アイデアを紡ぐアイデア・プロセッシング:本の散策、本の探し方
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アイデア・プロセッシング:
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Step1: 課題抽出・課題設定
Step2: 情報散策
・情報散策
・本の散策
・本に意見を求める読書
Step3: グループ編集:情報の素材化、分類と階層化
Step4: シナリオ・物語編集
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未来を読み解くとき、異なる知識をベースにして「類推」と「連想」、「アブダクション(仮説推論)」により仮説を設定して読み解いていく。アスリートにおける基礎体力と同様に、「知識」・「暗黙知」の質と量をバランス良く鍛え続けることが必要となる。そのための手段が「書く言葉」である本との対話だ。
Step2: 情報散策
●本の散策
「本の散策」では、「著者の意図を理解し、知識を吸収する」のではなく、自身の問いと仮説をもって主体的に本に意見を求め、考えを掘り下げることを目的とする。本書では、複雑な世界に対応するヒトの能力を「ヒトエンジン」と呼び、ヒトエンジンを活用する方法の一つが「本の散策」だ。何かそこにヒントがあると直感した本を手にとり、「発見」のための触媒として本を利用し、積極的にヒトエンジンを活用する。
○「本」における「ヒトエンジン」の活用
個人で取得できる知識には限界がある、そうかといって自分だけの調査チームを編成することや、おかかえのシンクタンクを用意することは難しい。「本」には、筆写や編集チームがついやしたデータ収集、編集、構成の時間、ヒトエンジンのフィルタを通して体型づけられた情報がつめこまれている。自身の表現能力よりも、著者が悩んで選び出した言葉の方が適切で分かりやすい場合も多い。表現したいもの、実現したいものを見極め、それを具体化するためならば他人の力を積極的に利用する。それにより、限られた時間の中で自分の限界を大きく広げることが可能となる。
「本の散策」で得た知識や知恵や発想を「ノート」にスクラップすることにより、仮想的にヒトエンジン・チームを編成して、複数の視点で議論させたり意見を聞くことが可能となる。「本を散策」している時々の視点、立場を切り替えて、分身をつくり意見を交わす。
ヒトエンジンを活用する「本の散策」:
・著者の言葉や考え方を借りながら、自分の中にある問題意識を発見する
・著者の言葉や思考を「仮の器」として使わせてもらう
・自身の仮説に対する意見を求める
○本の探し方
過去から現在までの様々な分野の本に、広く編集的に意見を求める。個々の専門分野はもちろんだが物理や生命などの自然科学、社会・経済、未来予測や複雑系の捉え方(ときに哲学、宗教、芸術)などの幅広いジャンルに意見を求めるといい。
「何か気になる」、「好みだ」、「ピン!とくる」という直感をもとに、本を散策し選んでいく。
1)手にとって確認する
本を散策する際には、実際に手にとって確認できる図書館や書店を利用できるといい。図書館にない場合でも、大抵は市内・県内のネットワークから取り寄せてくれるので活用したい。
2)散策するための軸をたてる
積極的に自分で「本の散策」の「軸」をたてて、その周辺を探る
・「問い」を探る
教科書では、見逃しがちなテーマにあえて「なぜ」と問うてみる。
例えば:
- なぜ、共産主義よりも資本主義の方が経済的に優位にたてたのか
- なぜ、農業は1万年前というタイミングで始まったのか
- なぜ、産業革命は18世紀イギリスから発生したのか
・「ルーツ」を探る
何かをテーマとして定め、それが起きたもととなる歴史を探る。
例えば:
- 知的生産性のためのコンピュータのルーツ
- ヒトと道具・メディアとの関係のルーツ
・「仮説」を探る
自身で「仮説」をたて、それを補強し、解説し、反証して広げてくれる本を探る。
例えば:
- 産業革命の背景には、「大きな壁」、壁の内側で広がる「ネットワーク」、「急激な変化」と「突破口」となる要因があったのではないか。
3)キュレーターに聴く
本を探すときには、ヒトエンジンのフィルタをぜひ活用したい。
・気に入った本の参考書籍
・Webページ
- 松岡正剛の千夜千冊(https://1000ya.isis.ne.jp/top/)
- Wikipediaの参考文献
- 自分が良書であると思う本を紹介しているWebページ など
・amazonのお勧め、書評
- あなたへのおすすめタイトル、この商品に関連する商品
- amazonの書評内での別本の紹介
・推薦本
気に入った著者のお勧め本など、紹介者の概説などを参考に
- 池上彰, "世界を変えた10冊の本"
- 堀内勉, "読書大全" など
例えば:
- 本書の「お勧めの10冊」
- 池上彰の「世界を変えた10冊の本」
4)自身の直感に聞く
ある程度、本を読み込んでいくと、タイトル、概要や目次を見るだけで、自分が探している本かどうかということが直感で分かるようになってくる。そうなればしめたもので、自分の感性に従ってピン!とくるものを泳ぐように散策できる。
5)評価を参考にする
amazonの商品説明、書評を事前に確認しておくと参考になる。
・書評は★5つが必ずしもいいわけではないが3.5以下で良書に出会える確率は低い、また★3や★1~2の書評を参考になぜ低評価をするのかを確認する。
・可能ならば、学術的にどのような欠陥があるか、どのように期待外れだったか確認しておくといい。
角川ミュージアム 本棚劇場より
参考書籍:
[1] M.J.アドラー, C.V.ドーレン(1997), "本を読む本", 外山滋比古, 槇未知子訳, 講談社
[2] 編集工学研究(2020), "探究型読書", インプレス
[3] 松岡正剛(2001), "知の編集工学", 朝日文庫
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