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秋田柴子さんの「雨を知るもの」の読書感想文という名のファンレター
「雨を知るもの」 秋田 柴子
ネタバレ含む感想なので、ネタバレ嫌な方は逃げてください!
下に続きます。
雨の匂いや音。湿り気を纏う風の感触。そういった雨の気配を感じさせる語りが全体にあって、とても好きな物語でした!
主人公が出会った友人との大切な時間と、親や周囲、自分に対する葛藤や後悔の対比が、まるで雨の光と陰のようなイメージです。
私も高校生の頃は桃子のように、将来のことは漠然とし
【毎週ショートショート】半笑いのポッキーゲーム
11月11日はポッキーの日。
誰が言い出したか知らないが、同じような毎日を送る私たち学生からすれば、それは大切なイベントであった。
「ポッキーゲームしようぜ!」
仲良し三人組のA子が言い出した。イェイ。さっそくポッキーをスタンバイしてじゃんけんでデュエルする。勝者は恥じらう敗者のポッキーゲームを高みの見物だ。
「苦しゅうない。はようせい」
「ぐぬぬ」
私はB実と向かい合い、ポッキーのはじを喰んだ。
『毎週ショートショート』ほんの一部スイカ
「ほんの一部スイカになってますね」
妊婦健診でエコーを撮っていた医者が突然そんなことを言い出して、素直な気持ちで「はい?」と聞き返してしまった。しかし医者は至って真面目顔である。
「スイカの種を出さずに飲んだでしょ。いるんですよね。まあ気持ちはわかります。ほじったつもりでも種って潜んでますから」
見ると、確かに赤ちゃんの隣にまんまるのスイカができている。まるで双子だ。
「先生、問題ないんですか?」
毎週ショートショートNOTE『顔自動販売機』
最近の自動販売機はすごい。
売れ残りのパン。
ラーメン。
餃子。
昆虫食を売ってる自動販売機も見たことあるが、これを見つけた時は流石に二度見した。
「か、顔自動販売機?」
ペットボトルの販売機の横に並んでいたそれはものすごく奇妙だった。ちょうどデスマスクのような顔が整然と並べられ、その顔の下には『あったか〜い』とか書いてあるのである。
ちなみに『あったか〜い』は見るからに優しそう。『つめた〜い』
ホラー日記『洗濯機』
娘がひどく怯えている。洗濯機が怖いらしい。
「バタバタ暴れてるの、怖いの」
洗濯機はドラム式のもので、乾燥時は中で洗濯物が回るから機体は激しく揺れる。それも中古ショップで買った古いものだから、動作音は確かにうるさいし蓋の締まりもなんだか悪い。でも、それだけだった。
「お願いだからお風呂の時に回さないで」
娘に懇願されたが、それでは洗濯が間に合わない。だから私は娘の入浴中だけそばにいると約束し
ホラー日記
日記というより、急にホラーを書きたくなったので書くという抱負!
短話連作『終末カフェ』7
「CLOSED SUN」
目覚ましが鳴った。タイマー通りに炊飯器が作動し、録画予約の始まる音がする。
朝の訪れを知らせる音だ。
それなのに外は暗かった。待てども待てども明るくならない。窓を開け放しても一寸先は何も見えず、家の中まで忍び込んでくるような濃密な闇である。光の届く範囲までは確認できても、その先は真っ黒に塗りたくられているようで何も見えなかった。
──この世界から、太陽が失われた。
短話連作『終末カフェ』6
「CLOSED SATURN」
惑星が次々に消えていくらしい。初めは月。それから火星。金星の消滅が確認されて、近所のスーパーは大騒ぎだった。
「まさか」
いまだに信じていない人もいた。その人たちにして見ればこれはただの悪い冗談で、マスメディアに対して大いに憤った。
「ありえない」
頭を抱える人達もいた。天体が前触れもなく消えるなんてありえない。それでも実際に星は観測できなくなっていた。得体の知れ