【短編小説】 紙一重 〜埋もれた紙〜
いつものように散歩に出かける。
空には羊雲が連なり、河原のススキは揺れていた。
お気に入りの白いスニーカーはくたびれて、薄汚れている。
解けた靴紐を結ぼうとしゃがむと、草の隙間から、何かが少しだけ顔を出していた。
僕はそれが気になり、爪の間に土が入るのも構わず、掘っていく。
出てきたのは、小さく折り畳まれた紙だった。
紙は土で茶色に染まり、湿っていて、そおっと開かなければ、破れそうだ。
ゆで卵の薄皮を剥くように、丁寧に開いていく。
紙の中央には、小さな文字で何かが書かれている。
ハッキリとは読み取れず、僕は家に持ち帰ることにした。
机の上に新聞紙を敷き、その上に拾った紙を広げる。
スマホのライトで照らしてみると、微かに文字が読み取れた。
僕はあの紙を書いた人への返事を書き、ガチャガチャのカプセルに入れた。
そして、スコップを持って河原に行き、同じ場所に埋めた。
あの紙の持ち主がカプセルに気づいてくれるのか、気になって眠れない。
しかし、僕は週末まで待つことにした。
土曜日の早朝、僕はスコップを持って河原に向かう。
あの場所を掘ってみると、カプセルはまだそこにあった。
ちょうど朝日がカプセルに当たり、中が透けて見えた。そこには僕が入れたのとは違う、水色の紙が入っていた。
早く中を見たい。
はやる気持ちを抑えながら、僕はカプセルを握りしめ、家まで走って帰った。
家に着くと、カプセルを開け水色の紙を開く。
ピロリーン、ピロリーン、ピロリーン
読み終えると同時に、インターフォンの呼び出し音が大音量で鳴った。
僕は背筋が凍って、動くことが出来なかった。
【1,179文字】
2024年10月8日 タイトルと一部文章の訂正を行いました。
この記事は秋ピリカグランプリ2024応募作品です
主催者様、よろしくお願い致します
#秋ピリカ応募