煢然たる宴

焚火を囲んで歌をうたい
手を繋いで踊ると
死の容易さが抉剔される
踊りは
誰が誰であってもよい
その輪に加わることの
簡単さは
極楽浄土が然程遠くないとの
確信を与える
生きて苦しむ必要はないが
死んで楽になるのは 耐えられぬ
ひとりの少年が 松明を手に
火を盗んだ
追われる事もなく走り始めた
篝火は燃えている
人は時折 火の奴隷
暗がりから薪を調達しては
焚べ続ける
太陽に劣らぬ明るさが
夜にも欲しかったから
少年は深い森の中に
動物の声を聞き
生きているのを思い出した
かなしみが
少年を海へと走らせる
輝かし黎明とともに
崖上に辿り着いたとき
少年のギョロギョロとした瞳は
遠い煙を見る
軈て
火と人と宴を考えるとき

その矛先が自分自身に向いたとき
解剖学の先を知る

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