事業・組織成長のためのデザイン実践〜チームが正しくデザインに向き合える土壌づくり
この記事は、root Design Advent Calendar 2023 の12月6日分の記事です。
こんにちは。村越と申します。
僕は、本業は Ubieというヘルステックスタートアップでプロダクトデザインをやっているのですが、かたわらでrootにパートナーとしてデザインプログラムマネージャーをやっています。
ルートにパートナーとしてジョインしてから、約1年くらいが経ちました。代表の西村さんと話した時に「事業成長と連動した組織としてのデザイン投資を増やしていく」というルートが目指している部分に個人的な興味があったというのと、僕自身が経験してきたことを全て反映してルートやルートが支援する支援先に貢献できるのではないかな、と思ったのがきっかけです。
僕のキャリアは、ウェブディレクターとしてクライアントワークを経験し、事業会社ではデザインチームの立ち上げ、スタートアップの経営、コンサルティングファームで支援先の全社変革を支援、そして今は再び本業ではインハウスのプロダクトデザイナーとして活動しています。
支援する側もされる側も、プレイヤーもマネージャーも、現場も経営も経験しており、仕事として関わった産業も官公庁、金融機関、メーカー、エンタメまで多岐に渡ります。本業ではどちらかというと、広がり過ぎてしまったキャリアをプロダクトデザイン、デザインリサーチにフォーカスしてシャープに深めていく方向で活動していますが、ルートでは自分のキャリアで培ってきた「広さ」を軸にして、ルートとその支援先に僕の経験や知見をもって貢献しながら、双方の成長に寄与できるのではないかと考えたのがジョインを決めた背景になります。
この記事では、僕が考える「伴走型のデザイン」を行う上で僕自身が実践しているマインドセットについて書いてみようと思います。
組織が成長するメカニズムの予測可能性を理解して、デザインするための土台を整える
組織の成長には予測可能なメカニズムがある
組織成長の段階は、「事業規模」「人数規模」「資金規模」が時系列で拡大、成長していく形で図式化できます。例えば、スタートアップであれば創業期や最初の資金調達までのシードステージから、資金調達ラウンドがシリーズA・B・C等と進んで最終的にはIPOを迎えるなど、いくつかのチェックポイントが存在します。
これらのラウンドでのある程度のプロダクトの状態や組織の状態は、図式化できるということは「あらかじめ予測可能である」ことを意味します。
予測可能であるということは、課題に対してある程度先回りした手当も可能になるということです。よく、組織が成長する過程で「30人の壁」「50人の壁」という組織成長を阻む壁だったり、大企業であれば「部門間のサイロ化」のような組織血流の促進を阻む壁のようなものは大体、組織や事業の成長曲線からパターン化して予測することができ、課題に対する手当もあらかじめ予測がつくことを意味しています。
デザインプログラムマネージャーはデザインする環境を整える人
僕はルートでは普段デザインプログラムマネージャーとして動いていますが、デザインプログラムマネージャーが求められる動き方というのは、組織の中で起こり得るデザイン以外の課題を「いい感じ」に解決して、みんながプロダクト開発・プロダクトデザインに集中できる環境を作ることだと思っています。
そのため、組織の課題は起こってから対症的に対応するのではなく、あらかじめ予測可能な課題に対しては先々を見越して事前に手を入れておけることで、プロダクト開発環境をいい感じに保つ、ということができるのではないかと思っています。
組織の課題はほぼ全て「コミュニケーション」の課題に収斂する
ここでいう、組織の成長段階で壁として起こることの背景にある課題は、規模や状況が違えどほぼ全ては「コミュニケーション」の課題に収斂すると思っています。
情報の透明性が低い、開発チーム内のコミュニケーション頻度やスピードが低い、コミュニケーションを円滑に行う仕組みやプロセスが整備されていない、など情報の環流が人が増えたり、組織内の情報が増えて複雑化することで血の巡りが悪くなっている状態だと言えます。
なので、個人的に常に意識を払っているのは
組織のステージに応じたコミュニケーション課題の兆候を察知すること、組織のステージに合わせた課題解決を行うことで組織の生産性を最大化すること
という部分です。
具体的には、表面的には以下のような事象と対策を行ったりしてしています。
情報の透明性の課題:設計された開発プロセスは存在するが、PO、デザイナー、エンジニア間で日々のコミュニケーションや意思疎通がうまく図れていない
→ シンプルに気になりが発生した都度、5 - 10minでもクイックな同期チャットを促す、Slackのコミュニケーション流量を増やす、ふりかえりの機会を作る、など情報共有コストの課題:人が増えたり、プロダクトや事業規模が拡大すると、それだけ組織内の情報が複雑化する。背景やコンテキストの共有にもコストがかかり、本質的な議論が滞るようになる。
→会議アジェンダや課題提起の共有の仕方を型化して、背景情報をスムーズにメンバーに共有できるようにし、論点にフォーカスした議論をできるようにする、など
予測可能な部分をあらかじめ手当てして、組織が真に向き合うべきことにフォーカスできる状態を作る
組織に起こる課題は大体がコミュニケーションに収斂し、それは組織ステージごとにある程度予測可能であることは前述の通りです。逆に予測が難しい、不確実性が高い領域が「プロダクトの成長のための仮説検証」「事業の成長のための仮説検証」などの、「成長の糸口、勝ち筋を探る活動」です。
組織が成長の壁に阻まれて、効率性や生産性が阻害された場合、大きな影響を受けるのがこうした不確実性を探索、探究する活動へのリソースだと思っています。問題の対処にリソースを割かれたり、組織崩壊等により離職が増える、などのケースでリソースの適切な配分ができなくなる状態は、組織の成長に最も大きな影響を及ぼします。
そうした状況を極力排除し、組織的なコミュニケーション課題ではなく、プロダクト開発チームがプロダクトを成長させること、ビジョン・ミッションを成し遂げることに全てのマインドセットを割ける状態を作ること。
デザインプログラムマネージャーとしては、組織が「健全に事業成長という不確実な難題に取り組める状況を常に整えることでデザインを正しく行える土台を作る」ことが価値だと考えています。
ルートは組織成長のケーススタディがたまるナレッジベース
前述したような伴走型のデザインは、ルートのようなデザインファームだからこそ、価値を最大化できるのではないかと思っています。
これまでもルートはスタートアップから大企業まで様々な規模、フェーズにある企業の支援を行ってきました。これからも、それは変わらず多様な形態の企業の支援を長期にわたって支援していくスタイルを撮り続けます。
これは、「ルートに組織成長におけるナレッジが溜まり続けること」を意味します。組織成長のためのナレッジが溜まり、デザイン投資のための勘所を組織に対して高い品質で支援できるようになることはクライアントとして関わる支援先にとっては大きな価値になりますし、所属するルートのメンバーにとっても「広い業界、多様な形態の組織の成長と拡大、デザイン投資の変遷」についてのナレッジを得ることになり、スキルやマインドの面で幅広く、深い自己成長の可能性を探れるということでもあります。
ルートのように、単にアプリやサービスの開発・制作を支援するのではなく「事業成長と連動した組織としてのデザイン投資を増やしていく」という組織成長から適正なデザイン投資を促すというスタンスで支援をしているデザインファームは日本ではほとんどなく、世界で見ても独特なポジションにあると思います。
ビジネスとしては、高いハードル、かつ難しいチャレンジではあると理解していますがこれを達成することによるデザイン産業への貢献や、日本企業に対するデザインへの適正投資という観点での社会貢献価値は大きなものがあると考えています。
自分がこれまで培ってきたものも生かしながら、そんな形で日本のデザイン産業に少しでも貢献できれば良いな〜と思って日々活動をしています。
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私たちは、「Design Doing for More〜デザインの実践を個から組織・事業へ〜」をVisionに、事業の成長によりそい、デザインを実践しようとする人々を支え、世界をより良く前進させていくことを目指しています。
共に、クライアントと事業の本質(芯)を見いだしながら、事業本来の価値をユーザーに届け、デザインの根源的な力を個から組織・事業へと広げることで、世界をより良く前進させていきたいという方!
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