やひち(モグじいさん)
御年80歳の未来さんと光里さん。
今日も井戸端会議で盛り上がる。
近くて遠い…未来のお話。
光里「未来さん」
未来「なあに?」
光里「最近、気付いたんだけど、
みんなお庭に、風車あるよねぇ」
未来「そうね」
光里「その通りの角に、
お庭のキレイなお家あるでしょ」
未来「モグじいさんのお家ね」
光里「そのおじいさんかな?
ちょうどお庭にいたので、
挨拶したのぉ。
いつもキレイにしてますねぇ。
風車も可愛いって。
そしたらこれはセスデーデーだって。
何度聞き返してもセスデーデーって。
何のことだかわからなくて、
愛想笑いして帰ってきちゃったぁ。
未来さんわかるぅ?セスデーデー」
未来「それはきっとSDGsのことじゃない?」
光里「SDGs?そうなのぉ?
なんでわかるのぉ?」
未来「きっとね。
まあ同級生だから、なんとなく」
光里「すごいねぇ。でも庭の風車が、
SDGsと何か関係あるのぉ?」
未来「光里さん知らないの?
あれは害獣除けじゃなくて、
小型発電機なのよ」
光里「ええ?!
お洒落ガーデニングじゃないの?」
未来「ああいうの、
よく洋上風力発電で見るでしょ?」
光里「大きいやつねぇ。
でもあれで電気作れるのぉ?」
未来「そうよ。うちにもあるわよ10機」
光里「そんなに?!いつの間に」
未来「まあまだ家の電気代を、
賄うまではいかないけど、
お小遣い程度にはなるかな」
光里「どうして急にそんなことに?」
未来「やっぱり電気代が、
安定しないからじゃない?
あとは太陽光パネルの、
修理業者が少ない問題とか。
修理できないから、
新品買えって言われても値段がね。
それに比べて風車だから、
初期投資が安い。
じわじわ人気出てるみたいよ」
光里「そんなに違うの?」
未来「当たり前じゃない。太陽光パネルは、
設置費用の援助があったとしても、
売電で元を取るのに約10年。
寒冷地や天候不良が続く場所ならもっとよ。
それに比べて風車は買って差すだけ。
あとは風車のケーブルを、
蓄電器に繋ぐだけ。
簡単でしょ?」
光里「凄い。それだけで電気が作れるなんて」
未来「天気が悪いほど発電するしね。
でも音とか近所迷惑になる場合もあって、
各家庭で色々工夫してるみたいね」
光里「どんな?」
未来「2件隣は垣根を取っ払って、
最新式のブレードがない発電機にしてたわね」
光里「ブレードって何?」
未来「ごめん。
ブレードは風車の羽のこと。
そこの家のは羽がないタイプなのよ。
それでも同じように発電するんだって。
ただの柱にしか見えないけど。
ほんと静かよ」
光里「どんどん時代に取り残されてるぅ…。
風車のイメージが、
恐山で止まってるんだけどぉ」
未来「そうそう恐山。
最初に風車発電始めたのは青森県よ。
参拝者は通常の風車か、
発電用風車を選んで買ってもらうの。
まあ他県から来られる方もいるからだと思う。
その風車で発電された電気は、
施設の電力を賄って残りは売電。
むつ市はそのお金を補助金として還元。
いいサイクルでしょ」
光里「恐山の情報にすら遅れてるぅ…」
未来「大丈夫よ。
今日から始めればいいじゃない。
私もホームセンター付き合ってあげるから」
光里「ほんと!」
未来「ほんと。じゃあ車で行きましょ」
光里「うん」
数日後。
未来「光里さん、風車どう?」
光里「回ったぁ」
未来「良かったね」
光里「でもうちって住宅密集地だから、
風が吹かないのぉ」
未来「え?!
じゃあどうして回るの?」
光里「庭先に延長コード引っ張って、
扇風機で回してるぅ!」
未来「光里さん…それって」
光里「グルグル回るんだよぉ!
風車って見てて楽しいよねぇ♪」
未来「良かったね。光里さん」