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長距離恋愛販売中【#毎週ショートショートnote】

山崎さんから聞いた話。

山崎さんには遠くで働く彼女がいた。ビデオ通話で寂しさを埋めていたが、距離感は残った。それでもいつか一緒に暮らせると信じていた。

ある夜、彼女から「長距離恋愛支援サービス」という店の話があった。
怪しげなサービスだったが、彼女の希望だからと申し込むことにした。

その店は薄暗い路地にあり、「長距離恋愛販売中」と書かれた看板があった。店内は静かで古びた香りが漂っていた。無表情な店員が無機質に契約内容を説明し、契約を交わして「お互いの気配を感じ取れる」指輪を注文した。

数日後、錆びた指輪が届いた。

その夜、指輪をはめて眠ると、夢の中で彼女の声が聞こえた。

「今、そばにいるよ…」

確かに彼女の声だった。しかし、彼女からの連絡は途絶え、返信もなかった。それでも夜には彼女の声が囁き、触れる感触さえあった。

その気配は次第に恐怖に変わっていった。耐えきれず、山崎さんは彼女のアパートを訪ねたが返事はない。

管理人から「数週間前に事故で亡くなった」と聞かされた。
指輪を見ると鈍く光って、彼女の声がまた囁いた。

「これで、もうずっと一緒だね……」


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