私の頭の中の国語辞典

言葉を学ぶことが好きだ。
わからない単語があれば、辞書や学校から学び、1つ賢くなり、それを発する。
それで同じく1つ賢くなるか、何この人とドン引きされるか、それは受け手によりけりだが、少なくとも私は面白いと感じる。

略語1つとってもそうだ。
中学時代のある日、それなり仲の良かった男子と話していたところを、普段話さない女子が見て話しかけてきた。

「おなしょう?」

え?

「…おなしょう?」

は?

聞こえていないわけじゃない。
「おなしょう」とは?
小学校どこ?的な話だろうけど、そんな名前あったかしら?
男子側も意味がわからないようで、2人して困った顔同士鏡合わせになっていた。
あ、意味伝わってないじゃん!ってのがそんな2人を通じて彼女に伝わったようで、質問の仕方を改めてくれた。

「同じ小学校?」

確かに彼とはお互いに同じ小学校から進学した唯一の存在だ。
ゆえにその当時の唯一の話し相手同士である。

ん?

おや?
待てよ?

「おなしょう」って「同じ小学校かどうか」ってこと?
なんだそういうことか。

って!ただの略語かーい!!
深く考え込もうなんてしちゃってバカみたい。
だけど「同じ」と「小学校」の組み合わせで「おなしょう」というように、単語の頭だけを抽出し、以下省略。実は仕組みが単純明快なので、意味がわかるとスッキリする。実に潔し。

そんな私でも理解に苦しむものがある。

ビジネス用語である。

昭和、平成、令和、と時代が移り変わるにつれて流行りも変わってくる。ビジネス用語もまた然り。
そもそも私は平成生まれの人間だ。昭和のビジネス用語をなんで知ってるのか。とある平日の昼休みにたまたま見つけたのがきっかけだ。
だがしかしだ。息をするようにワッと畳みかけられるとたまったもんじゃない。

「うちのベネフィットがどうすればバズるかクライアントからフィードバックもらってきて。マストでな」

え!?
いや、ちょっとちょっとちょっと!やめて!!
そんなところで10連決めようとしないで!!ついて行けませんから!!!

「一丁目一番地でな!」

K.O.

終わった……。
完璧に頭が真っ白だ…。一体何が何だって?
私の経験上ここまで極端な人に会っていないのであくまでフィクションに過ぎないが、想像しただけでも身の毛がよだつ。

調べると

  • ベネフィット:商品やサービスの特徴

  • バズる:話題になる

  • クライアント:依頼主

  • フィードバック:軌道修正を促すこと

  • マスト、一丁目一番地:最優先事項

要は「うちの商品がどうすれば流行るか、依頼主からすぐに修正案もらってきて」と言いたいのだろう。

ああそうか。1つ学んで、理解して、納得する。きっと私はそれが快感なのだ。だから学ぶことが好きだ。
なんとなしにしか考えてこなかったものも、こうして文字に起こすと、ごちゃっとした頭がキレイに整頓された気がして実に面白い。

だからといっていきなり「おなしょう?」と聞いてみてもポカンとさせるだけだろうという頭でいるので使う気はないが。