和歌山実習レポート!-南紀熊野ジオパーク巡検と文化体験-
これは、和歌山の海岸が教えてくれた、壮大な地球の物語。
みなさんこんにちは。理科教師になる人です!
大学のゼミ科目である「理科実験実習法Ⅱ」という科目があり、3泊4日で和歌山に行ってきました!
和歌山にはジオパークと呼ばれる、その地域の大地と人の関わりを実感して楽しむ場所があります!
今回は南紀熊野ジオパークを巡検しつつ、文化に触れたり観光スポットを訪れてきました!
この記事では、訪れたスポットの中からぜひ一度足を運んで欲しい場所を抜粋して、教育的価値や魅力を交えてお送りしたいと思います!
あなたも、地球の壮大さと人々の歴史の世界を旅してみませんか?
フェニックス褶曲
褶曲(しゅうきょく)とは、比較的柔らかい段階の地層に力が加わって、地層が曲がってしまった状態のことです。
冒頭の写真の左側に、見事に曲がった地層があります。この褶曲は世界的にも有名で、教科書の写真にも採用されている「フェニックス褶曲」という場所です。
触ってみれば分かるのですが、とても硬い岩石です。こんなに硬いのに、複雑に曲がっているのが不思議ですね。
とにかく規模が大きすぎて、写真では伝わりきらないのが悔しい!全スポットの中で、フェニックス褶曲だけは強くオススメしたい場所です!
地球の壮大さを実感するには十分すぎる場所でした。学校でただ「しゅう曲」という言葉だけが一人歩きしていますが、実際に目で見て体験することがどれだけ大事か。見てみなきゃ分からない感覚がそこにあります。
なお、フェニックス褶曲は、現地のガイドさん(要事前予約)が居なければ立ち入ることができません。また、海岸線にあるので潮が引いた時しか訪れることができません。詳しくは以下のホームページをご覧ください。
江田海岸/和深海岸
さて、和歌山には魅力的な海岸がいくつかあります。その中で訪れた2つの海岸を紹介します。
せっかく褶曲を勉強したので、まずは褶曲が見られる海岸、「江田海岸」を紹介します。
江田海岸ではこのように、褶曲を足元で見ることができます。
地層や褶曲は壁のような場所に見えるイメージがあるかもしれませんが、地層全体が傾いて地面に寝そべることもあります。
歩いてみて分かりますが、やっぱり硬いです。本当に地層が曲がるなんてあり得るの?と感じてしまいますね。目の前にあるのに。
ちなみに硬くなった地層に力が加わると、断層になります。褶曲と断層は原理的には同じなんです。
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では次に、ザ・地層!って感じの大きな地層が見られる、「和深海岸」を紹介します。
まさに地層!って感じ、しませんか?こんなにはっきりと層理(層と層の境目)が見られるのは和深海岸の魅力ですね。
全体で見れば綺麗な縞模様なのですが、近くで見るとどうなっているかよく分かります。
2つの異なる性質の層が重なっていますね。
この1つ1つの層は、長い年月をかけて積もり、層を成し、水の中から出てきました。長い年月と言っても、数千万年とかそんな規模です。
ちなみに海岸は夕方に行くとこんな絶景が見られます。
橋杭岩
海面に突き出す、大きな岩。
堆積岩(砂や泥が堆積した層)の中にマグマが入り込み、火成岩(マグマが固まったもの)が生成。その後、堆積岩だけが削れて地上に出てきたのがこの橋杭岩です。
ここだけしか見られない異様な岩の景色は、町の観光名所の1つとなっています。
訪れる際は、道の駅に立ち寄ってみてください。ソフトクリームとても美味しかったです。
手前に転がっている津波石は、名前の通り津波で流されてきた岩です。和歌山県の沖には南海トラフが走っており、過去に何度も地震と津波が押し寄せました。
この大きさの岩が流されてしまう津波。映像だけでは分からない、津波の怖さを体感しました。
津波はただの波じゃない。1つの岩が私たちに教えてくれました。
千畳敷/三段壁
観光名所、白浜町。海水浴でたくさんの観光客がいますが、その近くに2ヶ所のジオスポットがあるんです。
遠くの地平線を見晴らして、風を感じたいあなたには千畳敷がオススメ!
千畳敷はただ綺麗なだけでなく、地学で重要となる見所が多くあるんです!探してみてくださいね!
海で泳いだことのある方は、海底が波線状(〜〜)になっているのを見たことがありますか?
リップルマークは、その波線が残ったものです。つまり、リップルマークを見つけると昔そこに波があったことが推測されるのです。
千畳敷では様々な所でリップルマークが見られます。
2枚目は、リップルマークが地層の中にあります。何が起きているかというと、泥が積もる→波打つ→リップルマークができる→再び泥が積もる→波打つ→・・・の繰り返しが起きています。
地層を見るだけで、昔この地で何が起きていたのか推測できる。地球からのメッセージなのです。
斜交層理も、波があったことを示す地形の1つです。
斜交層理は、砂泥が積もる最中に波があったことを示しています。静かな海であれば平らに積もりますが、波があることで斜線のように砂泥が積もります。それが残ったのが、斜交層理です。
他にも、実は身近に化石を見ることができるんです!
アンモナイトや恐竜のような、骨が残ったものが化石として有名ですが、生き物が棲んでいた跡も化石になります。恐竜の足跡などが有名ですね。
海岸の地形には、ウニやエビなど、「泥の中に生息する生き物が這った跡」が生痕化石として見つかります。そこら中にあるので探してみてくださいね。
こんなふうに、千畳敷は見どころがたくさん!
ぜひ探しつつ、綺麗な絶景を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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洞窟探検をしたいあなたには、三段壁がオススメ!
先ほどの地形が波の力で削られた時、海食洞が生成されます。この三段壁洞窟はその中でも有名な場所で、源平合戦の熊野水軍が基地にしていたとかいないとか。
中には熊野水軍にちなんだ展示があるので、ぜひ足を運んでみてください。
この洞窟の上には、三段壁の名前でもある大きな崖があります。
崖の上に、大きな岩があるのが分かりますか?
この岩は「サドンロック」と呼ばれている謎の岩です。ある日突然、急に姿を現したらしい…。
下の海岸から打ち上げられた説や、台風で飛ばされてきた説があるようです。もし台風の影響なら、津波石のように自然災害の恐ろしさを実感することができるスポットですね。
白浜を観光する際は、千畳敷と三段壁も訪れてみてくださいね!!
古座川の一枚岩
マグマが作る火成岩。大きな地形を創り出すこともあります。
古座川に聳え立つ壁。1枚の岩でできています。
写真で見る以上に大きく見えます。道の駅があるので気軽に立ち寄ることができます。
この岩も橋杭岩と同じ火成岩です。大きなマグマ溜まりが固まることで、1枚の岩壁になりました。
下の河原で水切り…の前に、石を拾ってみてください。色んな模様や形の石があって面白いですよ。
ゴトビキ岩
火成岩繋がりでもう1ヶ所。神倉山にあるゴトビキ岩です。538段を登った先、見えるのは巨大な岩と絶景。一見の価値、あり。
火成岩が風化して、丸い岩になった姿です。
ゴトビキは地元の言葉で「ヒキガエル」を意味しており、岩をある角度から見るとカエルに見えます。
538段もある階段は、古くからあるお祭りで一気に下るそうです。その斜面は急すぎて体力が…笑
地元の方が一緒に登りながら色々と教えてくれました。いくつか紹介します。
「神様が通る時、側にある木は捻れてしまう」
写真を見ると木が不思議な捻れ方をしていますね。地元の人によると、神様が通った跡のようです。階段の途中にあるので、立ち寄って木に触れてみてください。
「538段の中にたった1つ、刻まれた模様」
ゴトビキ岩までの石段は、人の手によって造られたもの。その中にたった1つ、施工者がつけた模様があります。家紋のような感じで、誰が作ったのか分かるように模様をつけるそうです。たった1つ、探してみてくださいね。
那智の滝
高さ133m、落ちる水は世界遺産。
観光スポットとしても有名な那智の滝。
この日は前日に雨が降った影響で、水量がいつもの5倍。水しぶきを感じながら見上げる滝は絶景です。
那智の滝の岩肌も火成岩です。昔は堆積岩で覆われていたものが削られ、火成岩の岩肌だけが残りました。残った岩壁の高さ133m、流れる水が那智の滝になっているのです。
高池の虫喰岩(※集合体注意)
岩肌が窪んでいます。葉っぱが虫に食べられた跡のような…。
この窪みは風化によって起きたもの。塩分を含んだ水分が入り込む→水分が蒸発→塩の結晶ができる→岩石が破壊されて窪みができる・・・という説があるそうです。
風化と一言で言っても、どんな風に岩石が破壊されるのか、そのプロセスは様々。
目の前にあるから現実ということは分かる。分かるけども、本当に自然とこんなことが起きるの?人工じゃないの?と信じきれない不思議さがあります。
道の駅すぐ、近くで窪みを見てみてください。
谷口の石炭層
地層の中に、特別な層がある。中学理科の問題によく出てくる「鍵層」のスポットです。
写真の中央に、黒っぽい層があるのが分かりますか?これが石炭層です。
石炭はかつて植物だったもの。堆積し、地層の中で圧力を受けたりマグマの熱を受けたりして固まったものです。
露頭の下には黒くて光沢のある石炭が落ちています。落石に注意しながら探してみてください。
鍵層は、似たような地層の中で、どこが同じ層なのか知る手掛かりとなる層です。火山灰層などが有名ですね。
今回の場合、石炭層の位置を比べることで、地層の高さが変わってもどこが同じ層なのか知る手掛かりとなります。
実際に見てみれば分かりますが、1つだけ異質な層があればすぐに見つけられます。石炭層も見応えあるので是非行ってみてください。
南紀熊野ジオパークセンター
ジオパークの見どころが分からない…
褶曲とか専門用語もよく分からない…
そんな時は、ジオパークセンターに行きましょう!
専任の学芸員さんが丁寧に解説してくれます。まずはジオパークセンターに行って、見てみたいスポットを見つけるのもありかもしれないですね!
実演で実験もしてもらいました✨
水の流れと大雨時に起きることを実演してもらいました。地形のでき方が学べます。
左に流紋岩、右に花崗岩。拡大鏡があったので比べてみました。組織の違いが1つの画面で見比べられる写真が撮れました。
白崎海洋公園
日本のエーゲ海とも呼ばれる、白崎海洋公園。ジオパークの外にはあるものの、地学的に重要なスポットなので行ってきました!
白崎海洋公園は、辺り一面が石灰岩で覆われた真っ白の地形です。
はるか昔、サンゴや貝殻などが堆積し、岩となったものが石灰岩です。セメントの原料になります。
写真には尖った地形がありますが、石灰岩は雨で風化しやすく、カルスト地形と呼ばれます。雨に含まれる二酸化炭素などの酸性成分が石灰岩を溶かすのです。
また、石灰岩を成すフズリナという貝の仲間の化石も見ることができます。
少し小さいですが、岩をよく見てみるとたくさん見つかります。是非探してみてください。
すさみ町立エビとカニの水族館
すさみ町に、甲殻類専門の水族館があります。
廃校をリメイクした、小さな水族館です。中には様々な甲殻類たちがお出迎えしてくれます。
各水槽にはクラウドファンディング者が記載されており、町の水族館が経営方法を模索している様子が伝わってきました。
色んな生き物がいましたが、中でも紹介したいのがカブトガニです。
カブトガニは、生きた化石とも呼ばれ、鋏角類のなかま。カニと言いつつ、実は甲殻類ではないのです。
どちらかというとサソリやクモに近い種で、体節が2つに分かれていることが特徴。
確かにエビやカニとちょっと違う!2つに分かれているのがよく分かる展示方法でした。
他にも、ペンギンやウミガメにも出会うことができます。タッチングプールもあり、珍しい生き物にも触れ合うことができます!
見応えたっぷりのエビとカニの水族館、ぜひ見てみてはいかがでしょうか?
太地町立くじらの博物館
太地町は捕鯨文化のある町。この町にはクジラの魅力をぎゅっと詰め込んだ、くじらの博物館があります。
クジラの博物館は、クジラに関する展示館と、海の中でクジラやイルカを飼育しているブース、そしてアクアリウム館があります。
クジラ類を飼育しており、世界にも珍しいクジラショーが開催されています!
クジラの迫力大ジャンプ!!
大きな体で、豪快な動きを見せてくれました!
クジラって意外と、可愛い?
展示では、クジラの生態や歴史が詳しく展示されています。批判もある捕鯨ですが、日本ではクジラの全てを無駄にすることなく頂いています。食べない部分も物にして使うなど、大切に扱ってきたことが分かります。
近隣の小中学校とも連携し、くじらを軸とした総合的な学習の時間の展開例も展示していました。博学連携の難しさや面白さについて学ぶことができます。
クジラの魅力を詰め込んだクジラの水族館、ぜひ足を運んでみてください!
勝浦のマグロ漁港
最後に紹介するのは、勝浦にある漁港です。ここでは、朝7:00からマグロの競りを見学できます!
謎の数字が飛び交う朝の漁港。目を光らせる競り人はかっこいい。競り見学の後は、すぐ近くのにぎわい市場で新鮮なマグロを食べることができます!!
漁港の朝はとても気持ちがいいので、散歩してみてください!
海鮮の美味しいお店や、お土産を扱ったお店も多くあるので、観光にオススメです!
まとめ
和歌山ジオパークの魅力、伝わりましたでしょうか?
地学が幻の教科となりつつある今、改めて地学の面白さを実感できたことはとても貴重な体験でした。
中学校理科では地学分野がかろうじて健在しています。その中で、地学の面白さや教育的価値を伝えていきたいと思っています。
また、スポットだけでなく、色んな人との出会いも自分を変えてくれたような気がします。ガイドさんや店の方、地元の方々。色んなことを教わり、一回りも二回りも成長したように感じます。
南紀熊野ジオパーク、並びに和歌山の観光名所。
ぜひ訪れて、大自然を感じてみてください!!