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【エンタメサービスのUI/UX分析】 Netflix編

株式会社FuturizeでUIデザイナーをしている おだりおです。
社内のデザインチームで、「様々なエンタメサービスのUI/UX分析をする記事を書こう」プロジェクト第3弾の記事を私が担当します。よろしくお願いします🙌

はじめに

Netflixは、月額制のストリーミングサービスです。メンバーはインターネットに接続したデバイスを使ってドラマや映画を視聴できます。
2024年現在、Netflixは世界中で2億6000万人以上の有料会員を抱えており、他のストリーミングサービスと比較して最も高いシェア率を占めています。

Netflix

今回は世界で最も使われている動画配信サービスNetflixをUI/UXデザインの観点から分析し、何がNetflixの強みなのか、ユーザー体験を向上させているのかなどを考えてみようと思います。
ぜひご一読ください。

ここがすごい 〜UI編〜

1. 洗練されたホーム画面

他のストリーミングサービスと比較すると、Netflixだけ他サービスとテイストが異なり、とても洗練されている印象を受けます。

なぜそう見えるのかを考察する前に、まず【2022年】のNetflixのUIをご覧ください。

こうして並べてみると、2022年のNetflixは他サービスと同じようなデザインに見えませんか?

Netflixのホーム画面がアップデートされたのは2023年。具体的に何が変わったことで印象が変わったのか、他サービスとの差別化につながったのか、考察していこうと思います。

● ピックアップコンテンツの表示範囲の拡大
今までは作品画像の下の方が背景に同化していたため、視覚的にマイリストへの追加や再生ボタンはコンテンツの外に設置されているように見えており、コンテンツ範囲が狭い印象でした。

アップデート後は、アクションボタンもカードの中に収まるようなデザインに変わっており、コンテンツの範囲が拡大しました。これにより、視覚的に目立つけども威圧感のない、スッキリとした印象になりました。


● コンテンツによって変化する透明なデザインの採用
SpotifyのUI/UX分析記事の中でも触れましたが、近年アプリ自体の色を削ぎ落とすことでコンテンツを主体にするコンプレクション・リダクション(Complexion Reduction)というトレンドがあります。

Netflixもコンテンツに応じて周辺の色が変化するようなデザインが使われており、トップに表示されるおすすめ作品に合う色が画面全体に広がるデザインになっています。

これによって、アプリを開く度に変化するおすすめ作品を目立たせる効果があるものの、あまり威圧感はなく、他にお目当ての作品があればスルーしてスクロールできるくらいの、ほどよい主張をするのに役立っていると思います。

↓ もし背景が変化せず黒のままだった場合、こんな感じの見た目になるかなというイメージ画像を作ってみました。ちょっと違和感ありますよね…

また、Netflixではホーム画面上部にあるカテゴリを選択すると、全体のレイアウトはそのままに表示される作品が変わります。

類似サービスだとPrime Videoが似たような仕様になっているのですが、
Prime Videoでは背景色が変わらないため、カテゴリを変えてもあまりコンテンツが変わった印象はあまりありません。

違うコンテンツをおすすめしてくれているとユーザーが直感的に感じることができると、アプリ内を周遊していても飽きにくいし、知らない作品に対しても興味が湧きやすくなる効果があると思います。


● タップ領域の拡大
Beforeは作品詳細を見たい時、右下の小さな情報ボタンを押さないといけなかったのですが、
Afterではカードのような見た目になったので、画像のどこを押しても作品詳細に遷移できそうな印象があります。その証拠に、Afterでは作品詳細に遷移するためのボタンがなくなり、UIをよりシンプルにしながら操作性の向上にも繋がっていると思います。


2. 異なるデバイスでも統一されたデザインシステム

Netflixはスマホアプリ、タブレット、ブラウザ、テレビなど異なるデバイスで視聴できますが、デバイスサイズなどが変わっても同じデザインで統一されており、操作性も変わらないのでユーザーはストレスなくコンテンツに集中することができます。

Netflix

また他サービスと比較して気づいた点なのですが、Netflixの作品画像にそれぞれ
・スマホ・タブレットアプリ:縦長のもの
・PCブラウザ・テレビ:横長のもの

が採用されており、デバイスのサイズや向きに合わせて使い分けていることが分かりました。

例えばスマホで作品を見る時はスマホを横向きにすると思いますが、それ以外の時(作品を探す時など)はスマホを縦に持っていると思います。

横長のサムネイルが縦長のスクリーンに並んでいると、一度に表示できる作品数が減るため、カテゴリごとに横に作品を並べるようなUIには向いていません。

このように、特別意識しないと気づかないけれど、ユーザー体験を損なわないように各デバイスによってUIを最適化している点はよく考えられていると感じました。


3. 配信予定の作品リストが目立つところにある

Netflixのようなストリーミングサービスは、新しい作品を配信開始してから新着作品として目立つようにするのが一般的ですが、Netflixでは公開前の作品たちをいつ公開するかというリストが画面下部の3つしかないタブの中に入っており、かなり優先順位を高くしているのがわかります。

Netflixはオリジナル作品の制作にも注力しており、まだ世にでていない作品のPRの場としてもこのの画面は重要になっていると思います。

また、月額制のストリーミングサービスはずっと課金しているユーザーもいれば、観たい作品が配信されている時だけ一時的に課金するユーザーも一定数いるので、次は何の作品がいつ配信されるというリストがアクセスしやすいところに設置されていることで、休会ユーザーを減らすことにも役立っていると思います。


ここがすごい 〜UX編〜

1. 洗練された操作性の滑らかさ

Netflixは2023年にUIUXアップデートを行なっており、特に操作性がとても滑らかになりました。普段使っていても全然気づかない程度のミニマムアップデートですが、意識しないレベルで自然かつよりスムーズな体験を作り出していると思います。

新しくアプリを開発する際、なかなかここまで操作性にこだわることはスケジュールや工数的にも難しいのですが、後々のアップデートではNetflixのように細かい操作性もエンジニアと協力してこだわっていきたいですね。


2. 視聴履歴に基づく、パーソナライズされた作品のレコメンド

私が特にいいなと思ったのは、【「○○○」をご覧になったあなたへ】というレコメンドです。
観たい作品を探すアクションって結構重い(面倒)と思うんですけど、単に【あなたにおすすめ】のようにレコメンドされるよりも、「この作品を観たあなたならきっと好きですよ」とレコメンドされた方が、たとえ全く知らない作品でも興味を持ちやすく、新しい作品に出会って実際に視聴を始めるまでのハードルがとても低くなると思いました。


3. 直感的に作品を探せる工夫

● 自動再生されるプレビュー
Netflixでは、作品の画像に焦点を当てるとすぐに予告動画などが自動再生されますが、これは他のストリーミングサービスにはなく、Netflix特有の機能だと思います。

作品を観てみたいかどうか判断する際に、予告編を自ら再生する作業は結構手間なので、それを自動的に再生してくれると、ユーザーはとても少ない操作で直感的に作品を探すことができます。
自動再生のプレビューを見て気に入れば、そのまま本編を再生することも、お気に入りリストに登録することも容易に行うことができます。


●作品画像のローカライズで言語のハードルを低く
Netflixは、作品を多言語音声・字幕で視聴できる以外に、作品画像内のタイトルもアプリの設定言語に合わせて変化します。
そうすることで、例えば海外のあまり馴染みない作品にも瞬時に興味を持つことができ、国や言語でユーザーを限定することなく、より多くのユーザーにリーチすることが可能になります。

また、【自動再生されるプレビュー】で述べた通り、作品画像で少しでも興味をもってもらうことができれば、すぐにプレビューが自動再生されるため、新しいコンテンツに出会うまでの操作や決断の場面が少なく済み、非常に簡単でストレスレスです。


4. 異なるデバイス間で速やかなデータ共有

他のストリーミングサービスだと、たまに途中まで観ていたデータが引き継がれていなかったり、さっきどこまで観たかなと戸惑ってしまうこともあるのですが、Netflixは比較的瞬時にデータを引き継いでくれるので、デバイスを変えてもとてもスムーズでストレスのない体験ができます。

私もドラマ作品などを観る際はタブレットやスマホなど異なるデバイスで続きを観ることが多いので、とても助かっています。


5. 現在地によって異なる作品の配信

Netflixは国・地域によって配信されている作品が異なります。
例えば日本ではジブリ映画は配信されていないけれど、海外では配信されていたりします。

私は海外旅行によく行くんですが、作品のランキングなども日本ではなくてその国のものが表示されるので、どんな作品がこの国の人には人気なのかなどを知ることができて面白いです。

また、前述の通りジブリ映画は日本ではストリーミング配信されていないので、例えば映画のモデルになったとされる台湾の九份に行った際は、現地で「千と千尋の神隠し」をNetflixで観てテンションを上げたりもできます。これも、海外旅行で楽しみにしていることの一つです。


まとめ

動画ストリーミングサービスのアプリは比較的シンプルな機能・構造なので、どのアプリも似たようなUIになりがちなのですが、その中でもNetflixはUXの視点で使いやすさや操作性の心地良さを追求しており、見た目ではわからないような細かい部分にも拘ってアップデートをしているサービスであることが分かりました。

Netflixのオリジナル作品や配信している作品のコンテンツが素晴らしいのはもちろんですが、
知らない作品にも興味を持ってもらったり、新しい作品との出会いから、この作品を観ようとユーザーが意思決定をするまでの操作で無駄なものが極力省かれている点などが、他サービスとの差別化にも繋がっているのではないかと思います。

今後も繰り返しアップデートされていくと思いますが、現時点でもかなり使いやすいアプリに対して、運営がどのような点に課題を感じて解決していくのか気になるので、今後も注目しようと思います。

Futurizeについて

Futurizeは、エンタメ領域のプロダクト開発スタジオです。
これまでに多様なエンタメプロダクトを手掛けてきた経験を持ち、エンタメへの情熱を持つメンバーが揃っています。

特にデジタルネイティブ世代をターゲットにしたプロダクト開発を得意としており、
グループ会社である株式会社Mintoと連携して、プロダクト開発だけなく、コンテンツ制作から流通まで一貫してサポートが可能です。

エンタメプラットフォームの立ち上げや、次世代のエンタメプロダクトの開発をお考えの企業様はぜひご相談ください。


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