ローファー党

最も好きな履物、ローファー。高校入学時に近所の靴屋で買ってもらったハルタ製の小豆色をしたローファーを履いて、欣喜雀躍した。もう靴紐を結ばなくて良いじゃないか!と。爾来10年間、ローファーユーザーである。今はスニーカーも持っているけども、やっぱりローファーで出歩く事が多い。散歩も、旅行も、遊びに出る時も、出勤も、全てローファーでこなす。

ローファー(loafer)には、怠け者、サボり、プー太郎、浮浪者という意味があるらしい。まさに「類は友を呼ぶ」。私は職場でも飲み会の場でも日常生活でも、特に何もせぬ男であるから、ローファーを履くに相応しい人格を兼ね備えていると云えよう。仕事中はよく、耳を揉んだり、チョコを食べて過ごしている。余りに暇なので天気予報(1時間ごと)を北海道から順に沖縄県まで見て、そこで週間天気に切り替え、また北海道まで戻っていた事すらある。

ローファーの原形はloafigと言い、ぶらぶらする、とか、だらだらする、ごろごろするといった意味らしい。休んでる(サボってる)時の音って濁音を混ぜるのと同じ音を繰り返すのがお約束なのでしょうか?それにしても音としていいなぁ。

郊外を逍遥するのなら、ローファーに限る。革靴という適度なフォーマルさ(だが紐が無い分ラフでくだけている)と脱ぎ履きのし易さ(履く時に屈む必要が無い、靴を脱ぐ店に入っても移動がスムーズ)は大きな利点である。だらしない服装に陥らず、どこまで堕落するかを考慮すると、ローファーは合理的な選択肢として機能する。怠惰は知らず知らずのうちに合理性と結びつくようである。

近年はよく「働き方改革」というのを耳にしますね。ところがそういう提言の前に我々人間には、労働に対するスタイルみたいなものが少なくとも二種あるように思われる。ひとつは蟻型。組織の中に自然に入り、黙々と動く方は蟻型でしょうな。勤めをしている人は殆ど蟻型と思われます。自営業(個人事業主)の方でも自分から仕事を取りに行かなきゃならん方は蟻型でしょう。

もうひとつは蜘蛛型。蜘蛛というのは巣を張る時だけは、かなり懸命に働く。しかし、巣が出来上がったら後は中心でじっとしているだけで、何もしない。完全に怠惰な虫ですね。おまけにひとりでに、自分勝手に巣を張る。チームワークが無いのね。あれを見ていると到底勤めが出来ない奴だろうなぁと思う。同時にローファー党だなぁとも。

蟻も蟻で大変なのは「働き蟻の法則」というのがあるのね。資本家に該当する女王蟻を抜きにして、残る全ての蟻は働き蟻。この無数の蟻の中で、優秀なのから順に「2:6:2」で分かれてゆくらしい。人間界も、まぁ同様でしょう。秀でて働くのが上位2割。政治家とか官僚、社長とか幹部とかになるのがね、多分ここら辺ですわ。次いで6割のボリュームゾーン。おそらく最も重要な部分です。公務員とかサラリーマンが分かりやすいが、自営業、町工場の職人、農家、漁師、大工さんなどなど働く方ですよ。とにかく何かしら働いとる方、6割です。残る2割が働かない人。生活保護でパチンコいったり、何もせずにだらだらしている人。全く売れない絵を描いていたり、終日寝ている人。ニートとかね。

どうも働き蟻の法則というのは、どんな集団でも当てはまりうるらしい。だからアップルだグーグルだゴールドマンサックスだといったって解雇される人はいるんだろうね。資本主義社会だと、さっき挙げた最後の2割の人を、最初の2割の人ぐらい毛嫌いしますよね。政治家は不正してカネもらってたり、世の中を良くしないんで、叩く。社長は賃金を引き上げないから、まぁ叩く。働かない奴はそいつらよりもっと叩き易いし、何より「社会のため」に寄与しないからもっと叩く。やっぱり6割に属してる人は腐ってもマジョリティだから、何だかんだかなり強いんですね。蟻型でうまく働けないタイプは、これは「生きづらい」となる訳だ。

この「社会に寄与しない2割の蟻型」と仲良くなれそうなのが蜘蛛型ね。はなから労働が眼中に無く、籍は会社にあるんだけど、ただぶらぶらしてる感じの人。窓際族なんだけど、完全に窓際貴族の人です。もしくは道楽に近い自営業を営んでる方もそうかな。こういう私みたいな、完全にだらしない人たちはローファー党になりましょう。ローファーを履けという訳じゃないですよ。ゆるい精神的同胞の繋がりを感じようという試みね。多分ローファー党の政治集会をやるったって、みんな面倒くさがって来ないだろうし、そうやって党っぽく結託したら、またその集団の馴染めない2割が出てきちゃうから、集まらなくていいです。ただなんとなく、怠惰な人の受け皿みたいな感じでローファー党があったらいいよね。乞食軍団とかだと響きが悪いけど、ローファー党ならそこまで悪そうじゃないしな。

さて、俺も書くの飽きたし、あと眠たいからよ。あとお前らで勝手にやっとけよ。じゃ。


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