると感じられた9巻。
そう、前に進んでる。
ここはホント意見の分かれるところのようですけど
私は一貫して「前向き・前進派」です。
延々読み返しまくってる。
詳細な感想・覚書は各話で長々語っていますので
単行本の感想としての覚書を、過去を交えつつ。
※毎度の注意事項:
以下がっつりネタバレ含みます。
登場人物の心情とかストーリー解釈とかは
あくまで個人の感想・深読み・妄想です。
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5巻の肌色(言い方)は、
うすうす疑惑を持っていた百目鬼の身体の変化を確認した矢代が、こいつだけはそんな目で自分を見ないと思っていたのに結局ほかの男たちと同様に欲情しちゃうのかと失望、でも百目鬼だけはこれまでの部下のように捨てられない。
どうしていいかわからないまま混乱、隠していた本音がこぼれ出ると百目鬼がそれに気づいてすくい上げ、千載一遇のチャンスとアクセルベタ踏み恋情大解放。
自分が矢代にとっての何かであるなら、でも自分をを怖いと感じるなら。
「惹かれた」だけでは済まされない、自覚した独占欲・束縛欲を言葉で伝え、その欲望と「優しく大事に」をベースに矢代の頭のてっぺんからつま先まですべて自分のものにするかのごとく丁寧に抱く。
そんな百目鬼の優しいセックスは矢代にとって未知の領域。
怖い、逃げたい、やめさせたい。
でも徐々にほだされついに達した瞬間、矢代を襲う最悪のフラッシュバック。
(早口で一気に)
身体は繋がったけどふたりの心はバラバラでちぐはぐ。
その後、矢代だけを視界に入れて真直ぐに突っ走り、絶対にそばを離れないと有言実行を押し付ける百目鬼に対して、
百目鬼という特別な存在と慣れない感情の揺れに対する恐怖もあるが、取り急ぎ自分がこれから仕掛けようとしている文字通り捨て身の作戦に百目鬼を巻き込みたくない矢代。
ふたりとも行動のベースは「相手のため」。
でもそんなふたりの熱量の方向と手段は違い過ぎた。
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矢代は百目鬼を「捨てた」と影山に、自分自身に言っていたけれど
矢代の心も身体も捉えて離さないつもりでいた百目鬼にとっては「逃げられた」という認識。
あー、たしかにね。
寝てる間に逃げられた。
脚を撃たれて動けなくなってる隙に逃げられた。
頭打って覚えていないと子どもの言い訳みたいな嘘をつかれて逃げられた。
逃げられてから4年、再会までの百目鬼が矢代攻略をどう練っていたのかは詳しく語られていない。
半年ごとに変わる矢代の仕事先は把握していたけれど、そこに矢代の姿を見に行ったりしたことはない。
(それもどうして?とは思う)
わかったのは、
「再会したら今度は絶対に逃がさない」
「そのためならなんでもする。どんなことでも、自分を曲げてでも」
という強く深くブレない想いだけ。
それで充分な気もしてきた。
あっいややっぱり知りたい。
百目鬼のことは行動も思考も事細かに全て知りたい。
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8巻は
自分のパーソナルな部分を一切見せず語らず、上からな物言いと行動で矢代の身も心も粗雑に扱う百目鬼と
4年前から自覚はしていたものの受け入れることができず、胸の奥深くに沈めて忘れたふりをしていた百目鬼への想いが再会で動き出し、ついにその恋情を受け入れたのにすっかり変わってしまった(ようにしか見えない)百目鬼に翻弄される矢代の
ああ言えばこう言う、売り言葉に買い言葉の応酬と
頼んでもいないのに「性欲処理」と称して指で散々イかされまくる矢代と
「性欲処理」という名目を便利に使ってほかの男の残滓をいちいち乱暴に上書きする百目鬼の
1ミリも萌えないベッドの上のふたり(白黒対戦)
が繰り返されていた。
4年間、性的な感覚を失くし、勃起することも感じることもなくなった身体が百目鬼に対してのみ反応した矢代。
それを知らないまま、4年前どおりの反応をする矢代に侮蔑の言動を与える百目鬼。
矢代はその都度深く傷ついた挙句、百目鬼とバーのママとの親密っぽい姿がとどめになり、
自傷行為として城戸という古びたナイフに切りつけられようとしたところを百目鬼に連れ去られた。
いやぁ読んでてつらかった。
各店舗特典漫画に逃避しちゃうよね!
いつかこうなる、近い将来ふたりは絶対こうなるから…っ
と強く思いながら読んでた。
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で、9巻。
「常に無口で無表情、無感情」な4年間を過ごした百目鬼の怒り。
怒りは矢代にとって特別な感情。怒りが愛情にすり替わる。
自分に向けられる百目鬼の激怒に悦びを感じたのもつかの間、百目鬼の変わり果てた背中を見て矢代も激怒し、その思いがけない矢代の激怒に百目鬼の感情をせき止め続けていたダムの水量に変化が。
つい勢いでキスしたものの、嫌がられるどころか抱きつかれしがみつかれた。
そこから百目鬼が少しずつ変わっていく。
まず
「矢代の様子をしっかり見ている」
自室での荒くれセックスでも様子をうかがいつつではあった。
ただ、まだ4年前の「矢代が好きなプレイ」「こうしないとまた拒絶され逃げられる」という古い認識フィルターがかかっていた。
でも井波が矢代の現状をペラったことで古いフィルターが井波のスマホとともに粉砕。
その後矢代に
○井波から聞いたと報告
○自分以外には無反応、自分にしか反応しないんですよねと追及
○矢代が認めたことを受け、酷いの好きでしたよねと過去の確認
矢代の売り言葉を一切買わず、拗ねる矢代を壁ドンで逃がさず、これまで見たことない矢代の表情を受けて水位が上がった恋情がダムからあふれ返った。
(でもダムは壊れない。4年間で恐ろしく頑丈なダム作り上げたなあ)
キスしながら、舌を這わせながら、自分に対してだけそそり立つものを口に含みながら、ずっと矢代の様子をうかがっている。
そしてもしかして自分を偽らなくても、自分のままでも大丈夫かも?とベッドに連れて行く。
長いキスはキス魔ゆえの「キスしたいから」が9割だろうけどその間もずっと見続け、確認している。
キスの最中「もういい」と言われるまで矢代の身体に触れていないのも、それでも逃げたりせず応じている矢代の様子をじっくり見ている感じ。
で、自分が抱きたいように抱く。
様子をうかがいながら。
優しすぎたと思えば即強めに。でも自分を抑えきれずまた徐々に自分が抱きたいように。
とにかく4年前とは違う。ただただ己の恋情と情欲で矢代を繋ぎ止めようとしていたあの時のセックスとは。
※百目鬼の「自分が抱きたいように」って
キス多め、顔見たい、痛くしない、優しく大事に、矢代まるごと全部自分のものに、って感じでしょうか。
綺麗な脚を慈しんでたら蹴られて怯えた目をされたので、全身優しく大事にはまだ無理かー、でもいずれ…みたいなところかと。
それと
「独占欲・束縛欲を隠せなくなってきた」
百目鬼は自室に矢代を連れ込んでも、それまで通り指で済まそうと思っていたかもしれない。
すがるような目で途切れ途切れに名前を呼ばれなければ。
理性をぐるぐる巻きにしていた鎖がバチっと切れて、勢い余って身体をつなげてしまったけれど、なんとか必死の形相で自制し、矢代が城戸に望んでいたであろう荒くれセックスに持ち込んだ。
(荒くれ過ぎではあったけど)
(そもそも城戸は小さくて早いのであんなにしなくても)
(つまりあれが精いっぱいの自制心)
でも、このあとから百目鬼に変化が現れる。
○前髪を下ろしたままの矢代に
「自分以外にそんな油断した寝起きっぽい可愛い姿を見せるな」(意訳)
○井波以外とヤるのも怒るのなとすっとぼけたことを言う矢代に
「そら怒るだろ理由なんかないわ自分以外となんて誰であろうと許さないってだけで」(意訳)
○トイレを理由に席を立つ矢代を即追跡、案の定井波と連絡を取っているとわかればスマホを取り上げ井波との密会を阻止
わかりやすい!
こんなにわかりやすい独占欲・束縛欲を矢代さん全然気づかないんですよ!!
それはさておき、おねだりされて身体を重ねるって、こんなにも男に変化をもたらすんですね。
欲しいと言われたがってたもんねえ。無意識だろうけど感情じりじり隠しきれなくなってくるよね。
そして井波に「矢代さんと二度と会うな」と百目鬼的本題で詰め寄れば「それを決めるのはお前じゃねえ」と正論を吐かれ、それならと矢代のもとに日参、矢代から井波と会う暇と体力を奪う実力行使。
事前連絡もなしに訪問し、ちゃんと出迎えてくれる矢代を一秒も無駄にせず抱く。
あと、予想というかもう願望ですけど徐々に徐々に「優しく大事に」の度合いを増量していってそう。
自分の子どもは毎日見てるからその成長に気付きにくいみたいな感じで少しずつ矢代の心身を百目鬼のセックスに慣らしていってそう。
……だといいなあっていうね!!
自分から逃げない矢代、
自分の行為に応じる矢代、
自分にしか反応しない矢代。
百目鬼はおそらく、手応えを感じてるんじゃなかろうか。
でも…
初手がアレだったせいで、うつむいてしまった矢代は百目鬼の変化に気付いていないし気付けない。
そろそろ想いを、本音を言葉にして伝えてもいいのでは。
伝えてもっていうか、伝えたほうがいいのでは。
追い詰めて矢代の本音を引き出しておきながら、百目鬼は言葉にしていないんですよね。
タイミングを計っているのか、まだ早いもう少しと思っているのか。
伝えないままでは、攻略ハードモードクエストの難易度がさらにどんどん上がっていくだけだと思うの。
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攻略難易度激ムズの矢代。
何を言ってもどう抱いても、俺なんて、俺ばっかり、俺だけが、とうなだれる矢代の顔を上げ、クエストクリアするための攻略の最後のカギは
「バーのママとの誤解を解く」
これ一択だと思うんですよね!
(百目鬼に女はいない説支持過激派)
そんなわけで、これを明確にしない限り、百目鬼に日々通い詰められても優しく抱かれても百目鬼の真意がわからない。
矢代はもう、自分の百目鬼への恋情は受け入れている。
人を好きになるという気持ちで自分自身が切り刻まれて血まみれになっている。
でも百目鬼の心は自分に向いていない、女もいるし、自分は嫌われていて恨まれていて、百目鬼の性欲処理に使われているだけ、と思っている。
そしてことあるごとにちょいちょいちらつくバーのママの影。
百目鬼の嘘と七原のガセの相乗効果で深く濃く脳裏に焼き付いたその影を取っ払わないと。
終盤、百目鬼の言動が変わり、来ては抱いて帰っていく百目鬼に矢代の感情も大きく揺れている。
帰って行く後姿に寂しさを感じてる。
売り言葉に買い言葉から離脱した百目鬼、ひとことでもいい、矢代に本音を伝えてあげてほしい。
(『ひとこと』ならすでに言ってるけども。
「また来ます」
これも百目鬼的にいろんな意味を含んでそうだけどそうじゃなくてね!
もっとわかりやすいひとことをね!)
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わたくしすっかり百目鬼矢代しか見えていないのでその他の諸々をほぼほぼスルーしていますが
そんなふたりの周辺でも状況が大きく変化し始めている。
○矢代と百目鬼が再会したことを三角が知った
○百目鬼と矢代の関係の深さに綱川が気づき始めた
○敵対している甲斐が矢代(道心会)と百目鬼(桜一家)を認識
今後この辺が大きく絡んでくる。
矢代と百目鬼、ふたりにとってのラスボスは三角だと思っているけど綱川の動きも油断できない。
なので
○天羽が綱川にお仕置き予告(楽しみ)
も重要ファクター。
ふたりの状況のさらなる変化には三角・綱川・あるいは竜頭の何らかが関わるかもしれないし、
ただでは引っ込まなそうな井波がまた何かしでかすかもしれない。
どうかふたりが大きな怪我もなく無事で幸せになりますように。
今後の展開を妄想すると動悸息切れがしますが
甘々展開は絶対にあきらめません。
今は訪問するたび帰って行く百目鬼も、いずれいちいち帰らず矢代のそばで寝て起きる日々になりそのままずっとふたりで暮らしていくと信じています。
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最後に、各店舗特典漫画について
今回は4店舗。
○七原の妄想すら絶対に許さない百目鬼(アニメイト)
○9巻発売と同時に開催されたコラボカフェより、パジャマ姿のふたり(コミコミ)
○コラボカフェより、お仕事の報告してご褒美を欲しがる殺し屋とそのボス(とらのあな)
○コラボカフェより、ご褒美を与えるボスとご褒美を堪能する殺し屋(ホーリン)
アニメイト以外はしっかり「コラボカフェより」「パロ」と明記。
ということはぁやっぱり8巻の特典漫画はパロディではなくぅ「本編と地続き、その後のふたり」で決定だ!
(独断で大満足)
(主にコミコミ)
部下に甘々なマフィアのボス・甘え方がかわいい部下
延々見ていたいふたりの日常
今回もとっても良かったです!
ただ、矢代の眼帯はコラボカフェのイラスト公開時けっこうな衝撃を受けまして
あ、矢代の右目問題をそんなふうに大きく扱っちゃうのねとか
部下がさらなるご褒美をいただく際に眼帯をああするってことはそんなに深刻にとらえなくてもいいのかなとか
いろいろと複雑に動揺しました。
あんなでかい眼帯すら似合っててカッコいいんですけどね。
そして「特典漫画はパロディと明記されてなければ本編と地続き」教信者としては
9巻の百目鬼が七原に対して電話のやりとり、軽すぎる会釈など、なにやらずいぶん塩対応だなと気になっていたんですけど、このメイト特典のくだりが本編と地続きなら
「こんな嘘を得意げに吹聴してそれを百目鬼が聞いたらたとえ嘘でも許さないよね、矢代に密着までされてるしね、その後七原への態度がおざなり塩対応になるのもしょうがないね」
と納得するなどしました。