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フューチャーリテラシー :「可能性の未来」を読み解くために

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本マガジンでは、2022/12/12に出版した、『フューチャーリテラシー Futures Literacy :過去から未来へ,「可能性の未来」を読み解くために』についての情報を掲…
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2021年8月の記事一覧

コミュニケーションするサルへの脳進化

 生命が誕生して以降、急激な環境変化によりほとんどの生命が絶滅する大量絶滅が5回発生した。大災害が急激な進化を促進し、環境に適応した生物種が勢力図を書き換ていく。 ●上陸にせまられる魚類 3億7000万年前の海洋生物の大量絶滅は海からの脱出=上陸を加速し、魚類から両生類への進化をうながす。使わなくなった浮き袋を肺に転用し、ヒレを手足に代える。  上陸して一気に広がる視界、匂い、音、そして地面の感触を活用したものが生き残る。陸環境に適応して、五感による空間情報形成と記憶・学

五感と脳の共進化

 6.3億年前に浅瀬の大陸棚が広がり大量の光と栄養塩と酸素が海中にあふれたとき、豊富な素材を活用して繁殖する生命たちの生存競争が新たなステージをむかえる。 ●神経組織の誕生 6.3億年前のエディアカラ紀の大陸棚で、急増した太陽光と栄養塩を背景に光合成を行う微生物(シアノバクテリアなど)が大量増殖し酸素を急増させる。  豊富な素材を活用する多細胞生物の最初の戦略は、捕食されない大きな身体を得ることだ。大型化のためには、それを維持するエネルギーが必要となる。「多細胞組織」を使

メッセージ物質の相互作用ネットワークがヒトの身体をつくる

 単細胞の微生物の化学物質によるコミュニケーション・ネットワークは、多細胞生物にも継承され、より複雑で自律分散で会話する細胞・臓器ネットワークとして進化した。 ●胎児をつくる細胞間の自律分散ネットワーク ヒトの身体は、たった一つの受精卵が細胞分裂することにより形成される。2個、4個、8個と細胞分裂して数が増えていくにつれて内側と外側の立体構造がつくられ、ついに最初の1つの分化が起こる。1つの細胞が他の未分化の細胞に向けて、違う細胞に分化するようメッセージ物質(化学物質)を送

経済危機に適応する資本主義社会

 アダム・スミスに始まった資本主義の時代を、大雑把に概観してみる。資本主義の歴史は、それをコントロールしようとする国の政策と、失敗、失敗に対する処方箋をつくることの繰り返しとして描かれる。 ●資本主義のベースをつくった  :アダム・スミス「富国論」 産業革命直後、重商主義の処方箋として「国を富ませる」仕組みを提案したのが、アダム・スミス「富国論(1776年)」だ。資本主義経済の出発点であり、以降の政策・思想のベースとなる。 「富国論」の与えた影響: ・自由競争による資源の