『旧市町村日誌』 59 壁はまだ高いけれど 文・写真 仁科勝介(かつお)
11月27日(水)
まだ数日残っているけれど、11月はとにかく、毎日精一杯だった。仕事の数に対して、ほかの月と変わらない旅の日数だったので、数えていないけれど、休んだ日が少なかったと思う。
休むかどうかの選択肢は自分にあるので、だったら休めばいい、といってしまえば早いけれど、今はできるだけ休まずに進めたらありがたいなあ、という気持ちだ。当然いくつかの理由があって、今は休まない方が後悔が少ない、ということだ。その意味で、11月初旬は、「遮二無二」という言葉をイメージしていた。すると、カープの来年のキャッチフレーズも「遮二無二」になった。重なっちゃったなあ(もちろんうれしいし、なんだか面白いなあという気持ち)。でも、新井監督も確かに「遮二無二」って感じがするし、共感もできる。今は出力を最大限に上げてみて、できるところまではやってみよう、という日々だ。しばらく、この方向性は変わらない。
でも、何かトラブルや予期せぬ出来事が起きた途端、「それは、無理をしているからじゃないのかな」という言葉に対して、もちろん耐性がつかなくなる。それはとってもその通りだ。そして、そのことを大前提として受け止めた上で、今はこう思う。無理からでも為そうとしてみるときが、人生にあったっていいんじゃないか? と。人にそう勧めようとも思わないし、そういうのがかっこいいからそうしたい、というわけでもない。ただ、この旅は自分が決めたことなのだから、為すことそのものが生活であって、ほんとうにできるところまで自分を出し切りたい、と。
振り返ってみたら、もしかしたらそれが結果的にカッコ悪いのかもしれないけれど、今、全力で為したいことがあることは、幸せに感じられる。
最近の天気予報を見ながら、今年の冬はどうなるかなあとずっと考え中だ。一応、目標にしていた通り、日本海側をはじめ、深い積雪地帯の旅はほとんど終えることができた。特に、長野県や山梨県までを11月中旬までに周りきることは、2024年のはじめから考えていたことだった。まだその頃は九州を巡る旅の前半だった。だから、これからどうやって長野まで行くんだ? と果てしなく遠い世界のように感じていたけれど、いつの間にか訪れることができて、巡ることができた。いろんな景色を知った。不思議だ。それが旅だ。
お天道さまの心のままに従って、なるようにしかならないけれど、どうなったとしてもベストを尽くせたと思えるように、明日も明るくハツラツと、愉快にがんばろう。
仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。