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中身スカスカだからこそ、すがりたくなる《誤解されたメラビアンの法則》【セイスケくんのエッセイ】


ビジネスで「コミュニケーション能力が大事」なんて話、聞き飽きてるかもしれないけど、それでも多くの場面でカギになるのは事実。
ただ、ちまたでよく聞く理論には「それ、マジっすか?」と疑いたくなるものも少なくない。「人は見た目が9割」とか、「最初の4分間ですべてが決まる」とかがその典型。
そこで、こういった理論の誤解や、それを鵜呑みにすると何が問題かをざっくばらんに見ていきたい。さらに、どうすればもっと実用的にコミュニケーションを良くできるか、役立つ考え方を一緒に考えていこう。

人は見た目が9割だから、中身スカスカでもオッケー牧場!

よく「人の印象は話の内容より、見た目と声で決まる」なんて言われるけど、これってメラビアンの法則の誤解だ。そもそもこの法則は、「矛盾したメッセージがあるとき」に限っての話。つまり、言っていることと表情や声のトーンが合ってない場合に、「どっちを信じるか」を考える参考として生まれたものだ。でも、なぜかいつの間にか「話の内容はたったの7%、見た目が55%だ!」みたいにひとり歩きしてしまっている。これだと、まるで何を話しているかなんて関係ないみたいに聞こえるけど、そんなはずがない。
たとえば新しいプロジェクトを提案するとき、どれだけかっこいいスライドを作っても、内容が具体的なデータや根拠に基づいていなければ、結局は説得力に欠けてしまう。つまり、見た目も声も大事だけど、それだけじゃダメ。だからメラビアンの法則をコミュニケーションの全部に当てはめると、本当に大事な「情報の中身」や「説得力」が無視されるリスクがある。

メラビアンの法則とは
心理学者アルバート・メラビアンが提唱した、コミュニケーションにおける「言語」「声のトーン」「視覚情報」の割合についての理論。この法則によれば、話し手の感情や態度が矛盾している場合、受け手がどのように印象を受け取るかは次の割合で決まるとされている。
視覚情報(表情や身振りなど):55%
声のトーンや話し方:38%
言語情報(話の内容):7%
このため、「7-38-55のルール」とも呼ばれている。この法則は、特に言葉と態度に矛盾がある場合、視覚と聴覚の情報がより重要視されることを示しており、言語情報だけでなく非言語的要素もコミュニケーションに大きな影響を与えるとされる。

メラビアンの法則の誤用

メラビアンの「7-38-55のルール(7%-38%-55% Rule)」は、研究の結論が広がる過程で一部が誇張され、特定の状況を超えて誤解されたもの。例えば、「どんな内容のコミュニケーションでも、意味の大部分が非言語で伝達される」という主張がその一例だ。しかし、これはメラビアンの研究が想定していた範囲を超えて適用される誤解であり、過度な一般化である。
メラビアン自身も、自らのウェブページで、「7-38-55のルール」は特定の状況、特に好意や反感といった感情的態度のコミュニケーションに限られたものであると明言している。この等式「好意の合計 = 言語による好意7% + 声による好意38% + 表情による好意55%」は、実験が感情や態度に関するコミュニケーションに絞られている場合にのみ成り立つものであり、話者が感情的な内容を伝えていない場合には適用できないと述べている。

Webより引用
My findings on communication and body language, as well as those of many other investigators, are organized and summarized in very readable form in "Silent Messages." The book deals with all facets of nonverbal communication, including body positions and movements, facial expressions, voice quality and intonation during speech, volume and speed of speech, subtle variations in wording of sentences that reveal hidden meanings in what is said, combinations of messages from different sources (e.g., face, tone of voice, words), and general descriptions of individual communication styles or mannerisms.
Most of the findings summarized in "Silent Messages" can be used to enhance one's awareness of the many subtle aspects of interpersonal communication, and to improve one's communication skills. Leadership and management trainers can make very effective use of this book in a variety of training seminars on improving communication skills, leadership, or effectiveness of working groups.
Here are only a few examples of the numerous important aspects of communication described in "Silent Messages:"During persuasion -- what are the important nonverbal messages for effective persuasion of others, for example, in a supervisory role or in sales?
Deceitful behavior -- how can one detect that another is being deceitful or not overly forthcoming?
Individual communication styles -- how do we describe a person's general communication style and what are the basic elements of a person's style? How can one identify problem elements in one's own nonverbal communication and improve one's communication effectiveness?
Analyses of the way in which sentences are worded. For example, what differences in attitudes are implied when someone says: "I like those people" instead of, "I like these people?"
Inconsistent communications -- the relative importance of verbal and nonverbal messages. My findings on this topic have received considerable attention in the literature and in the popular media. "Silent Messages" contains a detailed discussion of my findings on inconsistent messages of feelings and attitudes (and the relative importance of words vs. nonverbal cues) on pages 75 to 80.
Total Liking = 7% Verbal Liking + 38% Vocal Liking + 55% Facial Liking
Please note that this and other equations regarding relative importance of verbal and nonverbal messages were derived from experiments dealing with communications of feelings and attitudes (i.e., like-dislike). Unless a communicator is talking about their feelings or attitudes, these equations are not applicable. Also see references 286 and 305 in Silent Messages -- these are the original sources of my findings.

日本語訳
私自身や多くの研究者によるコミュニケーションとボディランゲージに関する調査結果は、『サイレント・メッセージ』において読みやすい形で整理・要約されている。この本は非言語コミュニケーションのすべての側面を扱っており、身体の姿勢や動き、表情、声の質や話し方のイントネーション、声量や話すスピード、言葉の微妙なニュアンスなど、異なるメッセージ源(顔、声の調子、言葉など)からのメッセージの組み合わせ、そして個人のコミュニケーションスタイルや癖についても説明している。
『サイレント・メッセージ』にまとめられた多くの発見は、対人コミュニケーションの多くの微妙な側面への気づきを高め、コミュニケーションスキルを向上させるために活用できる。リーダーシップやマネジメントトレーナーは、この本を様々なコミュニケーションスキル向上やリーダーシップ、ワーキンググループの効率向上のためのトレーニングセミナーで効果的に利用できる。
『サイレント・メッセージ』で取り上げられている重要なコミュニケーション要素の例をいくつか紹介する:
説得時 — 監督役や営業の場面で、他者を効果的に説得するための重要な非言語メッセージとは何か?
欺瞞行動 — 他者が不誠実であるか率直でないかをどのように見抜くか?
個人のコミュニケーションスタイル — 人のコミュニケーションスタイルをどのように説明するか? また、自分の非言語コミュニケーションの問題点をどのように特定し、効果的なコミュニケーションを向上させるか?
文の表現方法の分析 — 例えば、「I like those people」(あの人たちが好き)という表現と「I like these people」(この人たちが好き)という表現では、態度にどのような違いが含まれているか?
一貫性のないコミュニケーション — 言語メッセージと非言語メッセージの相対的重要性。このトピックに関する私の発見は、学術文献やメディアで注目を集めてきた。『サイレント・メッセージ』の75〜80ページには、感情や態度の一貫性のないメッセージ(言葉と非言語的手がかりの相対的重要性)に関する詳細な議論が含まれている。
「総合的な好意度 = 7% 言語的好意度 + 38% 声の好意度 + 55% 表情の好意度」
なお、この式や他の式は、感情や態度(好き・嫌い)を表現するコミュニケーションに関する実験から導かれたものである。話し手が感情や態度について話していない限り、これらの式は適用できないことに注意。また、『サイレント・メッセージ』の286および305の参考文献も参照のこと。これらが私の研究結果の原典である。

「最初の4分間」で全てが決まる?ズーニンの法則

「最初の4分間で相手の印象は決まって、それがその後もずっと影響する」とよく言われるけど、これも話が簡単すぎない?
初対面の相手に不快に思われたくない(よく見られたい)から身だしなみや言葉遣いに気をつける。たしかに第一印象は大事。でも、それだけでその後ずっと関係が決まるわけじゃない。
ビジネスでも、たとえば違う部署との会議で、初めは意見がぶつかっていたとしても、定期的なミーティングや問題解決のワークショップなんかを通じて理解が深まり、協力関係が生まれることもある。最初の数分が決め手なんじゃなく、やり取りを重ねることで信頼が築かれる場合も多い。
それに、第一印象だけを頼りにすることで相手の本質を見誤ったり、偏見に流されたりするリスクもある。初対面の人が詐欺師……とかね。

心理学者のレナード・ズーニン(Leonard Zunin)は、著書『Contact: The First Four Minutes』で、「コミュニケーションは最初の4分間で決まる」と述べている。この最初の数分間が関係の方向性を決定づける重要な瞬間であると説明している。この理論は、初対面の人とどう関わるか、第一印象がその後の関係にどれほど影響を与えるかについての研究や考察を基にしている。
具体的には、最初の3秒で見た目から判断され、次の30秒で話し方から好悪が判断され、わずか4分で人間性のすべてが見られるというのだ。これを「初頭効果」といい、人は最初の印象を強く記憶し、それがその人のイメージとして定着する。

自己主張と他者配慮のバランス

自分の意見をちゃんと言いながら、相手に不快感を与えない」のが理想的なコミュニケーションって話もよくきくけど、自己主張だけでもダメだし、相手に合わせすぎるのも違う。日本では「空気を読む」ってスキルがあるけど、これだって状況次第で大事なこと。
例えば、顧客との商談で、相手の意見に耳を傾けつつ、自社の利益を守るために上手に交渉する場合、相手の立場に配慮しながら自己主張する必要がある。つまり、自己主張と他者への気遣いのバランスを取るのが大事で、それこそが「ビジネスで成功するコミュニケーションスキル」だと思う。

結論

結局のところ、メラビアンの法則や「最初の4分間がすべて」みたいな理論をそのまま鵜呑みにしても、あまり実用的とは言えない。コミュニケーションは、「見た目」や「話し方」だけじゃなく、相手との信頼関係を築くことや、自己主張と他者配慮のバランスをとることがポイント。それを踏まえてコミュニケーションに取り組めば、プロジェクトの質や効率も上がり、結果として成果も上がってくるってわけだ。

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