10年目の告白
東京都下で育った私は、関東大震災や東京大空襲の時に何があったのか多少情報はあるが地方から来たその友人はその知識はなかった。
その友人と、浅草から南千住にあるうなぎ屋まで散策した。
プランは、
浅草寺から言問橋を渡り、有名な桜餅のお店で桜餅を食べ、向島をぶらぶらして南千住にあるうなぎ屋で食事である。
浅草で待ち合わせをし浅草寺で昼食を食べ(何を食べたか覚えていない)、隅田川を渡り、桜餅の店に行く予定。
言問橋だったか橋の名前はうろ覚えであるが、わたっている途中で、東京大空襲の映像を思い出した私は、早足で歩いて渡っていた。
渡り終えて、後についているはずの友人が、なぜか、橋の真ん中の欄干に両手をついて川を眺めていた。しばらく待っていたがなかなか来ない。しかたがないので、戻って彼女に声をかけた。
早く渡ろうとせかしたが、なかなかその場を動こうとしない。少し、強めに声をかけると、彼女はようやく歩き出した。
今思えば、少し様子が変だったかもしれない。
その後、桜餅を食べて向島へ。
向島百花園へ行く途中であったかと思う。
後ろを歩いていた彼女が、尋常ではない表情で、「早くこの場を離れたい」と言うと、私を追い越して早足で歩き出した。
どうしたのだろうか?と思ったが、彼女の様子のほうが怖いので、彼女の後を追った覚えがある。
そこから、南千住までに行く途上で、彼女からのカミングアウト。
実は、昔から、感じる人らしく、幼いころから悩んでいた。見えるというわけではなく、触られるようなゾワゾワする感じがするというのである。
橋の途中で立ち止まったのは、川に吸い込まれそうな感じがしていた。呼ばれているというのだろうか?動けない状態であった。
また、向島では、たくさんの何かが自分の腕を触れる感じがしたので気分が悪くなったのだ。
今まで黙っていたのは、何か自慢しているように受け止められると困るから黙っていたということであった。
それまで、そういう話題をすると、彼女は馬鹿にしたような態度をしていたので、信じていない人だと思っていた。
その告白を聞いたときに「なんだよ」というのと、「感じる人を見たのは初めて」「自慢というか、そんなところで自慢になるかな?」とかいろいろなことを伝えたような気がする。
これから、南千住のうなぎ屋に行くが、南千住には首切り地蔵がある。昔の処刑場である。
大丈夫なのか?と聞いたら、うなぎ屋には何回もいっている。何も感じないから大丈夫だということである。
不思議だ。
その後、彼女から橋で立ち止まった原因を探るためにいろいろ調べたらしい。その報告を聞かされたことを覚えている。
カミングアウトしてから、彼女から、たまに体験談をしてくるようになった。
そういう話が苦手な私は興味があるものの、自分で解決できないことは、あまり知りたくないと思っている。
それにしても、世の中、いろいろな人がいるな。とつくづく思うのである。
ここまで読んでくださりありがとうございました。