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#13 ふたりで歩む不妊治療
はじめまして、不妊治療と仕事の両立支援を行っているNPO法人フォレシアの佐藤です。
今回、フタリノさんよりこの企画のお話を頂いた時、これを読んでいただいた方に私が出来ることは何だろうかと考えていました。
不妊治療に関わる事業をしておりますが、私は医師ではありませんので、個人として医学的なアドバイスができるわけではありません。
仕事との両立支援という面でいうと、当事者の職場背景を理解せずに簡単にアドバイスが出来るものでもなく、企業様の環境整備支援の話でも無い。
では、読む方にとって私が伝える意味のあるものは何だろうか、と考えていました。
その中で出した答えは、私が妻と歩んだ不妊治療のことを伝え、それがパートナーとの会話の「きっかけ」となってくれれば、少しは貢献できるのではないかというものでした。
特に妊活や不妊治療中はパートナーとの間で気持ちの共有が難しくなっている方達も多く、何をきっかけとして妊活や治療のことを話すか、悩む方は少なくありません。
この記事を読んでいただくことで、少しでもパートナーとの会話につながり、ふたりの大切なものは何かを話し合うきっかけにしてくれたら嬉しいなと思います。
もちろん、子どもを望む方だけではないですし、不妊治療をしていない方もいらっしゃると思います。そのため、それぞれの価値観を尊重して読んでいただければ幸いです。
27歳の時、自然妊娠は難しいと告げられる
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24歳で結婚して3年、なかなか子どもが出来ないこともあり、妻と相談して私は検査を受けに病院へ行きました。そこで、突然告げられたのは「自然妊娠は難しい」という言葉でした。
今まで子どもが出来ないかもしれない、ということを考えたことが無かった自分は始めて事の重大さに気づきました。そして、その時すぐに感じたのは、妻の幸せを自分では叶えることが出来ないかもしれないという不安でした。
妻は保育士でもあり、子どものいる未来を強く望んでいました。申し訳ない気持ちや情けない気持ちなどが入り混じっていました。
その後、結果を妻に報告した時、「やるべきことが分かって良かったね」「治療をすれば授かるかもしれないってことだね」と前向きに捉えれてくれて、私はとても救われたことを今でもはっきりと覚えています。
もちろん妻もショックを受けていたとは思いますが、気丈にふるまってくれていました。そして、ここからふたりでの長い不妊治療が始まりました。
先の見えない不安と自己嫌悪
治療が始まると、妻は私よりもはるかに通院頻度も多く、仕事との両立が困難な状況となりました。服薬や検査の日々に妻の心身への負担も大きくなっていきました。
私に原因があったとしても、不妊治療はどうしても女性側の負担が大きく、自分だけでは解決が出来ないという状況が非常に辛い部分でした。
そのような中で、自分でも想像していなかった感情が湧いてきました。
それは、テレビや街中で見る子どもを見れなくなってきたのです。
その時は「なぜ、こんなにも子どもに関する番組が多いのか、、、」と今まで意識をして見ていなかっただけなのですが、敏感に情報が入ってくるようになっていました。
子どもを見ることで、自分には訪れないかもしれない未来と感じてしまい、悲しみの感情が出てくるからです。正直、友人の妊娠や出産ですら、本気で喜べない自分もいて、それがまた自己嫌悪に繋がっていく、という悪循環の日々でした。
その後、治療は人工授精を6回終えて、体外受精へステップアップしていました。
結果的には体外受精でようやく妊娠し、安堵していた時、まさかの死産という診断を受けることになります。
ふたりで出来ることの可能性は無限大
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私達がいるとなりの分娩室からは産声が聞こえる中、私達は泣く事のない赤ちゃんを出産することになりました。一生忘れることのない日です。
そこから私たちはよく話し合い、一度不妊治療から離れることにしました。
ふたりで出来ること、ふたりだからこそ出来ることをやろう、世界中も旅してみたいということで、海外旅行へ行くことに。
旅行中の会話を通して、二人でやりたいことや出来ることは実は無限にあることに気付きました。
だから、もし子どもが出来なかったとしても、ふたりで楽しい未来があると思えるようになったのです。そして、それがその後の不妊治療を前向きに捉えられたきっかけとなっていました。
治療再開、ふたりでの不妊治療を振り返り
そこから数カ月後、私たちは治療を再開することにしました。今度は切迫早産の入院もあり、予断を許さない状況もありましたが、その後4年間で2人の子どもを体外受精で授かることが出来ました。
今回、この記事の内容を通じて私は不妊治療の大変さを訴えたいわけではありませんし、不妊治療を特別扱いしたいわけでもありません。
ふたりでの不妊治療を振り返ると、それぞれが大切にしたいものを、一方的に主張するのではなく、共感、尊重し支え合うことで、見える未来が変わってくる、見える未来が変わると今取るべき行動も変わってくる。という私の体験が誰かの役にたってくれたら嬉しいなと感じたためです。
もちろん、これは私に起きた出来事であり比較するものでもありませんし、不妊治療の成功体験などというものでも決してありません。
第三者に起きた出来事がちょっとした会話の種になってくれたら、そこからふたりの価値観や温度差の違いを共有できるかもしれないと思い、書かせていただきました。
そんなことがなくても当たり前に会話出来ると思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、不妊治療をしているとそれが難しくなる時もあるからです。
また、不妊治療はふたりで意思決定をしていく必要があります。
パートナーを一人にせずに、ふたりで歩んでいけるよう、会話のきっかけにこの記事がなってくれたら嬉しいなと思います。
そして、不妊治療と仕事の両立が出来ずに日本では多くの方が離職せざるをえない状況が続いています。
一人でも多くの方が、子どもを願う気持ちと仕事がトレードオフにならない社会の実現に向けて、私も微力ながら引き続き貢献してまいりたいと思います。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
NPO法人フォレシア 佐藤高輝
NPO法人フォレシア代表理事 佐藤高輝さん
1985年生まれ。秋田県秋田市出身。
27歳から始めた不妊治療の経験から2017年にNPO法人フォレシアを設立。 全国の企業に対して不妊治療と仕事の両立に係る制度設計等の伴走支援、医師•専門家と連携した両立相談窓口、健康相談窓口の提供を行っている。
また、全国の自治体とも連携し、不妊治療と仕事の両立セミナーを実施。 企業と治療当事者双方へのサポートを行なっている。
▼NPO法人フォレシア公式サイトはこちら
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