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入学式と失敗と。
昔から緊迫した場面で笑いを堪えるのが苦手だ。
笑ってはいけないと思えば思うほど、私の笑いの琴線に触れたフレーズが頭の中でリピートされ吹き出してしまう。
高校時代、野球の練習よりも最後のミーティングで仲間が仕掛けてくるいたずらやオナラ、ツッコミに対して笑いを堪えるほうがよほどつらかった。
負け試合の後のミーティングで監督が激怒している後ろで、部長が立ち上がってベンチの屋根に頭をぶつけ「アイター」って叫んだときは、死ぬかと思ったといううか死んだ。
真っ先に吹き出し、肩の震えを止めるのに腹筋がつった。
そんな私も大人になり、さすがにフォーマル場でそのような失態をおかすことない。
仕掛けてくる仲間もいない。
完全に「ゲラ」な私は油断しきっていた。
今日は娘の中学の入学式であった。
布石はあった。
席についたところで、在校生が前に座っていた。
中学の野球チームのトレーナーをしている私は娘が行く中学にも何人かチームの子が所属しているのを知っており、ふと斜め前を見ると知った顔があった(と思ってた)
なんとなくスルーするのもどうかと思い、ちょっと肩を叩いて「よっ」と手をあげた、するとその子は不思議そうな顔で「え?俺・・・どっかで会いましたっけ?」って顔で私を見ていた。
私は彼が私を忘れてしまったかのような顔をして席に戻ったが、完全によく似た他人だった。
マスク恐るべし。
顔から火が吹き出そうなぐらい恥ずかしくて、変な汗をかいていたが、顔は冷静を装っていた。
隣の妻にもバレないようにしていた。
彼は隣の女の子に話しかけれらている。
「知り合いなの?」
「いや〜知らないと思うけど・・昔会ったことあったのかな?」
なんて会話しているのだろう。
あ〜席移りたい。移りたい。
そんな思いをよそに式ははじまった。
真新しい制服に袖を通した1年生が入場してくる。
ついこないだまで小学生。
昨日まで娘と一緒に遊んでいた仲間達も制服でみると、大人びてみえるから不思議だ。
そして、そのときはやってきた。
PTA会長さんのお話の冒頭。
「しゅ しゅん入生のみ、皆さん、入学おめでとうございます。」
おいおいめちゃくちゃ緊張してるんじゃんかよ。
その後に続く話も良い話をしているんだけど、大事な場面で咬むから全然話が入ってこない。
てっいうか、頭のなかで「しゅんにゅうせい」がリピートしてくる。
そして、見知らぬ中学生に「よっ」って声かけた自分。
だめだ、笑っちゃだめだ、だめだ、だめだ、だめだ・・・
下を向き、肩の震えを必死でとめ、なんとかこの状況の乗り越えた。
耐えた。
ありがとう高校の仲間達。
君たちの試練があったからこそ、私は耐えることができたよ。
ありがとう。
無事に入学式を終えた。
その後、父母は残り、このままPTA総会を行うとのこと。
あらためてPTA会長の挨拶。
再び噛みまくり。
「ぶぼぉっ」
鼻から変な音が飛び出した。
妻の冷たい視線が痛い。
後で聞いたら、娘もPTAの会長の話で顔はニヤけて、頬は震えてたらしい。
どんな遺伝子だよ。
娘よ、中学入学おめでとう。
君は忍耐強くなれよ。
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