『旧市町村日誌』42 6月の旅 文・写真 仁科勝介(かつお)
6月15日(土)
旅を再開して4日経つ。東広島市から世羅町、三原市、尾道市、福山市、神石高原町、府中市、三次市、庄原市と進む。ただし、三原市や尾道市、福山市の市街地は訪れていない。瀬戸内海の沿岸は温暖な気候なので、急がず頃合いを見て、訪れることができたら。
ここ数日の最高気温は30度前後。暑いでしょう、と聞かれるし、暑いといえば暑い。昼間はぐっしょり汗が出るし、飲料水も1日にペットボトル一本では脱水症状になってしまう。だが、朝晩はまだひんやりとした空気が漂っていて、夏を迎えていない。梅雨が遅いからだと思う。一度、すっぽり梅雨の雨に覆われてしまえば湿度が増し、紫陽花も無理なく色を付けるだろう。ここ数日の紫陽花は、見ていて少しつらそうだ。
海をしばらく見ていない代わりに、深い緑色の木々や田んぼの風景と毎日出会う。水田も少し前まで田植えをしていた印象なのに、すでに苗は力強く育ち、遠目からでは水と土が見えなくなった。いわば、緑の絨毯だ。そして山の緑と田の緑がひとつにつながって見える光景は、冬の雪化粧と同じく美しい。あなたが見ていなくても、私は毎日背を伸ばしますからと、苗は囁いているよう。
連続で旅を続けて4日目だが、あと4日は連続で続けたい。体力と天気予報による。心は元気でも、休むことをしないと、肉体は正直に疲れてくる。旅以外の生活なら痛くもない足のツボが、今はちょっと押しただけでズキズキする。睡眠時間が足りていても、目覚めたときに体がずっしりする。こうなることはわかっているわけで、折り合いをつけながら、きちんと休むことが毎日の旅につながる。睡眠時間を過度に増やせなくても、目標時間分は寝る。可能な限り、シャワーだけではなく湯船に浸かる。
今日の宿は一泊2500円の大部屋だ。安い分もしかすると粗雑な対応かもしれないと思っていたが、受付のおじさんとおばさんは、あたたかみのある優しい方だった。フロントでシーツを受け取り、自分で敷布団に取り付ける。畳部屋だが、一番の懸念だった作業用の机があってホッとした。これでパソコン作業ができる。それに今日の大部屋はぼくしかいないらしい。お風呂も申し出て湯を張り、入浴できた。洗濯機も使うことができて、思いがけずいろいろ助けてもらっている。今は18時を過ぎたところ。両側の窓を開けると部屋に涼しい風が入ってきた。空はまだ明るいが、もうすぐ夏至だ。
仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。
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