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鉄塔の中の異変【怖い話・不思議な話リライト】

あらすじ

主人公はドコモ関連の設備管理の仕事をしているが、昨年の年末に山頂のアンテナ鉄塔を点検する際に不可解な体験をした。上司二人とともに雪道を歩いて鉄塔に向かう途中、奇妙な紙が木やフェンスに絡まっているのを見つける。鉄塔の中に入ると動物の毛と少量の血痕を発見し、さらに遠くから不思議な声が聞こえたが、仲間たちは声の主を誰かだと思い込んでいた。

下山中、主人公は雪の上に自分たちの足跡以外に小さな裸足の足跡を見つける。さらに、歩いていると前方に白い裸足が現れ消えるという奇妙な現象に遭遇。無事に車に戻ったものの、上司二人は突然「神社に詣ろう」と言い出し、違和感を覚える。その後、上司たちは帰り道に不審な行動を見せ、翌日以降も連絡が取れなくなり、最終的に二人は会社を辞めたり行方不明となってしまった。
謎と不安が残るまま、主人公は今もその出来事に悩まされている。



私はドコモ関連の設備管理の仕事をしている者ですが、昨年の年末にちょっと信じられない体験をしました。これまで幽霊とか妖怪とか、そういうものは信じていませんでしたし、そういった現象に出くわしたこともなかったのですが、今回の出来事は、自分のそういう認識をひっくり返してしまうようなものでした。

未だに、あれが現実の出来事だったのか、自分の幻覚だったのか、確信は持てないのですが……

去年の12月27日、私と上司二人は、山頂にあるアンテナ鉄塔の点検に出かけました。山道を車で登っていったのですが、途中で雪が深くなり、その時はスタッドレスタイヤを履いていなかったので、それ以上進めなくなり、仕方なく神社の前に車を置いて、1キロくらい歩くことにしました。

雪は凍っていて、踏むとザクザクと音がします。けれども、妙なことに木には雪が積もっていませんでした。上司の国井さん(仮名)に聞くと、「木の枝に積もった雪は、すぐに下へ落ちるからな」と言われましたが、何か違和感を覚えたのを覚えています。

鉄塔に近づくまでに三十分以上も掛かってしまい、やっとの思いでたどり着いた頃、国井さんがふと上を見上げながら言いました。「木の枝に何か引っかかっているぞ」

私ともう一人の上司の寺田さん(仮名)も上を見上げると、木の枝に細くて白い布のようなものが風になびいていました。それがどこからか垂れ下がっているように見えましたが、どこから来たのか、見当がつきませんでした。しかも、鉄塔の周りのフェンスやゲートにも同じような布が絡まっていました。

「山仕事の人のイタズラか?」「気持ち悪いなぁ」

ゲートの鍵を開けて中に入ると、その白いものが実は布ではなく、黒い文字が書かれた紙を裂いたものだと気付きました。まるで呪文のようなものが記されているようで、気味が悪かったです。

鉄塔のドアを開けようとしたのですが、鍵がかかっているはずなのにスムーズに開きました。「ここ鍵が開いてたみたいですよ」と私が言うと、国井さんは「そんなはずはない」と断言しました。確かに、鍵は前回の点検時にきちんと閉めたはずだと。

中に入ると、妙な臭いがしました。金属や腐敗したものの臭いが混じったような、なんとも言えない不快な臭いでした。二人も同じ臭いに気付き、「何か臭うな」と言っていました。

点検が進む中で、寺田さんが「んんん?!」と声を上げました。近づいてみると、階段の下に動物の毛がバサッと落ちていました。「これ、鹿じゃないかな?」国井さんが言いましたが、どうしてこんな場所に鹿の毛が?しかも、その下には血痕が残っていました。

「ここで食われたのかな?」寺田さんはそう言いましたが、骨もなく血も少ないのが気にかかりました。しかも、鉄塔のドアは閉まっていたのです。動物がどうやって中に入ったのか、全く分かりませんでした。

不気味さが増す中、点検を進めようとしていると、遠くの方から「ホゥゥゥゥ」という声が聞こえてきました。それが何かは分かりませんが、国井さんの声かと思って叫ぶと、別の方向から「何だー!」と声が返ってきました。妙なことに、声の聞こえた方向と国井さんの位置が一致しなかったのです。

点検を終え、外に出ると誰もいませんでした。寺田さんを探し、周りを見回しましたが、姿が見えない。しばらくして国井さんと寺田さんが一緒に出てきました。

「さっき呼んでませんでしたか?」と聞くと、寺田さんは「いや、俺は呼んでないよ」と答えます。二人は上でボルトの点検をしていたらしく、声を出す機会はなかったと。

下山するため、再び雪道を歩き始めましたが、その時、足元の異変に気付きました。寺田さんと国井さんの足跡の間に、小さな裸足の足跡が一緒に並んでいたのです。私達が登ってきた時には確かにそんな足跡はなかったはず……でも、そこに確かにあったのです。

目の前に白い裸足がふと現れ、そして消える……その足跡は、私達のすぐ前を、同じペースで歩いているかのように見えました。

車に戻ると、国井さんと寺田さんが「これから神社に詣ろう」と言い出しました。私にはそれがどうにも不自然で、気持ちが悪くなりました。必死で二人を説得し、どうにか車に乗り込み、山を下りました。

その後、寺田さんは会社を辞め、国井さんとも連絡が取れなくなりました。いまだに二人は音信不通です。山の神に関する噂や、鉄塔が神域を侵していたのではないかという話も聞きますが、真実は分かりません。

私にはただ、二人を山に残してはいけなかったという後悔だけが残りました。


読者との対話:※太字スレ主


604 :本当にあった怖い名無し:05/01/25 18:43:01 ID:C8Vt4Y5D0
「一度、お祓いに行かれた方がよろしいと思いますよ。お寺が良いでしょう。」

お寺でお祓いってやってもらえるんですか?事情を話さなきゃいけないんでしょうか?

「話した方がいいですよ。事情を隠すと、かえって何も解決しないかもしれません。」

ありがとうございます。もし国井さんと連絡がつかなかったら、二月になったらお寺に相談してみます。

「いつか、またあの鉄塔に点検に行くことになるかもしれませんよ。その時、あなたはどうしますか?一緒に行く仲間は大丈夫ですか?」

正直、もうあそこには行きたくありません。次の異動で庶務に回してもらおうかと考えています。女性でこの仕事をしているのも珍しいですし、報告書にはあの出来事も書いておいたので、上手く要望が通ればと思ってます。次に行く人のことは気がかりですが、私が考えすぎなだけかもしれません。


678 :本当にあった怖い名無し:05/01/26 08:26:13 ID:CA4jcXyw0
「ドコモさんが女性だって聞いて、ピンと来たんだけど、山の神って女性だよな?しかも、嫉妬深いことで有名だ。かつては女性が入っちゃいけない山も多かったんだよ。」

「昔の話だが、山に入る女性を人柱にする儀式があったり、女性を人身御供として捧げることもあったらしい。もしかして、あの鉄塔が建っている場所って、そういう神域に無理やり建てちゃったんじゃないのか?」

「儀式が続けられていた場所に、鉄塔を立てようが山の神は変わらずに存在してたってわけだ。でも、昔と違って今じゃ生け贄は獲物や動物で代用してたんじゃないかな。そこに、ドコモさんたちがズカズカと踏み入ってしまった。しかも、女連れでな。」

「お前らが知らずに掃除しちゃったのは、山の神の食事場所だったんじゃないか?そりゃ、神様も怒るわ。」

「下山する時点で、もう二人は山の神に取り込まれてたんだろう。ドコモさんを置いていくように神社に呼ばれてた。だけどそれができなかったから、二人のうちどっちかを連れて行くしかなかった……行方不明の一人、たぶんあいつはもう山の神と暮らしてるんじゃないかな。」

「神社に行かなくて正解だったよ。でもな、神様がしつこいと、また仕事の理由で同じ場所に呼び戻されるかもしれないから、早めにお祓いした方がいいぞ。」

「あと、山の名前、神っぽい名前ついてないか?例えば八幡とか犬神とか。もし神社に行くことになったら、同じ系列の本社に行った方がいいぞ。親分に直接話をつけるみたいなもんだ。」


679 :本当にあった怖い名無し:05/01/26 10:16:29 ID:GbQWv9QE0
「ドコモさんの話、マジ怖えええ。うちの会社もドコモの鉄塔点検やってるから、同僚に怖い話がないか聞いてみるわ。」

「仕事で鉄塔行くときって施錠には一番気を使うんだよ。NTTとかに怒られるし、鍵の閉め忘れなんてありえないって。だからドコモさんたちの鍵が開いてたのも、どう考えてもおかしいんだよな……。」


722 :ドコモ:05/01/26 19:24:45 ID:I5N8gPWV0
皆さん、アドバイスありがとうございます。山の神とか霊感とか、正直良く分からないんですけど、いろいろ参考にさせてもらいます。まだ国井さんも寺田さんも連絡がつかないので、もう少し待ってみようと思ってます。

寺田さんの方が若いですが、国井さんが男前かどうかはよく分かりません。ただ、山の名前は「大山」です。施錠については、私も鍵をかけ忘れたとは思えません。チェックリストにも書いてありますし、そう簡単に忘れることはないんです。

それと、鉄塔にはセコムみたいな警報装置が付いてないんです。山だと誤作動が多すぎて、使えないかららしいんですけど……それも、少し不気味ですよね。


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