つじつま合わせ昔話
昔話には多くの教訓が隠れています。
桃太郎には人助け。
笠地蔵は思いやり。
さるかに合戦は報いなど。
ただ私には、
どうしても理解できなかったお話があります。
浦島太郎。
ご存知の通り、
いじめられていた亀を助けて、
竜宮城で乙姫たちにもてなされ、
玉手箱をもらって帰ったらおじいさんになった話。
人助けをしたのに、この仕打ち。
まだ若い姿のままなら、
これからの生活もなんとかできたでしょうが、
おじいさんになったらもう再就職も見込めません。
使ったら大変なことになるものを、
なぜわざわざ渡す必要があったのか…。
意味がわかりません。
そこで私なりにつじつまが合うお話を、
妄想しましたのでご覧下さい。
【浦島太郎】
昔々、海辺の村に、
浦島太郎という青年がおりました。
ある日、通りかかった浜辺で、
亀をいじめている子供達を見かけます。
しかし、子供のあまりの威勢の良さにビビった太郎。
(そういえば今日は漁港組合の寄り合いだ)
完全にひよりました。
その光景が視界に入らぬよう、
通り過ぎる太郎をよそに、
子供達は亀をいじめ続けます。
それは翌日もさらに翌日もと、
とどまることがなかったのですが、
それでも太郎は自分に言い訳をし、
無視を決め込みました。
やばて少し大きくなった亀が、
ついに反撃に転じます。
子供達は今までの非礼をわびて、
亀の家来になり下がります。
そして今度はいじめる演技をするよう亀に命じられます。
なるべく自分たちを弱々しく見せる演技を求められたのです。
そんなこととは知らない太郎は、
またその現場に遭遇します。
(あれ?いつもと違うな。これ、俺でもいけるんじゃね?)
ついに太郎は声をかけます。
「亀をいじめてはいけないよ」
その声に慌てふためき子供達は、
手筈通り逃げていきます。
「どうもありがとうございます。
お礼がしたいので竜宮城へ来て下さい」
承諾した浦島太郎が、
背中に乗ったのを確認した亀の目がギラリと光ります。
(見て見ぬふりをした者への復讐の始まりだ)
竜宮城では乙姫様の、
言葉巧みな駆け引きに翻弄された太郎。
「帰ります」となかなか言い出せず、
ズルズルと長い時間を費やしました。
「そうですか。寂しいです。
ならばどうかこれをお持ち下さい」
渡された玉手箱。
「これは決して開けてはなりません。
なぜなら二人の大事な思い出が、
この中には入っているから」
なんか意味深なことを言われて、
また舞い上がった太郎でしたが、
亀に急かされ浜辺の村へと帰ってきます。
そして目の当たりにした村の変貌。
知らない村。
知らない人々。
自分との繋がりが切れた場所。
ひとり海を眺めふけっていた太郎は、
孤独を紛らわそうとすがった玉手箱。
それを開けた時、
亀の復讐は成就したのでした。
【亀の仕返し】というお話。
そしてこちらも、
合わせて読んで下さい。
お疲れ様でした。