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ど素人が名酒を買いに

かなりの昔話。
友達とのいつもの茶飲み話。

その中で話題になった、
ある名酒のエピソード。

蔵元が丹精込めた日本酒に、
地元の反応は冷ややかなものだった。

しかし県外で話題になったそのお酒は、
一躍、名酒の仲間入りを果たした。

その時の遺恨もあり、
地元では絶対に手に入らない
幻の名酒になったという話。

日本酒を嗜んだこともない私。

そのエピソードが偉く気に入り、
気の向くまま友人二人で旅に出た。

もちろんネットで事前調査。
数千円が数万円で約15倍の値段。
蔵元での販売も行ってない。

そこらの酒屋やリカーショップでは、
入手は無理だろうと結論付けた私達は、
蔵元のお膝元まで足を伸ばすことに。

まるでトレジャーハンターになった気分。
市境標識を超えると高揚感は最高潮だった。

長い道のりの末、
やっと見つけた小型のリカーショップ。

まずは中に入ってショーケースを確認。

ない。

店内をくまなく探す。

ない。

レジの定員に尋ねてみる。

「地元の〇〇ありますか?」
「………置いてないです」

変に歯切れの悪い間があった。
しかしないと言われた以上、
他を当たるしかない。

それから数件酒屋を訪ねた。
答えは「ない」の一本槍。

その名酒が手に入れば御の字だが、
なければその蔵元の別の銘柄で我慢しよう。
酒好きの友人への贈答目的もあった。

失望の中、あてどなく走っていると、
助手席の友人が酒屋を見つけた。

「ちょっと見てくる」

ハズレばかりなので友人が、
気を利かせて見に行ってくれた。

すぐに戻ってくると、
「ここ当たりっぽい」
私も車を降りて店内に。

古い店だが棚には歴代の限定ボトル。
店内の大きなショーケースには、
蔵元の酒がびっしり並んでいた。

私は期待を込めて
「〇〇ありますか?」と尋ねた。

店主は即答で「ない」
割と食い気味の返答。

だがもう一つのお目当て、
蔵元のお酒が所狭しと置いてある。

私は友人のアドバイスも聞きながら、
1本のお酒を手に取り、
「これはいくらですか?」と尋ねた。

すると店主は
「何本買う?」と質問で返してきた。

「1本ですけど」
「じゃなくて何本買うって」

全く質問の意味がわからない。
「何本買うって何ですか?」と聞いてみた。

「この酒は1本買うにはこの酒を3本、
 この酒を1本買うにはこの酒を6本、
 この酒なら10本」

ようやく理解した。
抱き合わせ販売。

正直迷った。
だがもう疲れていた私。

友人が抱き合わせの酒も、
辛口で美味しいと知っていたので、
私は購入を決めた。

一番手頃なお酒1本と、
指定されたお酒3本。

私はその時以来、全く日本酒を買ってない。
興味が失せたというより、
私が踏み込む世界ではない気がした。

そこで買うことができていたら…

その後も知り合いのつてで、
購入方法や入手できる場所を知った。

でもやっぱりそこまでしてという気持ちが
上回った。

今でも数量限定のお酒は、
転売され高値で取引されてる。

蔵元の望むところではないのだろうが、
未だに続いているようだ。

あのお店もまだ営業してるのかな?
Googleマップで探してみましたが、
思い当たる場所に酒屋はない…

その時のお酒の後日談。

もちろん選んだお酒は友人に。
そして一緒に買った3本は、
私が正月に飲み干しました。

気になってその3本のお酒を検索。

なんと現在、定価の5倍で転売されてました。

私はちょっと得した……のかな?


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二月小雨
お疲れ様でした。

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