悪魔の発明 眼鏡
人が本気を出せば、
作れてしまうもの。
それが悪魔の発明品。
さて、今回紹介する商品は…
【眼鏡】
サラリーマン2人。
「慣れた?」
「…いいや」
「だよな」
「普通そうだろ」
「普通だよな」
「普通は普通。
たまに普通って何?って、
聞いてくる人いるけど、
普通ってのは普通なんだよ」
「そうだよな。
服着てない俺たちは、
普通じゃない」
「それが普通の考え」
「そもそも誰だよ、
透視眼鏡なんて発明して、
無料配布した奴」
「誰だろうね?
未だに名乗りでてないけど」
「これ計算尽くなら恐ろしい計画だな。
あっという間に、み~んな裸。
着ても着なくても同じってわかると、
こうも人って諦めが早いだな」
「まあ汗取りや防寒で着てる人はいても、
結局、眼鏡使えば素っ裸だからね。
出た当初、酷かったねえ」
「ああ、酷かった。眼鏡狩りな。
戦国時代かよって思った。
眼鏡かけてるやつ片っ端から襲われて、
眼鏡剥ぎ取られてな。やばかった~」
「眼鏡入国禁止とか外交問題に発展して」
「あと警戒したメガネ屋が、
すぐコンタクトレンズセンターに、
看板変えたりしてな」
「コンタクトレンズを求める人で、
連日ごった返してた。
関係ないのに並ぶ人も出て」
「みんな、浅はかだったなぁ」
「確かに浅はかだった…」
「まさか一週間後に、
透視コンタクトレンズが、
配布されるとは」
「夢にも思わなかったな」
「ここからがさらなる大混乱」
「まずはトイレ」
「壁が薄いと、
透けることがわかって、
全国の公共トイレの補修工事」
「あれはトイレじゃなくて、鋼鉄の城」
「あとは一時的な甲冑ブーム」
「やはり感情の問題もあるから…」
「でも結局、機能的じゃなかった」
「本人も近くの人も傷だらけで、
軽症者多数」
「やはり大きいのは電車だな」
「ついに男性専用車両の登場」
「完全に乗る車両は二極化」
「導入は男性の声が、
圧倒的に多かったらしい」
「ふ~ん。
まあこんなことを淡々と話しているが、
実は俺もそうだ」
「…?」
「隣にいるお前の姿を、
視界に入れることが、
今だにできん」
「それが普通」