"最底辺のポートフォリオ 1日2ドルで暮らすということ"を読んだ
日比谷図書文化館を訪れる機会があり、図書館員おすすめコーナーを何気なく見ていみたら気になる本がピックアップされていた。最底辺のポートフォリオをという題で、本のページをめくってみたところ、インド・バングラデシュ・南アフリカの貧困世帯について参与観察に近い方法で調査員が調査に訪れ、家族構成や誰にお金を貸したのかなど、バランスシート・キャッシュフローを記し調査を行っている内容であった。内容に興味が湧いたので借りて読んでみることにした。
最底辺世帯の金融への関わり方
最底辺と言われる、1日平均2ドル程度(2011年以前の米ドル換算)の稼ぎしかない世帯と、わずかながら現地で裕福な世帯を対象にしてどのように生活の糧を得ているのか・貯蓄をしているのか・投資をしているのかを研究テーマとしてまとめられた内容であった。その中では、現地の人がどのようにまとまった資金を調達しているか──例えば家の修理、家族の入院費用など──をエピソードを交えてB/S、P/Lを含めて紹介している。そこではマイクロファイナンスと呼ばれる公的に認められた金融機関以外に、個人間のお金の貸し借りを含めてお金の融通をしている姿が書かれていた。貧しい国の最貧世帯は金融にタッチできないのでは、とか金融の利用や金利についてあまり詳しくないのではといった個人的な思いがあったものの、実態はそうではなく利用できる金融機関があれば資金を調達して貸したり、借りたり、金利の融通を測るなどきちんとした契約を踏まえて(中にはリスクの有る取引である口約束や信頼だけを利用したものもあるが)行われていることが書かれていた。
貯蓄する手段として多額の手数料を金利として支払う方法
貯蓄を行う手段として、マネーガードと言われる現金の保管を行ってもらえるように人に頼む手段を利用していたり、共同貯蓄組合として複数人でお金を出し合って定期的に誰かが多額の資金を引き出せるようにする仕組みを金利を込めて運用するなどリスク(盗難やとんずら)があったとしてもそのような形で資金をためていく手段と取っている姿が書かれている。積み立てて220ドル受け取れるような状態になったとき、金利として20ドルを組合か、お金を管理していたマネーガードに支払って200ドルを受け取るというようなものである。日々の積立額は非常に小さいが、こうしないと貯蓄できないので貯蓄のために使っているという事例が調査対象三カ国(インド・バングラデシュ・南アフリカ)全てで行われている。理由は銀行を使うにしても日々やりくりできる現金が少額であり手数料が馬鹿にならない、窓口にいっても担保となる資本がないため契約できるかわからないので期待できないなどの理由があるとのことだ。
本に書かれていた内容と自分の生活を見比べる
本に書かれていた内容は、もっと詳細な事例があり、文化的に必要な行事があるためしかたなく大きな資金を出さなければならなかったり、金融にタッチできない理由も現地の金融機関がなかなかうまい具合にリスクと商品をバランス良く提供しづらい状況にあるというものがあったりする。で、その中で今の自分の暮らしと照らし合わせて見ると、貸借対照表のように資産と負債だけでわけず、キャッシュフロー中心に自分の周りの物事を捉えることがあったっけ、と考えたり、金利が高くても複利なのか単利なのかでまず考えるべきか、とか今ある現金を減らさないためのローンの利用など、考えつかなかった・あまり深く思っていなかった点が出てくるのを感じた。お金がすべてではないものの・・・金融へのタッチや資金・資本構成を考えたり、作ったり処分したりなど見直さなければならないかもしれないと思った。
最底辺のポートフォリオは開発経済学に関わる本であった。関連して今SNSで話題となっている貧乏人の経済学についても読んでみたいと思う。(2019年ノーベル経済学賞受賞者が著した本)