無人島生活福袋【#毎週ショートショートnote】
次元のリュック
北村拓也が「無人島生活福袋」を見つけたのは、郊外のアウトレットモール。埃にまみれた棚で、奇妙なリュックがこちらを見つめているように感じた。
軽い気持ちで購入し、家で袋を開けると、アウトドア用品と古びた地図が出てきた。見覚えのない地名を調べると、それは実在する無人島だった。
衝動に駆られ島へと向かった拓也は、地図通りに進み、半分埋まったトランクを見つけた。その中には「戻るな」と書かれた手記。
夜になると不気味な足跡がテント周りに残されていた。それが何なのか考える余裕もなく、翌朝すぐに島を離れたが、自宅でも異変が続く。
リビングに戻ったリュックの中には、新しい地図があった。それは彼の通勤路を示していた。
翌日、地図の場所を訪れると、別のリュックと古びた地図、そしてペンダントが見つかる。以来、地図に導かれる日々が始まり、拓也の過去と絡む記録が次々と現れた。
「戻るな」の警告は「進め」に変わり始めていた。
ある晩、リュックの中から地図が消え、「次の扉が最後だ」という紙切れだけが残されていた。そこに示されたのは自分のアパートの屋上。
恐る恐る上がると、夜の闇に木製の扉がひとつ佇んでいた。
扉を開けると無人島の風景が広がり、潮の匂いとともに確かな視線を感じた。
振り返るとリュックが扉の前に佇んでいた。
瞬間、足元が砂に変わり、扉は消えた。
新たな地図が砂の上に落ち、次の旅が始まるのを告げていた。
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