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『旧市町村日誌』12 福島県から宮城県へ 文・写真 仁科勝介(かつお)


6/30(金)一日中雨

 福島県から南相馬市へ移動した。雨なので、シンプルな移動日である。宿泊先の小高パイオニアヴィレッジは、まちづくりの拠点として有名な施設だ。訪れるのは3回目で、今回は人とご縁があるかもしれないし、ないかもしれないと思っていた。

 すると、チェックインで「今日、夜に“おばんざい会”あるので、参加しますか?」と。

 というわけで、夜にいろんな人たちと話ができた。終盤、お酒が入っていたからでもあるけれど、ぼくが市町村をまわったことを、ずいぶん面白がってくれた方がいて、何人かで「市町村ゲーム」がはじまった。

 

「……えっと、飛騨市!!」

 

「飛騨市は外国人観光客戻ってきたんですかね!?」

 

「…じゃあ海士町…!!」

 

「ないものは、ない!!」

 

と、市町村のお題が出されて、そのまちの印象をぼくが答えるというゲームだった。しかも、ぼくが答えられなかったらポイントが入るという謎仕様である。全部答えられたらいいけれど、忘れてしまった市町村もあるのだ。そうした市町村は、ごめんねえという気持ちで寝る前に自分のブログで調べて、ああ、あそこに行っていたか〜! と反省会をした。

 

7/3(月)曇りのち晴れ

 まずは昨日のこと。朝3時半集合で、砂浜へ相馬野馬追の練習を見に行った。ほんとうに練習をやっているのだろうかという気持ちがゼロではなかったけれど、ほんとうにやっていた。砂浜を走る馬のかっこよさ。九十九里浜でも早朝に馬が海岸線を走る様子を見たけれど、近づけなかったので、今回は近くで見ることができて嬉しかった。7月末のお祭りが素晴らしきものになりますように。

 そして、小高パイオニアヴレッジで出会った方々とお別れをして、南相馬市を巡り、宮城県山元町の中浜小学校も訪れて、1日が終わった。中浜小学校は震災遺構として公開されている。席に座って観る映像があって涙が出た。
ぼくは被災をしていない。だから、心の片隅で、苦しんでいない自分が泣くって、パフォーマンスなんじゃないか、と感じてしまう自分もいる。ちょっと嫌になる。でも、最近気づいたことだけれど、もしかすると、日本を巡り過ぎてしまっている。

 

7/5(水)曇りのち雨

 朝6時半に出発。ほんとうは、もう1時間半、早く出発したい。昨日も、電気がついたまま、気づいたら寝てしまっていた。睡眠が浅くなるし、しっかり寝たいなあ。自分の心次第だから、ここを越えるのが大変だとはわかっているけれど、がんばろう。日記に書いて、自分を鼓舞しようとしている。

 それにしても、鳴子の「しんとろの湯」の美肌具合は、過去ナンバーワンじゃないか!? 実感というか、鏡を見て、明らかにそう感じた。効能ってあるものなのだなあと、信じられる気がした。岩出山の「感覚ミュージアム」も良い意味で狂っていて最高だった。いや、実際は、展示が狂ってるんじゃない。自分が自分を解放していないだけなのだ! と言わんばかりに、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、あらゆる感覚が揺さぶられた。面白い場所があるもんだなあ。

 

7/7(金)晴れと曇り

 まさか、「クスリのアオキ」で日記を書くとは。朝から順調に、登米市と栗原市、大崎市を巡ることができた。旧瀬峰町のさばん酒店さんではご主人の写真を撮らせてもらったけれど、人物を撮らせてもらうときのコミュニケーションは、もっと上手くできるはずだと思った。旅は順調に進んでいるけれど、天候はどうだろうなあ。がんばれてはいるので、自分を鼓舞していこう。



仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。

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