タオルの好きも千差万別
お風呂上がり、体についた滴をバスタオルで拭う。
柔らかいバスタオルに全身を包まれると、少し贅沢な気分になる。それがいい香りなら更に幸せな気分で満たされる。
でも、柔らかいバスタオルなら何でもいいと言うわけではない。
ホテルのバスタオルは大きくてフワフワで分厚い。
全体をサッと拭くのにはいいけど、分厚すぎて耳の窪みやお尻の割れ目とか足の趾の間なんかには上手く入らないから拭きにくい。
そして洗濯屋さんの大きな乾燥機で強力な熱風によって乾かされているせいか、水分の吸収率が家のタオルより随分と高いように思う。体についた水滴だけではなく、皮膚の中の水分も吸い取られてしまうような感覚に陥る。拭いた後は皮膚がいつもより少しサカサカしてつっぱる(気のせいかもしれない)。
厚みと大きさと適度なフワフワ感。それらがバランスよく整っているのがいいタオルなのだと思う。
私が愛用しているのは無印良品のワッフルタオル。
色々なタオルを使ってみたけど、引っかかって糸が出てきたり、出てきた糸が引きつれて筋が入ったりする。新しいタオルの糸がほつれた時ほどテンションが下がることはない。引っ掛けた瞬間、シュンとなる。
ほつれにくいタオルを求め、たどり着いたのがワッフルタオルだった。
細かいところも拭きやすい適度な厚みとフワフワ過ぎないフワフワ感。
無印良品のタオルならば、いつでも同じものが買い足せる。
同じタオルが揃って並んでいる棚はスッキリして気持ちがいい。
▽△▽△▽△▽△▽△▽△
10年位前、タオル屋さんに勤めていた友達が「柔軟剤は生地を傷めるから、使わない方がいい」と教えてくれた。
生まれてこの方、柔軟剤を入れずに洗濯した事はない。が、私は友達の言葉を信じ、意を決して柔軟剤を入れずに洗濯をした。
洗い上がったタオルは心なしかザラザラしている。しかし暫くすると全く気にならなくなった。柔軟剤を使わなくてもフワフワ感は残っている。
やがてフワフワを感じなくなったら、それは寿命。天寿を全うしたと思って掃除に使うという供養をすればいい。
何年か経過し、ドラッグストアで買い物をしていると、気になる柔軟剤をみつけた。何を血迷ったのか、私はその柔軟剤を使ってみたくなった。数年ぶりに柔軟剤を入れて洗ったタオルで体を拭くと「ヌルヌルして気持ちが悪い」。
毎日柔軟剤を使っていた頃には全く気が付かなかった感覚。今や私の皮膚は柔軟剤を感じとることができる、敏感なセンサーが働くようになっている。
やはりタオルには柔軟剤を入れない方がいい、と言う結論に至った。
⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎
もっさりが我が家に来るようになってから、私はもっさりに家で1番フワフワのタオルを用意していた。
タオルの肌触りに私が気を遣っているなんて、もっさりは知らない。そんな細やかな気配りをする自分に、私は酔っていた。
数ヶ月経ったある日、もっさりが言った。
「俺はゴワゴワの方が好きや」
私は耳を疑った。一瞬、聞き間違いかと思った。今「ゴヤゴワノホウガスキ」と聞こえた。世の中にゴワゴワの方が好きな人がいるだなんて、考えたことが無かった。
ゴワゴワのメリットって何だろう。
肌への刺激感。そのひとつしか思い浮かばない。
刺激感から来る爽快感なんていうのもあるのだろうか。
フワフワのタオルを選んで渡していたのに、ゴワゴワが好きだったなんて。
私が今までしてきた気遣いは、もっさりにとっては不快。私は眩暈を起こしそうになった。
人の好みはそれぞれ。自分で想像して勝手に決めつけてはいけない、と48年間で学んできたはずなのに。
ああ、神様。こんな浅はかな私をお許しください。
それ以降、もう捨てようかと思っているゴワゴワのタオルをもっさり用に置いている。それでももっさりは
「もっとゴワゴワの方がいいくらいや」と言う。
今のゴワゴワタオルでさえ、もっさりの理想のゴワゴワ感にはまだ程遠いようだ。
どの位ゴワゴワになれば理想的なのだろう。とにかく何年も使い古してゴワゴワにする他ない。
ゴワゴワタオルを作る方法があれば、教えて欲しい。