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最終提案ではなく、議論を呼ぶアート作品をつくるというデザイン力|吉泉 聡さん

9月4日、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第9回の授業内にて、Takt Projectの吉泉聡さんのお話を聴講しました。

価値には2つあり、確かな正解である既存の価値を強い価値と表現し、もう一方の正解かどうかわからない新しい価値を弱い価値と表現し、弱い価値にアドレスしてあらゆるアートプロジェクトを展開されている。弱い価値にアドレスし新たなものをデザインすることを耕す= to Cultivateとも捉えており、そのような弱い価値をドライブするものとしてのデザインを大切にしたいとおっしゃっておられた。

新しい価値をデザインする、という言葉だけでは、世の中で注目を浴びているビジョンデザインなどにも近しいように感じて話を伺っていたが、吉泉さんの目的感は、社会やユーザに何かの価値を届けたくて製品やアート・作品を作っているのではないという点が驚きであった。私が一番関心を強く抱い点でもあり、ある価値を届けることが主目的ではなく、あり方をデザインすることで、そのあり方を見たユーザやステークホルダーが議論ができるような場を提案したいということを主目的にデザインしているとお話しされていた。

素材そのものに立ち返り、このような状態の製品・アート作品を作ったら何か議論が起こるのではないかと考えて、デザインするとのこと。具体的には大量生産されている家電製品はたくさんの部品から組み上げられて作られている一方で、美しいインテリア作品などはシンプルな素材で単純だけれどたくさんの人の興味を引くような結果になっている。その間を取ってマテリアルにも見えるけれど電化製品として成立する作品を作ったということだ。

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議論を呼ぶような作品を提案するということが、社会的意義が非常に大きいことを考えると、最終製品を作って価値を届けるのではなく、これが議論を呼ぶような面白いものという状態でストップする、これでできた、とゴールを設定するのが難しいのではないか、と考える。その思考と意思決定の強さやセンスというものが一番惹かれて、大変興味深かった。

いざ自分がやろうと思っても真似ができないが、価値を届けるということだけでなく、議論を呼ぶようなアート作品で場をつくるデザイナーというあり方が存在することが知れたことが非常に大きい体験だった。

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