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大人の視点から振り返る、銀河漂流バイファム

1980年代前半はリアルロボットアニメの最盛期。それまで主流だった巨大合体ものが、ファーストガンダムをきっかけにマクロスやダグラム、ボトムズなどミリタリー色の強い作品が次々と台頭。再放送も含めれば毎日どこかで放送されていると思うくらい乱立していた。

そんなリアルロボットアニメ戦国時代で一番好きだったのが銀河漂流バイファム。当時小学生だった頃、下校時間から放送開始まで時間がなかったため放送日は時間とのたたかい。放送日にはダッシュで帰宅していたが、開始時間に間に合わず悔しい思いをしたこともあった。

本作品は異星人に囚われた両親を追って子供たち13人だけで宇宙を漂流する物語。一応主人公はラウンドバーニアン(RV)という機動兵器を操るロディ・シャッフルということになっているが、彼を含む個性豊かな13人の子供たちがまんべんなく描写されている。

個人的に好きだったのは大人たちがしばしば出てくる場面。ロボットアニメらしい地球軍対ククト軍の集団戦と、終盤で子供たちを助けにやってきた場面がやたらカッコよかったからだった。

子供たちが主役の物語だったバイファムだが、ここでは大人たちの視点から語っていきたいと思う。

序盤 犠牲になっていく大人たち

人類が開拓した移民星クレアドに、突如異星人ククトニアンが襲撃してきたところから物語の幕が上がる。

戦闘のさなか、両親と離ればなれになったロディをはじめとする子供たちはクレアド星を脱出。宇宙船ジェイナスに乗ってもうひとつの開拓星ベルウィックへ向かうも、ククト軍の激しい追撃を受けて大人たちが次々といなくなり、自分たちの身は自分たちで守らなければならない立場に追い込まれていく。

序盤の子供たちは、ただ守られている存在として描かれている。最初からラウンドバーニアンに乗って活躍するわけでも、宇宙船を操艦しているわけでもない。実際にロディが初めてラウンドバーニアンを操縦したのは5話で、主役機であるバイファムに搭乗したのは12話。時間をかけて子供たちが自らの身を守る術を学んでいく様を描写している。

やがてベルウィック星の地球軍も全滅。孤立無援となってしまった子供たちは、自分たちで宇宙船ジェイナスに乗り込み地球を目指して出発したが、両親がククトニアンに囚われたこと、仲間のひとりカチュアがククトニアンという事実を突きつけられることとなる。

そんななかで、大人で最後まで残っていたケイト・ハザウェイが戦闘中に行方不明となり、ジェイナスにはとうとう子供たちだけになってしまう。

中盤 あり得ない大人たち

囚われた両親を助けるため進路を変えた子供たちの乗るジェイナスに、中盤で地球の軍隊が2度接触している。

最初の接触では、子供たちだけでジェイナスを操艦していることがバレたら接収されて、両親を助けに行けなくなると考え一計を講じるもののあえなく失敗。案の定将官たちが乗り込んできて後方にさがらせようと説得するが、子供たちの懇願を受け入れて、見過ごすことを許してしまうというあり得ない展開になる。

子供たちだけで、救出するのは至難の業。もし犠牲でも出たら見逃した軍人たちの責任問題にもなるし、あまつさえ子供たちは銃を突きつけて訴えている。それを見逃したばかりか、新型RVをはじめとする補給も行っている。

敵の捕虜になってしまったロディを救うため、ジェイナスの要請に応じて人工衛星タウトへ救援に駆けつけたのが2度目の接触(実際は、ククトニアン反政府組織のメンバーによって地球軍の到着前に解放されている)。

ほらやっぱり子供たちだけでは無理だっただろ、とばかり再びジェイナスに後方へさがるよう命令するが、こちらの方が至極まっとうな措置だったと思う。

しかし子供たちは命令を無視して、地球軍とククト軍の戦闘のどさくさに紛れてタウト星を脱出し、両親が移送されたククト星へ向かう。地球軍はタウト星の爆発に巻き込まれて全滅し、子供たちは再び孤立無援の身となってしまう。

終盤 カッコイイ大人たち

ククト星にたどり着いた子供たちは、ククトニアン反政府組織の保護のもと、ついに両親の救出に成功する。あとを追ってククト星を離脱して地球軍との合流を目指すも、ククト軍の激しい追撃にあって絶体絶命の危機に陥る。

そこへ現れたのが地球軍。戦闘機の大部隊が次々とククト軍に襲いかかり、たまらず敵軍は後退していく。

最終話で、ククト星に残るために別れたカチュアとジミーをたくさんの紙飛行機を飛ばして見送るところがファンの間で名シーンと言われているが、個人的に感動したのは、子供たちを乗せた地球軍の軍艦で読み上げられる発進シークエンスだ。

実はこれ、12話でジェイナスを発進させるため子供たちが読み上げたのと全く同じ内容だった。この時は頼るべき大人たちが周囲にいない状況だった。

一方で最終話で読み上げているのは、もちろん地球軍の軍人たち。孤立無援の旅をしてきた子供たちが、本来の守られるべき存在に戻った象徴的な場面に見えて胸が熱くなってしまった。

「巡航目標 座標M7へ 地球へ!」
救援に駆けつけた場面、そして地球へ向けて発進シークエンスを読み上げる地球軍の大人たちがたまらなくカッコよく見えた。

おわりに 20年越しに夢を叶えた大人(自分)

最終話からしばらくの間「バイファムロス」に陥り、脱力感にさいなまれる時間が続いた。

少し時間が経ってからOVAが発売されたのだが、中学生の小遣い生活でおいそれと買えるものでもなく、ならばとレンタルビデオ屋を色々とまわったりもしたのだけれども、マイナーな作品だったこともあってか見つけることが出来ずじまい。いつの間にかバイファムの存在を忘れていた。

本編終了後から20年後の2005年、たまたまインターネットでバイファムのコンプリートBOXが発売されることを知った。しかも、見たかったOVAも入っているというではないか。

お値段は6万円。当時生活費以外のお金をパチスロと競馬につぎ込んでいたが、どんなに苦しくても購入にとっておいたお金は決して手をつけることはなかった。我ながら凄い執念だ。

無事購入して真っ先に見たのは、OVA「ケイトの記憶” 涙の奪回作戦」。戦闘中に行方不明となっていたケイトさんがククトニアンの捕虜になって記憶を失った状態で子供たちと再会するオリジナルストーリー。これがずっと見たかった。

ケイトさんが生きていた、ということで賛否両論だったエピソードだが、個人的には生きていてよかったと思っているクチ。一番見たかったものが長い時間を経て見られたのは感無量だった。

今年の10月で放送開始から40年の節目。プレミアムバンダイでプラモデルが販売されていたので記念に購入した。

バイファムのプラモデルを作るのも、ほぼ40年ぶり。子供の頃を思い出しながら、作っていこうと思っている。

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