web制作スキルマンダラートの8つの領域の解説とその勉強法 〜vol.1 ビジネス編〜
松本市の制作会社でwebディレクター・マーケターをしている本山です。
先日Twitterで投稿した『web制作スキルマンダラート』ですが、思いのほか拡散されまして、さまざまな方にコメントや反応をいただきました。そのほとんどがポジティブなもので僕自身も作って良かったと嬉しい気持ちになりました。ツイッタランド優しい。
一方でこのマンダラートだけが一人歩きし、作った意図がうまく伝わらなかったり、「このスキルは別の領域でしょ」「この知識が入ってないぞ」というような声があったのも事実です。
そのため、それぞれの領域におけるスキルや知識についてもう少し深掘りして解説したいと思います。またその領域の知識やスキルを学んだり、キャッチアップするための情報源やコミュニティ、書籍などの紹介も合わせてしたいと思っています。
※私本山が今まで経験したことや書籍、情報に基づいた記事になります。他の有益な情報源があれば教えてもらえると嬉しいです。
本日紹介するのはビジネス知識・スキルの領域です。
注意:今回の領域については、私は専門でないためかなり浅いです。ただこれまでweb制作に関わってきた中で必要だと思っていますし、今後深めていくことも重要です。そんな視点で知識・スキルをご覧いただくと幸いです。
ビジネス知識・スキル領域について
web制作の話になるとツールのテクニック論やデザイン論、またはコーディングの話が語られることが多くあります。僕自身もそれらについて議論することや話し合うことは好きです。一方で、「何のためにwebサイトを作るのか」という目的において、ビジネス視点が抜けてしまうと「売れない・成果の出ないwebサイト」を世に一つ増やすことになりかねません。あくまでwebサイトは顧客のビジネスの課題を解決するツールの1つです。本質的な目的を見失わないようにこの領域の知識・スキルが必要だと考えます。
1. 経営知識(お金の知識)
ひと口に経営知識と言ってもその範囲は広いため、経営知識というワードの定義をはっきりとしないといけません。ここでいう経営知識の定義は「web制作を行う上で覚えておくと役立つお金の知識」とします。その切り口で考えると覚えるべき経営知識はそこそこ限定されます(とは言えかなり広い知識が必要ですが...)。僕が考えるweb制作において知っておくべき経営知識としては以下の通りです。
・会社の決算時期(節税対策として広告費用をweb制作に充てる企業が多いため)
・補助金に関する知識
・経理やキャッシュフローに関する知識(請求〜入金サイクルが遅い業界などがある)
・PL / BLシートの大まかな見方
直接的にはweb制作に関係ないかも知れませんが、周辺知識として頭に入れておくと担当者が社長やオーナー、役員だった場合に「こいつ話がわかるな」と信頼してもらうきっかけになります。覚えておくに越したことはないです。
2. KGI / KPI /KSF
KGI(Key Goal Indicator / 重要目標達成指標)、KPI(Key Performance Indicator / 重要業績評価指標)、KSF(Key Success Factor / 重要成功要因)のことで、企業や組織の目標を達成するために必要となる指標のことです。KGIを頂点とするロジックツリーのフレームワークを利用し、KPI、KSFへ落とし込んでいく手法が一般的です。webマーケティングの分野でもよく使われる指標なので、どちらの領域に入れるか悩みましたが、webマーケティング以外でも売上や営業成績、個人の目標管理などにも転用できる汎用性の高さから一般的なビジネス領域の知識に加えました。覚えておくことをオススメします。
情報源
・KPI・KGI・KSFを分かりやすく解説! 具体的な設定方法とKPIツリーの例(カオナビ人事用語集)
・「KGI」「KPI」「KSF」をダイエットで説明してみた (ウェブ解析士協会公式サイト 大岡 歩夢さんのコラム)
3. 業界知識 / ビジネスモデル
受託制作の会社においては、クライアントのwebサイトを作ることが仕事です。そのクライアントの業界やクライアントがどうやって収益を上げているのか(=ビジネスモデル)について知っておくことはwebサイトを作る上でも大切なことです。
業界知識やビジネスモデルを学ぶには書籍や業界誌などを読むのも1つの手ですがディレクターとしてクライアントのサイト制作に関わることが一番早いと思います。なぜなら担当者とやりとりをするディレクターは業界の生の情報を聞けますし、疑問点や不明点を直接聞けるため理解が深まります。これ以上に業界のことを学ベル機会はないのではないでしょうか?
4. 業務知識
クライアントの会社のオペレーションのことです。特にECサイトを制作する場合は業務知識は重要な要素になります。というのもECサイトの機能が現場のオペレーションに即していないため、無駄な工数がかかっていたりする場面は往々にしてあるからです。クライアントのオペレーションを深く知ることで、webサイトの設計が現場のボトルネック解消の一助になることも多くあります。業務知識は持っているに越したことはないですし、業務内容を改善することをサブテーマにwebサイトを設計できればお客さんに喜んでもらえます。
5. ロジカルシンキング
論理的に考えるための思考法です。個人的にはMECEのフレームワークを覚えておくだけではじめのうちは十分だと思います。MECEは特にWBSの策定などに活用ができるため覚えやすいでしょう。ここではMECEの詳しい説明は省きます。また帰納法や演繹法も一般教養として知っておくべき知識と考えています。
情報源・オススメ書籍
・MECEって?ロジカルシンキングの基本的考え方を理解して思考の抜け漏れを防ごう(ferret)
・『考える技術・書く技術』(著 山崎 康司)
・『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』(安宅和人 著)
6. クリティカルシンキング
クリティカルシンキングとは、物事の結論を導く過程において、「なぜ」「本当にそうなのか」と批判的に問い、客観的に物事を判断しようとする思考プロセスのことです。つまり物事の本質をとらえる考え方といえます。
営業 / 提案領域のヒアリングにも通ずるスキルで、このクリティカルシンキングなくして良質なヒアリングはできません。良質なヒアリングができないと、誤った目的を設計したwebサイトを作りかねないため、重要なスキルです。
情報源
・クリティカルシンキングとは?注目される理由やメリット、実践ポイントを解説(あしたの人事)
・【5分で理解】クリティカル・シンキングとは?意味&具体例とおすすめ本を紹介します(ライフアンドマインド)
7. ビジネスフレームワーク
ビジネスフレームワークは非常に種類が多く、全てを覚える必要はないです。個人的に覚えておくと良いフレームワークをご紹介します。
・SWOT分析
・アンゾフの成長マトリクス
・5フォース分析
・PEST分析
・ロジックツリー(2.のKGI/KPI/KSF)
(個々のフレームワークの紹介は、他サイトや書籍に譲ります)
私も全てのクライアントに対してこのようなフレームワークを使っているわけではありません。それぞれのフレームワークには特性があるため、クライアントの状況が全て上記のフレームワークで分析が可能というわけでもないです。必要に応じてフレームワークを選択するイメージです。
※そもそもフレームワークが必要とされない案件もあります。(広報的なサイトや非営利団体のサイトなど)
情報源・オススメ書籍
・図解と事例でわかるビジネス問題解決フレームワーク20選(Career Theory)
・ビジネスフレームワーク図鑑 すぐ使える問題解決・アイデア発想ツール70(株式会社アンド 著)
8. HR関連
HRとはHuman Resourcesの略で直訳すると「人的資源」、つまり「人材」のことです。現在では、ビジネス上「HR」の定義は広義のものから狭義のものまで幅広くあると思いますが、web制作をする上では「人事・労務・採用に関すること」と覚えておくと良いと思います。
HRをビジネスの領域に加えたのは、我々制作会社は採用サイトを作ることがあるからです。採用サイトを制作する上で、クライアントがどのような人材を求めているか、採用のサイクル・スケジュールはどうなっているのか、採用エージェントは使用しているのかなどは重要な情報になります。HRの知識も積極的に取り入れるようにすると良いと思います。
情報源
・「HRとは? 意味、人事部との違い、業務の具体例、話題のHRテックについて」(カオナビ人事用語集)
まとめ
以上ビジネス知識 / スキル領域について8つの知識・スキルについてご紹介をしました。
正直この領域については、私も専門分野でもなくどの知識・スキルも用語や意味を知っているけど、本質的な理解をしているかというとまだまだ足りないと感じています。日々勉強・日々精進です。
みなさんがwebサイトを作ることで、悩みや課題を持つ人・企業の問題が解決され、より良い世の中になっていくことを願っています。
次は「vol.2 ディレクション編」です。