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『旧市町村日誌』9 文・写真 仁科勝介(かつお)

6/15(木)曇りと雨「ジョージさんご一家のおうちにて」

今日で、ピアニストであるジョージさんご家族のおうちに滞在して3日目になる。明日に出発する予定で、今晩が最後の夕食だった。今日に至るまでの3日間はあっという間で、でも、一週間滞在させてもらったような濃密な長さで。 

おうちにお伺いする前、ジョージさんが、「知り合いの方を紹介するよ」と仰ってくださった。そして最初にお会いしたのが、つくば市の元市長である藤澤順一さんだった。ん、んん、元市長さんですか!? かつてのまちづくりのリーダーにお会いできるなんて、あまりにビックリした。藤澤元市長はとても優しい方だった。

 

ほかにも音楽家のお二人とランチをご一緒し、筑波のまちづくりに長年関わってこられた、筑波大学の先生にお話を伺い、そして今日は、現つくば市長の五十嵐市長にお会いすることができた。いろんな方々から見聞する機会というものは、自分にとってあまりに貴重だ。ハッとさせられるものもたくさんあった。旅をしていて、いろんな出会いがあるとは思いつつも、自分という範疇を超えた出会いを、ジョージさんが導いてくださった。

 

何より、ジョージさんのご家族にとてもお世話になった。今、ジョージさんのご一家は5歳と2歳のお子さんと一緒に暮らしている。ジェットコースターのように目まぐるしい日常の中に、ポンっと26歳の大人が混じってしまって、それでも温かく接してくださって、ただありがたかった。

 

子育てをしているお父さんとお母さんは、ほんとうにすごいなあと、強く思う。毎日子どもと長い時間を共にする。たのしいこともうれしいこともたくさんあれば、ものすごくたいへんなこともある 。それが毎日続いていく。ぼくは一緒に過ごしていて、ブログを更新する余裕も、日記を書く余裕も、全然ないんだなあって。でも、それが当たり前のスタートラインなのだ。だから、旅の苦労なんてものは、子育てをする親御さんにはとても及ばないように感じられて。もちろんそれは、旅と子育ての比較じゃない。子育てに対して、心からの尊敬が溢れる気持ちだ。子育てこそすごいんだぞ、って。


ジョージさんのお子さんと過ごした時間、キラキラしたまっすぐな心をたくさん教えてもらった。ぼくがジョージさんたちに「すみません!」と口ぐせのように言っていて、長男くんに「そのままじゃ、すみま星人になっちゃうよ?」と言われたとき、あっちゃー、って。それからは「すみません」が「ありがとう」に変わっていった。ジョージさんのピアノを聴く機会も何度もあった。目の前で、鍵盤を押す音が聞こえるような距離で、メロディーを聴くと、全身が幸せのスタンディングオベーションだった。そこにある空間が、ジョージさんに包まれた。今晩はいろんなお話をすることもできた。旅の忘れられないページである。



仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。

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