僕の知り合いの知り合いの知り合いのヤスさんという人の話
タイトル通り、僕の知り合いの知り合いの知り合いのヤスさんの話です。
「知り合いの知り合いの知り合い」と三連している「知り合い」の中で一番最初の「知り合い」に該当する人は僕の大学時代のバスケサークルで一緒だった知り合い。その知り合いが大学卒業後に職場の人等々の有志を集めて夜に中学校の体育館を借りてバスケをやっていて、それに僕も何回か誘われて参加したんだけど、そのメンバーの中の一人が「知り合いの知り合い」に該当。
「どんだけまどろっこしい言い回しやねん!?ワレ「知り合い」連呼しすぎやろワレ?もう普通に登場人物全員「知り合い」で通せやワレ」と怖いツッコミをされるような面倒な説明をする理由の一つは、まず偏に僕が弄れているから。もう一つは、僕がそのメンバー達に対して必要以上に壁をつくっていた事。
「知り合い」が女性で、集まってるメンバーも全員女性だったので、バスケの腕も、単純に物理的な力も、メンバーの中で僕はズバ抜けていました(あくまでそのメンバーの中では、ね)。本気とまではいかなくても、ある程度は真面目にやっているフリはしていましたが、実際は小学生と遊んでいるような感覚でいました。それをメンバーには見透かされていて「あいつ、私たちを馬鹿にしているの?」とか「あいつは止められないからマークはしたくない」とか陰口を言われているのではないか、という被害妄想が僕の中に常にあったのです。
この頃、仕事で色々あった僕は、俗っぽい言葉で括ると「人間不信」というやつになっていました。目の前にいるこの人は、今は笑っているけど、実際は、僕を罵倒し軽蔑し憤怒し嘲笑っているに違いない。少なくても「あいつって、ちょっとこういうところあってアレだよね…」程度の悪口は言っているのは間違いない。みんな僕を否定している…と、マイナス思考がもう飽和状態に陥っていました。もちろんメンバーは、僕を輪の中に入れようと積極的に促してくれましたが、僕はそれを受け止められず、休憩中は端っこでポツンとしていました。それでも、「メンバーの中で唯一の男」「メンバーの中で格段にバスケうまい」という要素で、割と居心地は悪くない、というアンビバレンスな感情も一方では持っていて、タイミングが合えばチョイチョイ参加し、ひょっとしたらメンバーの中には「つまらなそうにするなら来るなよ。空気悪くなるから」と思っていた人はいたかもしれません。そんな負い目から、「知り合いの知り合い」を「知り合い」と言い切るのが、何だかおこがましくて恥ずかしくて、「知り合いの知り合い」と何となくボカシた言い回しにして逃げているのです。「もー、いちいちメンドくさいわワレ!」とツッコまないでください。
さて、話を戻しますが、ある日その「知り合いの知り合い」が連れてきたのがヤスさんです(満を持して出たーー!!ここまで長かったーーー!!)
その日、僕は遅れて行ったので、体育館にはもうヤスさんはいました。彼は僕を見るなり、勢いよく歩いてきて、ビシッと手を差し出し「ヤスです!初めまして!」と、ハキハキと満面の最高の笑顔で言ったのです。僕は内心、完全に圧倒されていました。こっそり「知り合いの知り合い」に話を聞くと、実は彼、専門学校を卒業した後、世界放浪の旅に出ていて、最近帰国したとのこと。
彼は僕の2歳上の男性で、イケメンではないけどいい人の雰囲気が全身から惜しむ事無く放たれていてバスケがうまくて、体育館に来た初日からいきなりメンバーに「それじゃダメだ」とか「こうやった方がいい」とか指導してて、でも悪い気はしなくて、むしろ皆楽しそうにやっていて、僕も「唯一の男」「バスケうまい」の要素を一斉にかっさらっていった彼に対して、普段なら自分の腕を噛んで悔しがるところだけど、全くそんな感情が沸かないほど、彼の言動には一切の嫌味を感じないのです。それは天性のものなのか放浪の旅で培ったものなのかは分からないけど、とにかく「カリスマ」の一言。
そんな彼が、休憩中に僕の所にゆっくりドリブルしながら来て
「ねえ、1on1(ワン・オン・ワン。一対一の勝負の事)しようよ!」
僕、クネクネしながら「いやぁ、僕、大学卒業以来、まともにバスケしてないんで。ここにもたまにしか来ないし。ヤスさんみたいにうまい人と勝負する自身ないすよ」
ヤスさん、ハキハキと「俺だって今日久しぶりにボール触ったからね。バスケ歴はどんくらいなの?」
僕、オドオドと「小学校(ミニバス)から大学までずっとです」
するとヤスさん、フッと笑って、「OK!十分だ。やろう!」そう言ってボールを僕に投げた。
うわっ、カッコいい!こんな漫画みたいなキザなセリフをサラッとスマートに言えるのヤスさんくらいだよ、と思いながら僕も「まいったなぁ」と苦笑いしながら言う(イメージは、漫画スラムダンクの牧VS仙道ね)。
最初の僕の攻撃をヤスさんが止めて、次のヤスさんの攻撃を僕も止める。ここでお互いが、だいだい実力は同じだなと認識する。するとヤスさん、またもやフッと笑って、
「いいね!今日は久しぶりに限界超えられそうだ!」
きゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
カッコいいーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
勝負はドローだったけど、そんなのどうでもよかったですね。もうね、完全にヤスさんの虜でしたよ。僕が今まで生きてきて尊敬に値する人物は二人だけ。小学校の同級生に宮本君と、このヤスさん。
ヤスさん、今どこで何をしているのでしょうか。僕は恐れ多くて、飲みに行きましょうとかとても言えたもんじゃないですけど、また会いたいです。
ちなみに、ヤスさんの名前、ヤスさんじゃないかもしれません。ヒロさんだか、トモさんだか、ザクさんだかドムさんだか、とにかく二文字だった事は覚えてるんですけどね。
「いまさらかいワレ!」とはツッコまないでください。
以上
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