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【海外】AFC U-20フットサル選手権、決勝で日本と戦ったアフガニスタンを襲った悲劇

 6月14日から22日にかけて開催されたAFC U-20フットサル選手権イラン2019で、U-20アフガニスタン代表は準優勝という結果を残した。アフガニスタンがAFC主催の大会で決勝に進出したのは初めてのことであり、決勝のU-20フットサル日本代表戦には、多くのアフガニスタン人が会場に集まり、母国の代表に大きな声援を送った。

 彼らの代表が決勝で日本に敗れても、ほとんどのアフガニスタンのファン・サポーターはアリーナを離れず、表彰式の最後まで見守った。アフガニスタンの選手たちはもちろん、日本の選手たちにも、声援や拍手を送っていた。

 それから2週間も経たないうちに悲劇が起こった。場所はアフガニスタンの首都カブール。反政府勢力のタリバーンが国防省の関連施設を襲撃した。内務省は、自動車爆弾が爆発した後に襲撃が行われ、少なくとも6人が死亡し、116人が負傷(うち51人が子供)したと発表をしている。

 AFC U-20フットサル選手権イラン2019を取材していた時、僕はアフガニスタンのサッカー協会関係者であるサイード・サダットと親しくなった。最初に話をしたのは、決勝トーナメントに向けた記者会見が行われた時だ。僕が日本から来ていると知った彼は声をかけてきて、「今後、アフガニスタンのフットサルを強化するために、日本の大学で勉強をしたい。どこか紹介してほしい」という話をされた。その時に名刺を渡し、その後は試合後の記者会見などで顔を合わせるたびに話をした。

 日本に帰国してから「みんサル」でU-20アフガニスタン代表の記事を書こうとした時、追加取材で確認したいことがあり、彼の連絡先を聞いていないことに気づいた。そこで、タブリーズで知り合ったイラン人記者に連絡を取り、アフガニスタンの関係者の連絡先を聞き、あらためてコンタクトを取った。最初は別の人につながったが、「英語が話せる人の連絡先を伝える」と教えられたのが、サイードの連絡先だった。サイードも日本からタブリーズに来ていた唯一の奇特な日本人記者のことを覚えていてくれたため、非常にスムーズに話ができた。

 そこから1週間のうちに何度か彼とやり取りをし、情報交換をしていた。7月3日の早朝に届いていた連絡も、そうした何気ない会話だろうと思っていたが、添付されていた動画と画像ファイルを見て驚いた。映っていたのは、何かが爆発し、煙が巻き上がっている以下の写真とボロボロになったフットサル施設だったからだ。

 一体、何があったのか。これは何なのか。

 そこには以下のメッセージも付け加えられていた。

「自動車爆弾がアフガニスタンのサッカー協会の目の前で爆発した。そして、すべてを破壊した」

 現地では深夜だが、彼がオンラインになっていたため、すぐにSNSで状況を聞いた。

「50人以上の人が亡くなった。でも、フットサル選手たちは負傷で済んだ。死んでいないよ」

 だが、そこから送られてきた動画は、あまりにもショッキングなものだった。サッカー協会の入っていたビルは、窓という窓が割れ、ドアが吹っ飛び、もはや廃墟でしかなかった。

 U-20選手権でアフガニスタンを代表し、アジアの頂点を目指した選手のなかには、イランの地域リーグでプレーする選手たちもいた。彼らは被害にあわずに済んだのかと聞くと、U-20アフガニスタン代表の選手たちは全員、カブールに来ていたという。

「大統領が表彰してくれるということで、彼らは全員、カブールに来ていた。準優勝したことで、大統領からは一人あたり1000米ドルの賞金が出たんだ」

 今は安全な場所に移動したというが、選手のうち4人は爆風で飛んできたガラスに当たって負傷したという。それでも彼らを含め、この施設にいた選手たちの命には別状がなかったのは、不幸中の幸いだろう。だが、彼らが暮らしていた寮、トレーニングを行っていたアリーナは、無惨な状態となって使用できなくなった。

「最初の爆発があった時、誰かが生きていると思うことができなかった」

「選手たちの多くは、大きな心理的なショックを受けている。今後、心理カウンセルを受けることになる」

 サイードの言葉は、その一つひとつが重いものだった。

「自動車爆弾は、一台だった。その車は壁の近くで爆発した。そして、そこから1キロ以内にある建物のガラスはすべて割れている。(来年の)AFCフットサル選手権に向けて、10日後からアフガニスタンのフル代表は始動するはずだったが、今はどうやってトレーニングキャンプをスタートすればいいか分からない。私たちには、用具も何も残っていない。もしかしたら、イランへ移動するかもしれない」

 生きるか死ぬかという状況に陥りながらも、彼らは来年のフットサルW杯リトアニア大会予選を兼ねたAFCフットサル選手権2020に向けて、どのようにチームを強化していくかを話し合っているという。そして僕にも「日本の大学で学べる可能性がどれくらいありそうか?」と聞いてきた。

 合宿をしようにも、練習場所や練習用具はもちろん、寝るための枕やブランケットも十分にない状態だという。

「映像で見た広島のような状況だよ。すごく小さなスケールだけどね。でも、僕たちは灰色の血の炎のなかから蘇るよ。フェニックスのようにね」

 サイードの本業は大学の講師であり、彼はマーケティングと生産管理について教えている。そのうえで参考にしているのが、日本だという。日本の文化、人、教育のシステムに深い感銘を受けているという彼は、「ネバー・ギブ・アップ(絶対にあきらめない)」とメッセージを送ってくれた。

(動画の和訳)
「こちらがアフガニスタンの代表監督です。これからテレビのインタビューを受けます。インタビュアーも来てくれました」

「この壊された施設を見てください。アフガニスタンのフットサル代表チームの『家』を見てください。これがテロリストたちがアフガニスタンのフットサルのサポーターにやったことです」

「でも私たちはあなたたち(日本人)から学びました。ネバー・ギブ・アップ」

 今はまだフットサル施設の復旧の目途など、とても立てられる状態じゃないだろう。まずは生活環境を整えるのが先のはずだ。

 これからサイードは、フル代表の選手たちを確実に生存させるために、国外へ脱出させるという。それでも彼は、自身のツイッターを通じて力強く、前を向いたコメントを発表している。

(ツイートの和訳)
「私たちは絶対にあきらめない。
この家を再び立て直し、このアリーナでアフガニスタンのフットサルライオンを集め、アジア選手権とワールドカップに向けて、しっかりとした一歩を踏み出します」

 無事だった選手たちの画像も送ってくれた。

 U-20フットサル選手権で躍進した彼らが、再びフットサルに全身全霊をかけて取り組める日が、1日でも早く訪れることを切に望む。


※現在、アフガニスタンでは何が必要なのか、そもそも援助することが可能なのかもわからない状態です。何かできることがわかったら、Futsal Media NoteやFutsalXで呼びかけたいと思います。その際は、ぜひご協力ください。

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河合拓(FutsalX)
FutsalXでは、引き続き、国内各地での取材や日本代表戦の海外取材なども続けていきたいと思っています。今後、事業を継続、さらに拡大していくうえでは、資金が不可欠です。いただいたサポートは、取材経費や新たなコンテンツ作りなどに使用させていただきます。ぜひ、ご支援ください。